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大学・研究所にある論文を検索できる 「Costello症候群モデルマウスにおけるアレルゲンによる皮膚炎の誘発と病態メカニズムの解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Costello症候群モデルマウスにおけるアレルゲンによる皮膚炎の誘発と病態メカニズムの解明

堅田 有宇 東北大学

2020.03.25

概要

Costello 症候群は HRAS 遺伝子の生殖細胞系列における変異が原因の先天異常症候群であり、特異的顔貌、肥大型心筋症や先天性心疾患などの心合併症、易発がん性、精神発達遅滞、皮膚症状を特徴とする。特に皮膚症状は多彩で、カールした毛髪、掌蹠角化症、乳頭腫、皮膚弛緩症、黒色表皮腫、毛包性角化症、湿疹、瘙痒などが見られるが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では Costello 症候群の皮膚病変の病態解明を目的とし、Hras G12S ノックインマウス (HrasG12S/+マウス) の皮膚病変の観察を行った。高脂肪食負荷を加えた HrasG12S/+マウスに瘙痒を伴う皮膚炎症状を認めたが、通常飼料で飼育した HrasG12S/+マウスでは、高週齢マウスを除き皮膚病変は認めなかった。そのため、早期に定量可能な皮膚病変モデルを確立するために、各種薬剤による刺激をした上で皮膚症状の観察を行った。

HrasG12S/+マウスに対して、接触性皮膚炎様の病変を誘発するピクリルクロライド (PiCl) を塗布したが、皮膚炎症状は認められなかった。また、乾癬様の病変を誘発する imiquimod を塗布することで、HrasG12S/+マウスに耳介肥厚、表皮肥厚、鱗屑を伴う皮膚病変が出現したが、肉眼的な皮膚炎の程度は Hras+/+マウスと差が見られなかった。最後に、アトピー性皮膚炎様の病変を誘発するコナヒョウヒダニ虫体由来粗抗原 (Dermatophagoides farinae body, Dfb) を含む軟膏を塗布したところ、HrasG12S/+マウスで有意に皮膚の発赤、痂皮形成、耳介の肥厚、頻回な瘙痒行動による擦傷や組織欠損、細胞増殖を伴う表皮肥厚、表皮における ERK シグナルの活性化、血清 IgE の上昇、真皮における肥満細胞、CD4 陽性T 細胞、好塩基球、2 型自然リンパ球 (type-2 innate lymphoid cells, ILC2s) の増加が見られた。したがってこれらの病態はアトピー性皮膚炎様であると判断した。また、皮膚全層の RNA とタンパクを用いた qPCR 法とウエスタンブロット法で、プロテアーゼの上昇、表皮バリア機能を反映する Claudin-1 の発現レベルの低下、Th2 サイトカインの上昇、IL-33 や TSLP (thymic stromal lymphopoietin) などの表皮細胞由来のサイトカインの上昇も確認された。Hras+/+マウスと HrasG12S/+マウスの脾臓から単離、培養したナイーブ CD4 陽性T 細胞の Th2 分化刺激に対する反応性に違いを認めなかった。Dfb 刺激による培養表皮ケラチノサイトからの IL-33 発現量が HrasG12S/+マウスで有意に高かった。さらに MEK 阻害剤(PD0325901)を投与すると、HrasG12S/+マウスで見られたアトピー性皮膚炎様の病変は改善し、皮膚組織における ERK シグナルの低下や Claudin-1 の発現レベルの改善、皮膚全層での Th2 サイトカインや IL-33 の遺伝子発現レベルの低下が見られた。これらの結果より、HrasG12S/+マウスの表皮に Dfb による刺激を加えると、IL-33 の発現レベルが高まり、ILC2s を中心とする 2 型炎症反応とバリア機能障害が強く惹起され、瘙痒を伴うアトピー性皮膚炎様の病変を発症すると考えられた。

本研究で、HrasG12S/+マウスが Dfb 刺激によりアトピー性皮膚炎様の病変を発症すること、またその病態形成に皮膚における ERK の活性化と IL-33 の高発現が関わっていることが示された。また、MEK 阻害剤投与により ERK シグナルが低下、IL-33 発現レベルが低下するとその皮膚病変が改善することを明らかにした。これらは Costello 症候群における湿疹や瘙痒などの皮膚炎の病態を再現していると考えられ、本研究により Costello症候群の皮膚病変にはアレルギーの機序が関与している可能性が示された。ERK シグナルや IL-33 の抑制により Costello 症候群の皮膚炎症状が改善する可能性があり、今後治療薬の開発に役立つと考えられた。

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