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書き出し

Ecological and evolutionary traits of pathogenic bacteria hijacking the Stinkbug-Caballeronia symbiotic system [an abstract of entire text]

石神, 広太 北海道大学

2023.03.23

概要

Title

Author(s)

Citation

Issue Date

Doc URL

Ecological and evolutionary traits of pathogenic bacteria hijacking the Stinkbug-Caballeronia symbiotic system [an
abstract of entire text]

石神, 広太

北海道大学. 博士(農学) 甲第15293号

2023-03-23

http://hdl.handle.net/2115/89475

Type

theses (doctoral - abstract of entire text)

Note

この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。

Note(URL)

File Information

https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/

Ishigami_Kota_summary.pdf

Instructions for use

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

博 士 論 文 の 要 約

博士の専攻分野の名称: 博

士(農学)







氏名





石 神

広 太



Ecological and evolutionary traits of pathogenic bacteria hijacking
the Stinkbug-Caballeronia symbiotic system
(カメムシ-Caballeronia 共生系を乗っ取る
病原性細菌の進化生態学的特性に関する研究)

地球上の多くの昆虫は、その体内に共生微生物を保持しており、厳密な相互作用をおこなってい
る。共生微生物は、成長や生存に重要な栄養素を供給したり、難消化性の食物の消化を助けたり、
代謝廃棄物をリサイクルするなど、宿主昆虫の生存に極めて重要な役割を果たす。昆虫-微生物共
生系は、その共生微生物の次世代への伝播様式により、親から子へ共生微生物が受け渡される垂
直伝播共生系と、宿主が毎世代環境中から共生微生物を獲得する水平伝播共生系の 2 つに大別す
ることができる。Coreoidea(ヘリカメムシ上科)に属する多くのカメムシは中腸の後端部に存在
する盲嚢と呼ばれる袋状の組織に Burkholderia sensu lato 細菌を特異的に保有しており、そのほ
とんどは毎世代土壌中から共生細菌を獲得する水平伝播共生系である。Burkholderia sensu lato
は系統的に明確に分かれた Burkholderia(sensu strico)属、Paraburkholderia 属、Caballeronia
属の3つの属に再整理されている。Burkholderia(sensu strico)属は、植物、動物およびヒトの
多様な病原体からなる。Paraburkholderia 属は植物の成長を促進する根粒菌などが多く含まれ、
一 部 に カ メ ム シ の 腸 内 に 共 生 す る 細 菌 グ ル ー プ が 存 在 す る 。 最 後 に Caballeronia 属 は
"stinkbug-associated beneficial and environmental" (SBE) clade とも呼ばれており、ヘリカメム
シ上科に属するほとんどのカメムシはこのグループを腸内共生細菌として保有している。ヘリカ
メムシ上科に近縁のナガカメムシ上科では、腸内共生器官の組織学的な記載と Burkholderia
sensu lato 共生細菌の報告は多いものの、その共生の実態についてはほとんど調べられていない。
今 回 は 、 ナ ガ カ メ ム シ 上 科 に 属 す る Paradieuches dissimilis ( チ ャ モ ン ナ ガ カ メ ム シ ) と
Caballeronia の共生関係についてその実態を解明し、また、チャモンナガカメムシから単離され
た「宿主カメムシに対して病原性を示す Burkholderia 属細菌」の生態学的特徴に関して研究を行
った。
チャモンナガカメムシにおける Caballeronia 細菌との共生関係の解明
上述のようにヘリカメムシ上科の多くのカメムシは Burkholderia sensu lato 細菌を腸内の特異
的な共生器官に共生させている。しかしながら、ナガカメムシ上科については共生の実態がほと
んど調べられていない。そこで我々は、ナガカメムシ上科のチャモンナガカメムシをモデル系と
て、Burkholderia sensu lato 細菌との共生の実態解明を行った。チャモンナガカメムシは東アジ
アに広く分布し、主に桑の実を食べることが知られているが、その生態や微生物との共生関係に
ついては、ほとんど知られていない。
道内の 10 ヶ所でチャモンナガカメムシの野外個体を計 69 個体採取した。野外個体の解剖実験
の結果、チャモンナガカメムシの消化管は、ヘリカメムシ上科で観察されたのと同様に、中腸後
端部に特異的な共生器官を保持しており、細長い管状の盲のうが発達していた。チャモンナガカ
メムシの腸内共生器官について 16S rRNA 遺伝子アンプリコンシークエンス解析を行ったところ、
全ての個体で Caballeronia 属細菌が優占していることが明らかとなった。加えて、一部の個体で

は共生器官から Symbiopectobacterium、Wolbachia、Rickettsiella などの、昆虫の二次共生細菌
として知られる細菌が検出された。また、ヒマワリ、小麦、ソバの種子を与えることでチャモン
ナガカメムシの継代飼育に成功した。境内飼育により得られた卵の診断 PCR 調査により、卵には
共生細菌が存在せず、新たに孵化した幼虫は、共生細菌や土を与えずに飼育すると Caballeronia
共生細菌を有しておらず、土を与えることで Caballeronia 共生細菌を獲得することから、チャモ
ンナガカメムシと Caballeronia 属細菌の共生系は水平伝播により維持されていることが示され
た。野外個体の共生器官から分離培養した RFP 発現 Caballeronia 共生細菌をチャモンナガカメ
ムシに感染させ腸の顕微鏡観察をおこなったところ、共生細菌は中腸後端部の共生器官である
M4B と M4 に特異的に存在していることが明らかとなった。また、飼育実験の結果、共生細菌を
保持していない個体は、共生個体と比較して体色が薄く、体サイズも減少した。さらに非共生個
体は生存率も低くなり、成虫にはなれないことが明らかになった。このことから、チャモンナガ
カメムシにとって Caballeronia 共生細菌は、宿主の生存に不可欠であり、これは、今までに知ら
れていたカメムシ-Caballeronia 共生系の中でも、最も緊密な共生系の一つであると考えられる。
また、非共生個体の体色が薄くなっていたことから、Caballeronia 共生細菌が宿主外骨格のメラ
ニン化に寄与していることが示された。甲虫では共生細菌が宿主の外骨格であるクチクラに必須
の栄養素であるチロシンを供給していることが知られており、Caballeronia 共生細菌も宿主にチ
ロシンを供給している可能性が示唆された。
カメムシ-Caballeronia 共生系を乗っ取る致死性病原細菌の解明
今までに調査されたカメムシ-Burkholderia sensu lato 共生系の多くは、宿主が共生細菌を環境
中から獲得する水平伝播共生系であることが知られている。環境中には宿主にとって有益なもの
から病原性を示すものまで多様な細菌が存在する。このように、水平伝播共生系の場合、毎世代
有害な細菌を取り込んでしまう可能性があることから、宿主に利益を与えず利己的に振る舞う寄
生者の感染を防ぐ仕組みは、共生系の安定した維持において必須であると考えられている。カメ
ムシ-Caballeronia 共生系のモデルとして良く研究されている Riptortus pedestris (ホソヘリカ
メムシ)では、共生細菌を選択的に取り込む仕組みが詳しく研究されてきたが、その中でも、中
腸の消化管と共生器官の間に発達する「狭窄部(Constricted region [CR])
」と呼ばれる領域が共
生者の選別に非常に重要であることが明らかとなっている。CR の内腔幅は非常に狭く(数μm)、
その内部は粘液状物質で満たされており、大腸菌などの非共生細菌はこの部分を通過することが
できない。また、共生細菌はべん毛を菌体自身に巻き付けて進む特殊なドリル運動性を示し、こ
れにより粘性の高い CR 内を通過して共生器官に到達していると考えられている。また、CR の次
には M4B と呼ばれる抗菌ペプチドと消化酵素を高発現している器官があり、これら宿主の抗菌
物質に耐える能力も共生者の選別に重要である。加えて、共生器官に定着したのちに、同時に感
染した他の共生細菌との間に競争が生じることで、最終的に宿主-共生細菌の 1 対 1 の関係性が成
立することが知られている。この際にも、宿主の共生器官における免疫反応への耐性が、細菌同
士の競合に大きな影響を与えていると考えられている。今回我々は、チャモンナガカメムシから
単離された Burkholderia 属細菌(以下 Burkholderia sp.)が、CR 部を突破して宿主カメムシの共
生器官に定着するにも関わらず、最終的に宿主を殺してしまう、致死性の病原性細菌であること
を明らかとした。
前述のチャモンナガカメムシの共生器官から単離された Burkholderia sp.をホソヘリカメムシ
の 2 齢幼虫に与えてみたところ、この細菌は CR を通過して共生器官に感染した。その感染率は
100%(10/10)であり、これは、ホソヘリカメムシの野外における共生細菌の 1 種である C.
insecticola に匹敵する。共生器官の定量 PCR により、Burkholderia sp.は C. insecticola と比較
して共生器官内で増殖するのに時間がかかるものの、最終的には同程度の菌数にまで増加するこ
とが明らかとなった。また、Burkholderia sp.に感染した個体は 80%以上の高い死亡率を示した。
実体顕微鏡および共焦点顕微鏡による共生器官の観察から、Burkholderia sp.に感染した昆虫の
共生器官では、昆虫の免疫反応の一種であるメラニン化が起きており、また、宿主細胞内に
Burkholderia sp.が入り込んで無差別に増殖している様子が観察された。これらの現象は C.
insecticola に感染している場合には生じなかった。加えて、宿主体液から Burkholderia sp.が検
出されたことから、Burkholderia sp.は宿主の共生器官に定着して増殖したのちに宿主の共生器

官を破り体液中へと侵入していることが明らかとなった。培養した Burkholderia sp.を実験的に
宿主体液に注射すると、非常に高い毒性を示し、その 50%致死量(LD50)は約 50CFU とごく微
量であった。これらのことから、Burkholderia sp.はホソヘリカメムシの共生器官に定着したの
ちに増殖し、宿主体液中に侵入することで宿主を殺していることが明らかとなった。また、ホソ
ヘリカメムシに Burkholderia sp.を与えたのちに CR を顕微鏡で観察すると、Burkholderia sp.
が CR を通過している様子が観察された。加えて、この細菌は CR を突破する際に重要であると
考えられるドリル運動性を持つことが明らかとなった。これらのことから、Burkholderia sp.は
ホソヘリカメムシの共生細菌選択器官である CR を突破する能力を持っていることが示された。
また、M4B 内において、Burkholderia sp.は C. insecticola よりも有意に多く生存しており、抗
菌物質耐性試験では Burkholderia sp.は、C. insecticola と比較して、Polymixin B や抗菌活性を
示す M4B タンパク質に対してより強い耐性を示した。これらのことから、Burkholderia sp.は宿
主の免疫に対しても高い耐性を持っている可能性が示唆された。Burkholderia sp.と C.
insecticola の共感染実験を行ったところ、Burkholderia sp.の病原性は若干弱まるものの、依然
として 60%以上の高い致死率を示し、共感染させてから3日目に死亡した個体の共生器官内の
Burkholderia sp.と C. insecticola の比を調べると、その間に有意な差はなかった。これらの結果
から、Burkholderia sp.は宿主の共生器官内での競争において C. insecticola に打ち負かされない
ことが示された。また、ホソヘリカメムシの共生器官に C. insecticola が感染すると、CR が完全
に閉じられ、他の細菌は感染することが不可能になってしまうことが知られているが、
Burkholderia sp.に感染した際にも CR が閉じることが顕微鏡観察から明らかとなった。このこ
とから Burkholderia sp.は C. insecticola に擬態している可能性が示唆された。また、ホソヘリカ
メムシに C. insecticola を与えたのちに Burkholderia sp.を与えた場合、宿主の生存率が有意に上
昇した。このことから Burkholderia sp.が病原性を発揮するためには、CR を突破し共生器官内
で増殖することが重要である可能性が示唆された。
以上の結果から、Burkholderia sp.は、宿主が発達させた幾重もの選別機構を掻い潜る能力を持
ち、宿主の共生器官に潜り込む致死性の病原性細菌であると言える。このような共生器官内で増
殖する病原性細菌の存在は、共生者に対する宿主の選別機構に強い選択圧をかけるため、現在の
洗練された共生細菌選別機構の進化を促してきた可能性が考えられる。また、Burkholderia sp.
の高い病原性を加味すると、今もなお、共生者選別機構と寄生者の間には進化的軍拡競争が生じ
ている可能性が考えられる。 ...

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