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大学・研究所にある論文を検索できる 「アジア人における眼窩形態の解析と眼瞼形態との関係」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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アジア人における眼窩形態の解析と眼瞼形態との関係

Osaki, Takeo 神戸大学

2020.09.25

概要

はじめに:
眼窩ブローアウト骨折や眼窩周囲の腫瘍切除等においては、眼窩部を自家骨やチタンプレートを用いて再建する必要が生じる。眼窩を内壁から下壁にかけて再建する際に、元の正確な形態に再建することはその解剖学的な複雑な構造のために難しい。眼窩形態の構造を複雑ならしめる要素として、内壁と下壁の長さやなす角度が前方と後方において異なっていることが挙げられる。その角度や長さについて解析し、標準化または分類化することは臨床的意義も極めて高いと考えられる。また、眼窩形態が分類される場合、それらは顔貌と関連する可能性がある。重瞼形成の有無は、日本人の眼瞼部における重要な要素である。重瞼形態から眼窩形態が推測できるならば、これもまた臨床的意義が大きい。本研究は、CT 画像から眼窩の形態を解析および分類し、日本人の眼窩の形態と眼瞼の形態の関係を調べることを目的とする。

対象と方法:
2016 年 4 月から 2019 年 6 月の間に神戸大学医学部附属病院形成外科にて顔 面 CT を撮影した患者で多断面再構成像が得ることが可能な患者を対象とした。なお、両側とも眼窩の骨に損傷または欠損が生じている患者、日本人ではないと 判断される患者は除外した。眼窩前方、中間位、後方での冠状平面での眼窩内壁・下壁の長さ及び両者のなす角度を計測した。冠状平面は口蓋平面に垂直の面と し、眼窩前方は後涙嚢稜を通る冠状面、眼窩中間位は下眼窩裂最外側点を通る冠 状面、眼窩後方は後篩骨孔を通る冠状面とした。また鼻骨の高さの指標となる simotic index(鼻骨の高さ/鼻骨の幅)を計測した。simotic index は通常、鼻骨 の一番細くなっている部位で測定するが、CT 画像での測定の正確性を期すため、篩骨垂直板の付着部で測定した。さらに、上眼瞼の厚さ(矢状断において眼球中 心における瞼縁と眼窩上縁の間の中間点での厚さ)を測定した。顔貌の写真が撮 影されていたものに関しては、重瞼の有無を評価した。その際、重瞼形成の手術 を受けていることが明らかなものは除外した。

結果:
男性 60 名(右 29、左 31 例)、女性 44 名(左右とも 22 例)の CT 画像が対象となった。男女共に、眼窩底と眼窩内壁の長さ及びその角度は前方、中間、後方のいずれの位置においても左右差を認めなかった。前方位及び中間位での眼窩底長と後方位での眼窩内壁長において、有意に男性の方が大きかった。また simotic index も男性が大きかった。角度はどの位置においても男女の差を認めなかった。

男女ともに前方位においては、角度と眼窩底長及び眼窩内壁長に負の相関を認めた(角度が大きいほど長さは短い)。中間位においては男性では角度と眼窩内壁長が、女性では角度と眼窩底長がいずれも負の相関を認めた。

平均的には男女とも眼窩底と眼窩内壁のなす角度は後方に向かって大きくなっていく結果であったが、中間位から後方位にかけては、角度が狭まる群(Type A)と角度が広がる群(Type B)があることが分かった。Simotic index は、男女ともに有意に Type A が大きい結果となった。

男性では type A は 19 名、typeB は 18 名で顔貌が評価できた。typeA は 74%(14 名)が double eyelid であり、type B では 56%(10 名)であった。女性では typeA は 5 名、typeB は 21 名で顔貌が評価できた。type A の 60%(3 名)が doouble eyelid であり、type B では 43%(9 名)であった。いずれも type Aの方が double eyelid の割合は高かったが、有意な差は認めなかった

Discussion:
CT 画像より正常眼窩形態を解析する研究は、過去にも複数の研究がある。左右の眼窩が対称性であること、男性より女性の方が眼窩のサイズは小さいこと、眼窩底の傾斜は大人よりも子供の方が、女性よりも男性の方が急であること、などが報告されている。本研究でも左右対称性や性差については同様の結果であった。

我々の研究では、眼窩の中間位から後方にかけて、内壁と下壁の角度が縮小する群(type A)と拡大する群(type B)があることが分かった。このことからは眼窩形態は多様であり、標準化することが難しいことが示唆される。興味深いことに、type A 群は type B 群に比べて有意に simotic index が大きく、重瞼の人たちも多い傾向にあった。

日本人は遺伝的に南東アジアより最初に列島に入った縄文人と、その後に北東アジアより来た弥生人に分けられる。眼瞼部の特徴として縄文人はよく開いた大きい目と重瞼を持ち、弥生人は寒地順応のため狭く細い目で一重瞼であると言われる。また縄文人は立体的な顔貌をしており、simotic index が弥生人に比較して大きいという報告もある。本研究において認められた眼窩形態の違い (type A と type B)は、縄文人と弥生人の違いを表している可能性がある。

Conlusion:
CT 画像を用いて、正常眼窩の形態解析を行った。その結果眼窩は左右が対称であること、男性は女性より眼窩形態が大きいことが分かった。また、眼窩の中間位から後方位にかけて内壁と下壁の角度が縮小する群と拡大する群があることが分かった。眼窩形態の複雑さ及び多様さが示されると共に、この違いは縄文 人と弥生人という日本人の遺伝的違いを表している可能性があると考えられた。

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