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大学・研究所にある論文を検索できる 「心房細動が僧帽弁形態に及ぼす影響と僧帽弁閉鎖不全症との関連について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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心房細動が僧帽弁形態に及ぼす影響と僧帽弁閉鎖不全症との関連について

Takada, Hiroki 神戸大学

2020.03.25

概要

【背景】
心房細動は、心房が洞房結節の刺激によらずに速く部分的に興奮収縮し、規則的な洞房結節の活動が伝わらず、心室の収縮が不規則な間隔で起こる不整脈である。心房細動は加齢とともに増加し、70歳代の5%、80歳代の10%程度の割合で起こり、日本国内に約130万人の心房細動患者がいると報告されている。臨床上有意な器質的心疾患を認めない心房細動(孤立性心房細動)では、しばしば僧帽弁閉鎖不 全症(MR)を合併する。心房細動に罹患すると左心房が拡大することにより、僧帽弁輪も拡大する。そのために僧帽弁(前尖と後尖)の接合が不良となり、MRが発生する。さらに、孤立性心房細動に合併したMRにより心不全を発症した症例においては、内科的治療では奏功せず、外科的手術が必要な例もしばしば経験する。このように、孤立性心房細動におけるMRの主原因は僧帽弁輪の拡大と考えられており、Carpentier分類のタイプIに分類されている。しかしながら、孤立性心房細動におけるMRの原因が、実際に僧帽弁輪の拡大のみで発生しているかは不明であり、心房細動による僧帽弁複合体(僧帽弁、僧帽弁輪など)の詳細な変化は不明である。しかしながら僧帽弁複合体の詳細な画像評価は日常臨床では困難である。

近年の経食道三次元心エコー図検査(3D-TEE)は、マトリックスアレイトランスデューサーの開発と発展、超音波装置に内蔵されるハードの演算能力の向上、加えて3D解析ソプトウヱアーの進歩により、3D探触子でvolume dataを短時間に収集、 再構築することができるようになった。さらに、3D-TEEでは、従来の二次元心エコ一図法では得られない立体的構築画像が得られ、客観的視覚的評価に有用である。特に、僧帽弁疾患においては、心臓が拍動している状態の生理的な僧帽弁を立体画像として観察でき、さらに解析ソフトを使用することにより、二次元心エコー図法では行うことのできない僧帽弁の詳細な評価が可能である。具体的には僧帽弁葉の面積、長さ、僧帽弁輪の面積などの定量評価が可能である。よって、本研究の目的は3D-TEEが施行された孤立性心房細動患者において、僧帽弁複合体の詳細な評価を行い、心房細動におけるMRの原因を調べることである。

【方法】
2016年2月から2017年9月まで、当院循環器内科で心房細動に対するカテーテル アブレーションまたは電気的除細動が予定されており、左心耳内血栓の有無の評価のために経食道心エコー図検査(3D-TEEを含む)が施行された心房細動患者96例を対象とした。全例経胸壁心エコー図検査も施行された。左室駆出率が低下している症例(50%未満)、開心術の既往がある症例、重度の腎機能障害を認める症例 (GFR<30mL/min/1.73m2)、コントロール不良な高血圧症例(>180/100mmHg)、中等 度以上の大動脈弁疾患を有する症例、Carpentier分類のType I以外の要因が主原因であるMR症例は本研究から除外した。経胸壁心エコー図検査を用いて、米国心エコ一図学会の基準に従ってMRを定量評価し、重症度をmild、moderate、severeと分類し、moderate以上を有意なMRと定義した。なお、経食道心エコー図検査は全例 SIEMSNS社製のACUSONSC2000を用いて行い、3Dデータベースの解析は SIEMENS社eSie Valves valve-modeling softwareを使用した。僧帽弁の3D解析とし て、僧帽弁輪面積、前尖面積、後尖面積を測定した。また相対的前尖面積(僧帽弁前尖面積/僧帽弁輪面積)と相対的後尖面積(僧帽弁後尖面積/僧帽弁輪面積)も計測した。

【結果】
本研究の対象患者の平均年齢は66±10歳、34例(35%)が女性であった。左室駆出率は平均63±6%でぁり、持続性心房細動患者が47例、一過性心房細動患者が49例であった。また、全96例のうち、MR群は11例、非MR群は85例に分類された。

MR群と非MR群での患者背景の比較では、MR群で体格が有意に小さく(体表面積:1.49±0.21m2vs. 1.74±0.19m2、P=0.001)、持続性心房細動患者が多く (100%vs. 42%、P<0.001;CHADS2 スコア:2.2± 1.6vs.1.3± 1.2、P=0.04)、CHADS2 スコアが高値であった(2.2±1.6vs.1.3±1.2、P=0.04)。経胸壁心エコー図検査結果の比較では、左室はMR群で有意に大きく、(左室拡張末期径:51.4±7.9mm vs. 46.0±5.2mm. P=0.004 ;左室収縮末期径:37.2±7.6mm vs. 29.6±4.7mm、P-0.008)、左房も MR 群で有意に大であった(左房容積係数:110.4±57.5mL/m2 vs. 43.3±16.8mL、m2、 P<0.0001)。経食道心エコー図検査での3D解析では、僧帽弁輪面積はMR群で有意 に大きく(10.6±1.8cm2vs. 8.2±1.5cm2、P<0.0001)、前尖面積と後尖面積もMR群で有意に大であった(前尖面積:5.8±1.1cm2 vs. 4.4±0.9cm2、P<0.0001;後尖面積: 5.3±1.0cm2vs. 4.6±1.9cm2、P=0.04)。また、相対的後尖面積はMR群で有意に小さくなっていたが(0.51±0.06 vs 0.57±0.01、Ρ=0,002)、相対的前尖面積には有意差を認めなかった(0.56±0.08 vs. 0.54±0.07、P=0.65)。

有意なMR (Moderate以上)の発生に関与する因子を多変量解析で検討したところ、左房容積係数とともに相対的後尖面積が有意なMRの発生に寄与する独立した因子であった。また、逐次投入法による多変量ロジスティック回帰解析では、年 齢、性別、左室駆出率を入れたモデル(χ2=4.5)に左房容積係数を加えることで有意なMRの規定因子となり(χ2=38.1、Ρ<0.001)、さらに僧帽弁輪面積を加えるとその 精度が上昇した(χ2=44.6、Ρ=0.01)。そして、相対的後尖面積を加えることでその精度がさらに向上した(χ2=64.6、Ρ<0.001)。

【考察】
3D-TEEを用いた本研究では、心房細動患者に合併するCarpentier分類のType I MRの発生には、過去の報告通り、左房の拡大ならびに僧帽弁輪の拡大が関与していた。有意なMRを有する心房細動患者では、僧帽弁輪の拡大とともに、前尖、後尖ともに拡大する傾向を認めたが、後尖の拡大度合いは有意に少なかった(僧帽弁後尖の相対的短縮)。さらに、この僧帽弁後尖の相対的短縮がMRの発生に深く寄与していた。

心房細動に合併した手術適応のあるCarpentier分類のTypelのMRでは、拡大した僧帽弁輪を矯正する手術として、人工弁輪を使用した僧帽弁輪縫縮術が一般的に行われ、良好な成績が報告されている。しかしながら人工弁輪を使用した僧帽弁輪縫縮術のみでは術後にMRが再発することがしばしば経験する。このような症例の大多数では、僧帽弁前尖のみで僧帽弁の閉鎖が行われており、僧帽弁後尖が僧帽弁の閉鎖に寄与しておらず、MRの再発の原因になっていると考えられている。また、このような症例では僧帽弁後尖が短縮しているように見えることも、本症例の特徴である。おそらくこれは心房細動により相対的に短縮した僧帽弁後尖が、弁の接合に寄与しないことがMRに再発の原因であると考えられる。このような症例では、僧帽弁後尖の弁尖拡大法による僧帽弁形成術などの追加の術式が必要になる。よって、心房細動に合併したM R における、3D-TEE による僧帽弁( 特に僧帽弁後尖のサイズ) の詳細な評価は、本症例の治療法の決定に関しても重要である可能性が本研究により示唆された。

【結語】
心房細動患者では僧帽弁輪拡大のみならず、僧帽弁後尖の相対的短縮がMRの発生に深く関与していた。本研究の結果から、心房細動に合併したMRにおいては、3D経食道心エコー図を用いた、僧帽弁面積の評価、特に僧帽弁後尖面積の評価が治療法の決定に重要であり、外科手術の術式決定に影響を与える可能性がある。

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