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大学・研究所にある論文を検索できる 「極低出生体重児の頭部MRIにおける不均等な脳室拡大を評価するための新規手法」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

極低出生体重児の頭部MRIにおける不均等な脳室拡大を評価するための新規手法

Ikuta, Toshihiko 神戸大学

2020.03.25

概要

背景
血管やグリアの形成が未熟な早産児の脳は、虚血や炎症などの影響を受け易く、容易に白質障害をきたし、その結果側脳室の拡大が生じる。ヒトの脳は生後 3 年の間に劇的な成長を遂げ、数兆ものシナプス結合が行われるため、神経発達障害のリスクのある児を早期に同定し、早期にリハビリテーションを開始することが重要とされている。本研究の目的は、極低出生体重児の正期産相当時頭部 MRI を用いて、白質障害による側脳室拡大の特徴を評価すること、さらに脳室拡大を評価するための新しい指標を確立することである。

方法
研究デザインは診療録による後方視的観察研究。対象は 2009 年 8 月から 2011 年 12 月に兵庫県立こども病院で出生した極低出生体重児(出生体重 1500g 未満の児)179 例、及び 2011 年に他 5 施設(神戸大学医学部附属病院、公立豊岡病院組合立豊岡病院、済生会兵庫県病院、高槻病院、姫路赤十字病院)で出生した極低出生体重児 167 例の合計 346 例のうち、染色体異常を認めた 10 例、先天性脳奇形を認めた 3 例、修正 37 週未満で死亡した 6 例、ビリルビン脳症であることが明らかな 1 例、また MRI の撮影時期または画像が不適切だった 20 例、予後不詳の 12 例を除外した 294 例。診療録より、在胎週数、出生体重、性別、人工換気療法期間、治療を行った未熟児網膜症の有無、Papile 分類 3 度以上の脳室内出血の有無(定期的な頭部エコーによる評価)、嚢胞性脳室周囲白質軟化症(cystic periventricular leukomalacia , cPVL)の有無(正期産相当時頭部 MRI による評価)、また修正 18 か月での歩行確立の有無に関する情報を抽出した。正期産相当時の頭部 MRI は修正 36 週 0 日から 43 週 6 日に撮影した。T2 強調画像水平断のモンロー孔が最も明瞭に映る断面を用いて、側脳室の右前角幅(a)、左前角幅(b)、右後角幅(c)、左後角幅(d)、大脳の前後径(e)、左右径(f)を測定した。脳の大きさによる側脳室幅の補正を行った。水平断における大脳を楕円に近似し、楕円の円周の近似値が 2π×(長半径+短半径)であることから、各側脳室幅を(大脳の前後径と左右径の和)で除したものを 100 倍した値を補正値とした。本研究は神戸大学大学院医学研究科等医学倫理委員会の承認を得て行われた。

結果
極低出生体重児の正期産相当時頭部 MRI における脳室拡大の特徴とその評価法
2011 年に兵庫県立こども病院で出生した極低出生体重児 58 例の正期産相当時頭部MRI について、2 人の新生児科医が上述の方法で脳室幅、大脳径を測定した結果、ICC(Intraclass Correlation Coefficients)は左前角幅で 0.95、右前角幅で 0.98、左後角幅で 0.99、右後角幅で 0.98、前後径で 0.99、左右径で 0.99 であった。大脳径で補正した側脳室幅の中央値は右前角が 1.2、左前角が 1.3、右後角が 3.8、左後角が 4.6 であり、前角幅、後角幅ともに左側が有意に大きく、左側、右側ともに前角幅より後角幅が有意に大きかった。また、90%tile 以上の脳室幅を脳室拡大としたとき、各脳室間の脳室拡大の一致率、及びκ係数は、左前角と右前角で 74.8%、0.205、左後角と右後角で 78.9%、0.435、左前角と左後角で 71.4%、0.083、右前角と右後角で 76.9%、0.386 であり、脳室拡大の程度は各脳室間で不均等であった。

このような不均等な脳室拡大を評価するための新たな指標として Lateral Ventricular Index(LVI)={3×(a+b)+c+d}×100/(e+f)を作成した。各側脳室幅の和を用いた計算式だが、今回の検討で後角幅が前角幅の約 3 倍であったことから、前角の拡大を過小評価しないように、前角幅を 3 倍した。また、前述した脳室幅の評価と同様に、脳の大きさによる補正のため、大脳の前後径と左右径の和で除し、さらに 100 倍した。

修正 18 ヶ月での歩行確立の有無と LVI との関連
本研究における修正 18 か月での歩行確立は 255 例、未確立は 39 例であった。在胎週数、出生体重の中央値は、歩行確立群が、29.1 週、1062g、歩行未確立群が 28.4 週、979g であった。歩行未確立群で 3 度以上の脳室内出血、嚢胞性脳室周囲白質軟化症が有意に多かった(各々、p<0.001、 p<0.001)。頭部 MRI 撮影週数の中央値は修正 38.3 週であった。LVI の中央値は、歩行確立群と比べて、歩行未確立群で有意に高かった(各々15.8、18.2、p = 0.020)。

ROC 曲線解析を用いて修正 18 か月での歩行未確立を検出するための LVI のカットオフ値を算出し、正確度が 80%より大きく、かつ Youden index が最大となる値である 21.5 を LVI のカットオフ値とした。修正 1 歳 6 か月時点での歩行未確立を従属変数とし、LVI > 21.5 、在胎週数 、出生体重を独立変数として多変量解析を行い、歩行未確立群と確立群との間で LVI > 21.5 に有意差を認めた(オッズ比 2.56、95%信頼区間 1.02-6.41、p=0.008)。3 度以上の脳室内出血、cPVL は脳室拡大との関連性があるため、多変量解析には加えなかった。

Conclusion
今回の研究で、我々は極低出生体重児の正期産相当時頭部 MRI で認められる側脳室拡大が不均等であることを示し、側脳室拡大の指標として LVI を提案した。また、LVI>21.5 が修正 18 か月での歩行未確立と独立して関連することを示した。

参考文献

1. Khwaja O, Volpe JJ. Pathogenesis of cerebral white matter injury of prematurity. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2008; 93(2): F153-61.

2. Fox LM, Choo P, Rogerson SR, et al. The relationship between ventricular size at 1 month and outcome at 2 years in infants less than 30 weeks' gestation. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 2014; 99(3): F209-14.

3. Dobbing J, Sands J. Quantitative growth and development of human brain. Arch Dis Child 1973; 48(10): 757-67.

4. Johnston MV. Plasticity in the developing brain: implications for rehabilitation. Dev Disabil Res Rev 2009; 15(2): 94-101.

5. Spittle A, Orton J, Anderson PJ, Boyd R, Doyle LW. Early developmental intervention programmes provided post hospital discharge to prevent motor and cognitive impairment in preterm infants. Cochrane Database Syst Rev 2015; (11): Cd005495.

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