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大学・研究所にある論文を検索できる 「CD244陽性多形核細胞系骨髄由来抑制細胞は大腸癌マウスモデルにおいて腹膜播種の病態を反映する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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CD244陽性多形核細胞系骨髄由来抑制細胞は大腸癌マウスモデルにおいて腹膜播種の病態を反映する

Sugita, Yutaka 神戸大学

2021.03.25

概要

【序論】
大腸癌の病態のうち、腹膜播種は難治性で予後不良である。腫瘍細胞は免疫から逃避することで増殖・進展することが知られており、腹膜播種の病態解明には腹腔内の腫瘍免疫微小環境の解析が重要である。骨髄由来抑制細胞(Myeloid derived suppressor cells: MDSC)は担癌宿主の生体内に蓄積し、主に T 細胞を中心とした抗腫瘍免疫応答を抑制することで腫瘍微小環境の構築に関与することが知られているが、腹膜播種の発生や進展への影響は十分に解明されていない。また、多形核細胞系の subset であるPMN(polymorphonuclear)-MDSC は、現在広く使用されているマーカー(CD11b+Ly6ClowLy6G+)では好中球との鑑別が困難とされていたが、近年マウスにおいて CD244 分子が鑑別に有用であると報告されている。本研究では、PMN-MDSC のマーカーとして CD244 を使用し、大腸癌腹膜播種マウスモデルにおける免疫微小環境を解析することで、腹膜播種の病勢に関与する因子を検討した。

【方法】
マウス大腸癌細胞株 MC38 を C57BL/6J マウスに腹腔内接種および皮下接種し、腹膜播種(PD)モデルおよび皮下接種(SC)モデルを作成した。PD および SC モデルにおける生存解析およびルシフェラーゼ発光イメージングを用いた経時的な腫瘍量の計測を行った。次にフローサイトメーターを用いて、両モデルにおける腹腔内、脾臓、末梢血における免疫細胞の経時的な推移を解析した。また、Cytometric bead array (CBA)を用いて両モデルにおける腹腔内/血漿サイトカインを解析した。さらに担癌マウスより CD244 陽性細胞(CD244+CD11b+Ly6ClowLy6G+)および陰性細胞(CD244-CD11b+Ly6ClowLy6G+)をソーティングし、qPCR を用いて PMN-MDSC における発現が特徴的な免疫抑制因子(ARG-1、NOS2、MPO)の解析を行い、CFSE を用いた OT-1 CD8+T 細胞との共培養による抗原特異的 CD8+T 細胞増殖抑制能の解析を行った。最後に PMN-MDSC を標的とした治療として、Ly6G モノクローナル抗体を用いた腹膜播種治療モデルを作成し、ルシフェラーゼ発光イメージングを用いた経時的な腫瘍量の解析と生存解析を行った。さらに同モデルにおいて、フローサイトメーターを用いて腹腔内および末梢血における T 細胞の数と割合を解析した。

【結果】
PD モデルでは SC モデルと比較して、有意に予後不良で腫瘍量の増大も速かった(P=0.015,P=0.048)。PD モデルでは腹腔内で PMN-MDSC および M-MDSC が有意に増加し(P=0.046,P=0.027)、特に腫瘍接種後 13 日以降では PMN-MDSC の増加が顕著であった。末梢血においても同様の傾向がみられた。一方で SC モデルでも脾臓、末梢血で PMN-MDSC と M-MDSC の経時的な増加がみられたが、一貫して M-MDSC が優位であった。PD モデルにおいて CD11b+Ly6ClowLy6G+ 細胞中の CD244 陽性細胞の割合は、腹腔内、脾臓、末梢血いずれにおいても経時的に増加したが、特に腹腔内で顕著であった(P=0.0007 vs.脾臓, P=0.0007 vs.末梢血)。CBA を用いたサイトカイン解析では、PD モデルにおいて腹腔内および血漿中の IL-6 と TNF-α が有意に増加し、加えて腹腔内では G-CSF も有意に増加していた(P=0.042 vs. naïve マウス)。In vitro の解析では、MC38 大腸癌細胞株は細胞数依存的に IL-6 および G-CSFを産生した。PMN-MDSC の機能解析では、CD244 陽性細胞(CD244+CD11b+Ly6ClowLy6G+)では陰性細胞(CD244-CD11b+Ly6ClowLy6G+)と比較して、有意な ARG-1、NOS2、MPO の発現がみられた(Arg1: P=0.030, Nos2: P=0.036,Mpo:P=0.005)。また、CFSE を用いた細胞増殖 assay では CD244 陽性細胞との共培養で有意に抗原特異的 CD8+T 細胞の増殖抑制能を認め(P=0.030 vs. CD244 陰性細胞)、T 細胞数の有意な減少を認めた(P=0.031 vs. CD244 陰性細胞)。Ly6G 抗体治療群ではコントロール群と比較して、生存解析では有意差はみられなかったが、腫瘍増大は有意に抑制された(P=0.025)。さらに治療群では腹腔内(CD4:P=0.037, CD8:P=0.025)および末梢血中(CD4:P=0.025, CD8:P=0.037)で有意に T 細胞数の増加を認めた。

【考察】
現在多くの研究ではマウスの PMN-MDSC は CD11b+Ly6ClowLy6G+と定義されているが、好中球も同一のマーカーで定義されており、その鑑別は MDSC 研究において長年の課題とされている。CD244 分子は NK 細胞や CD8+T 細胞に発現することが知られているが、近年 PMN-MDSC と好中球の鑑別に有用との報告がみられている。本研究では CD244 分子を PMN-MDSC のマーカーとして用い、PD モデルにおいて腹腔内および末梢血で腹膜播種の増大に伴い PMN-MDSC が顕著に増加することを示した。また、同時に機能解析により CD244 分子の有用性を確認した。腹腔内サイトカインの解析では IL-6,TNF-α,G-CSF の増加を認め、IL-6,G-CSF は腫瘍由来であることを確認した。G-CSF は PMN-MDSC の産生に関与し、IL-6 はその全身への蓄積を促進することが報告されている。以上の結果から腫瘍由来の G-CSF により腹腔内 PMN-MDSC の産生が促進され、全身性に増加したと考察された。次に PMNMDSC を標的とした治療モデルを作成し、腹膜播種における治療効果を検討した。本研究では、PD モデルにおいて腹腔内 Ly6G 陽性細胞のうち大部分を CD244 陽性細胞が占めること、CD244 抗体は NK 細胞や CD8+T 細胞にも影響を与える可能性を考慮し、治療薬として CD244 抗体ではなく Ly6G 抗体を選択した。治療群では腫瘍の増大が有意に抑制されたが、生存ではコントロール群と有意差を認めなかった。Ly6G 抗体投与では投与後 1 週間ほどで髄外造血によるリバウンドが報告されており、本研究の生存で有意差がみられなかった要因と考えられた。しかしながら、治療群では腹腔内・末梢血中で有意に T 細胞数の増加を認め、Ly6G 抗体が PMN-MDSC による T 細胞抑制を解除することで腫瘍増大を抑制することが示唆された。

【まとめ】
本研究では、PMN-MDSC が T 細胞の抗腫瘍活性を抑制し、腹膜播種の進行を誘導することを明らかにした。本研究の知見により、PMN-MDSC を標的とした治療が、免疫チェックポイント阻害剤などの T 細胞免疫療法との組み合わせにより、今後新たな腹膜播種治療開発の基盤となることが期待される。

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