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書き出し

肥満によるCD4+ T細胞の減少と免疫機能不全が大腸癌の進行を促進させる

山田, 康太 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Reduced Number and Immune Dysfunction of CD4+ T
Cells in Obesity Accelerate Colorectal Cancer
Progression

山田, 康太
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8612号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482360
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Reduced Number and Immune Dysfunction of CD4+ T Cells
in Obesity Accelerate Colorectal Cancer Progression
肥満による CD4+ T 細胞の減少と免疫機能不全が大腸癌の進行を促進させる

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
食道胃腸外科学
(指導教員:掛地 吉弘 教授)
山田 康太

【背景】
肥満の世界的な有病率は 1975 年から 2016 年の間にほぼ 3 倍になり、
世界中で成人の約 39%
が過体重(Body Mass Index(BMI)≧25kg/m2)
、13%が肥満(BMI≧30kg/m2)であるこ
とが明らかになっている。また肥満は大腸癌を含む様々な種類のがんの危険因子として知ら
れている。近年、肥満は腫瘍免疫微小環境(TIME; Tumor Immune Microenvironment)に
おいて CD8+T 細胞や NK 細胞などの細胞障害性免疫細胞の数や機能を低下させ、腫瘍の成
長を促進させることが報告されている。一方、TIME において CD4+ T 細胞は CD8+T 細胞
や NK 細胞といった細胞障害性免疫細胞の活性化や機能維持などの“helper”として機能し、
また自身も直接腫瘍を殺傷する機能を持つとされる。しかし CD4+ T 細胞に対する肥満の影
響については、依然として不明な点が多い。
【目的・方法】
そこで本研究では、TIME における CD4+ T 細胞に及ぼす肥満の影響を明らかにすることを
目的とした。肥満マウスモデルの確立にあたっては、まず総カロリーの 45%が脂質からなる
高脂肪食(HFD; High Fat Diet)を、対照群として 10%が脂質からなる対照食(CD; Control
Diet)を9週間給餌した。その後 MC38 大腸癌細胞株をマウスの背部に皮下接種して、腫瘍
を持つ食餌誘発肥満マウスモデルを確立した。腫瘍を皮下接種した3週間後に、肥満が腫瘍
の進行や TIME における CD4+T 細胞に与える影響をフローサイトメトリーや蛍光免疫染色
を用いて解析を行った。
【結果】
9週間の給餌の結果、CD 給餌マウスと比較して HFD 給餌マウスは有意に体重の増加を示し
た。肥満の過程において HFD 給餌マウスの血液中の CD4+ T 細胞は減少し、programmed
death-1 (PD-1) の発現の割合が増加した。また腸間膜リンパ節やパイエル板などの GALT で
は CD4+ T 細胞の減少が観察された。
9週間の給餌ののちに MC38 大腸癌細胞株を皮下接種したところ、HFD 給餌マウスの腫瘍
の成長は CD 給餌マウスと比較し有意に加速され生存率の低下を認めた。腫瘍を接種した3
週間後に末梢血と腫瘍中の CD4+ T 細胞をフローサイトメトリー及び蛍光免疫染色によって
解析した。末梢血において HFD 給餌マウスの血液中の CD4+ T 細胞数は、CD 給餌マウスの
それと比較して減少していた。同様に腫瘍中の CD4+ T 細胞の数は HFD 給餌マウスで著し
く減少し、PD-1 の高発現の割合が増加した。また脱顆粒マーカーである CD107a の発現と
IFN-γ や TNF-α などのサイトカイン産生は HFD 給餌マウスの腫瘍中 CD4+ T 細胞で有意に
減少していた。
HFD 給餌マウスにおける腫瘍増殖の加速が、CD4+ T 細胞の減少に関与しているかどうかを
決定するために、抗 CD4 抗体を用いて CD4+ T 細胞の枯渇実験を実施した。コントロール
としての IgG 抗体投与群における食餌依存性の腫瘍成長の加速は、CD4+ T 細胞を枯渇させ
たマウスでは観察されなかった。
これらの結果は CD8+T 細胞についても同様に観察された。
これらの結果は、HFD 誘発肥満による腫瘍増殖の促進は、CD8+ T 細胞のみでなく、CD4+
T 細胞依存的に引き起こされることが示された。

2

【考察】
我々は、腫瘍接種する前の HFD 給餌マウスでは末梢血と GALT における CD4+ T 細胞数が
減少していることを示した。これまでの報告では、HFD の給餌は胸腺の萎縮を引き起こしナ
イーブ CD4+および CD8+ T 細胞の数を減少させ、腸管免疫を損なうことが示されている。
しかし、我々の結果においては胸腺における T 細胞の成熟異常、末梢血や GALT における
CD8+ T 細胞数の減少は観察されなかった。これらの報告と我々の結果の不一致は、HFD の
組成の違いに起因すると考えられる(我々の研究:45%HFD、以前の研究:60%HFD)
。し
たがって、我々の結果は、CD4+ T 細胞は CD8+ T 細胞よりも脂質毒性に対してより感受性
が高いことを示唆するものであった。実際に非アルコール性脂肪肝疾患における報告では、
大量の脂肪酸によってミトコンドリア由来の ROS の蓄積が引き起こされ、肝内 CD4+ T 細
胞が選択的に損なわれ、肝細胞癌の進行に寄与していることが示されている。
そして腫瘍を接種した HFD 給餌マウスの解析において、腫瘍中の CD4+および CD8+ T 細
胞は、疲弊を表す PD-1 の高発現の割合が増加し、CD107a の発現が減少していることが確
認された。CD107a は細胞障害性 T 細胞がパーフォリン、グランザイムなどの細胞傷害因子
を放出した際に細胞膜上に表出するタンパクである。さらに、HFD 給餌マウスの CD4+ T 細
胞は、IFN-γ や TNF-α などのサイトカインの産生が低下していることが確認された。これら
の結果は、HFD 給餌マウスの CD4+ T 細胞の直接的な抗腫瘍効果は、表現型的にも機能的に
も損なわれていることを示している。肥満関連 TIME では、脂肪酸レベルの上昇は、レプチ
ン/PD-1-STAT3 経路を通じてエフェクターCD8+ T 細胞の解糖を阻害し、抗腫瘍活性を低下
させることが示されており、我々の結果で認められた肥満における CD4+ T 細胞の抗腫瘍効
果の低下に関しても同様のメカニズムが想定される。
本研究は、食餌誘発肥満のマウスに単一細胞株を接種する限定条件下でのモデルによる検証
である。実際の肥満モデルは複雑であり種々のマウスモデルにおいては、体重、脂肪量、代
謝因子だけでなく、炎症および関連因子も異なっている為、病態に応じたモデルの選択が必
要である。我々は、45%、60%HFD の詳細な研究を行っており、これをベースに、遺伝子改
変マウスモデル等を用いて、肥満と大腸癌の進行についてさらに洞察を深めたいと考えてい
る。
我々のモデルでは、肥満マウスにおける MC38 大腸癌細胞の TIME において、CD4+ T 細胞
の数の減少および抗腫瘍免疫機能不全を明らかにした。そして肥満関連 TIME において
CD4+ T 細胞が重要な役割を果たしており、肥満において CD4+ T 細胞の抗腫瘍活性の低下
が、CD8+ T 細胞への影響を介して腫瘍成長の加速に寄与していることが示された。
【結語】
食餌誘発肥満マウスの TIME において、CD4+ T 細胞の減少および抗腫瘍免疫機能不全が腫
瘍成長の加速に寄与していることが示された。HFD による肥満が CD4+ T 細胞の抗腫瘍活
性に与える影響についての我々の知見は、肥満を併発した CRC の予後不良の病態を解明す
る手がかりとなる可能性がある。

3

神 戸 大 学 大 学 院 医 学(
系)
研究科(博士課程)

論 文 審査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

論文題目

甲第

3277 号

氏 名

山田康太

ReducedNumberandImmuneDysfunctiono
fCD4+T
C
e
l
l
si
nObesityA
c
c
e
l
e
r
a
t
eC
o
l
o
r
e
c
t
a
lCancer
Progression

T
i
t
l
eo
f
D
is
s
er
t
a
t
i
o
n 肥満による CD4
+ T細胞の減少と免疫機能不全が大腸癌の
進行を促進させる

-~.


`^

主 査

審査委員

Exami
n
e
r

C
h
i
e
fExamin
e
r
副 査

v
1
c
e

e
x
a
m
1
n
e
r
副 査

V
i
1
c
e

e
x
am1n
e
r




点叶→元
I



\立/シ乃摩 2

(要旨は 1, 0 0 0宇∼ 2, 0 0 0字程度)

く背景>
肥満は大腸癌を含む様々な種類のがんの危険因子として知られている 。近年、肥満は腫瘍免疫微小環境
(
T
I
M
E
; Tumor ImmuneMicroenvironment) において CDS+T細胞や NK細胞などの細胞障害性免疫細胞の

数や機能を低下させ、腫瘍の成長を促進させることが報告されて いる 。 しかし CD4+T 細胞に対する肥
満の影態については、依然として不明な点が多い。
そこで本研究では、 TIMEにおける CD4+T細胞 に及ぼす肥満の影幣を明らかにすることを目的と した。
そして総カロリーの 45%が脂質からなる高脂肋食 (
H
F
D
;l
l
ighFatD
i
e
t
) を用いて肥襴マウスモ デルを
確 立した。 その後 MC38大腸癌細胞株をマウスの背部に皮下接種し 、肥満が腫船の進行や TIMEにおける
CD4+
T 細胞に与える影孵をフローサイトメトリーや蛍光免疫染色を用いて解析を行った。

く結果>
l
. HFD誘発肥満は、 末肖血と腸管関連リンパ組織 (
GAしT) における CD4+T細胞を減少させる
9 週間 の給餌後、 HFD マウスは CD マウス と比較して有揺に体 重が増加した。 フローサイトメトリーの

結果、 8週目の HFDマウスでは末梢血中の CD4+T細胞の数及び割合は、 CDマウスと比較して有意に減
少した。 一方で CDS+T細胞数の減少は、 HFDマウスでは認めなかった。二 次リンパ組織では腸間膜リン
パ節やパイエル板な どの GALTで CD4+T細胞数の減少が観察された。 これ らの結果は 、HFDの給餌が末
梢血と GALTにおいて CD4+T細胞特異的な減少を引き起こすことを示している 。
2. HFD誘発肥満は腫瘍の成長を加速させ、 生存率を 低下させる

腿 船 接 種 3週間にわたって腫瘍の成長と生存に関して解析を行なったところ HFD給餌は腫瘍の成長を促
進し、 生存 率を低下させた
3.腫 船の接種は 、1
I
FD誘発肥満マウスの血液中の CD4+T細胞の数の減少と消耗をさらに促進する
MC38細胞を接種して 3週間後、 HFD群の血液中の CD4+T細胞数は 、CD群のそれと比較して著しく減少

していた。 フローサイ トメトリ ーでは、 CDおよび HFDマウス 間の血液中の CD4+および CDS+T細胞のナ
イ ー プ (CD44lowCD62Lhigh)、エフェクターメモリー (CD44highCD62Llow) およびセント ラルメモ リ
ighCD62Lhigh) 亜集団の割合に差を認めなかった。 一方、 CD4+ T 細胞における PD
-1high
ー (CD44h

の細胞の割合は、 HFD群で有意に増加した。
4. HFD誘発肥満は、腫船中の CD4+T細 胞の減少および機能不全を促進する

腫船接種 3週間後に腫船中の免疫細胞を解析した。 腫瘍中の CD4+T細胞数は、 CD群と比較して HFD群
で蒋しく減少した。 PD-1highの細胞の割合は、 HFD群の CD4+および CDS+T細胞の両方で有意に増加し
た。CD4+および CD8+
T細胞における腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示す脱顆粒マーカーである CD1
07a
の発現レベルは I
I
F
D群において有意に減少した。これに関連して 、CD4+T細胞の IFN-yや TNF-a
:などの
サイトカインの産生は、 HFD群で有意に減少していた。 これらの結果は 、HFD による肥涸が、腫瘍にお
ける CD4+T細胞の疲弊 と細胞傷害活性の低下に起因する機能不全状態をもた らす ことを 示している 。

5. HFD銹発肥満は、 CD4+T細胞依存的に腫船成長を加速する
HFDマウスにおける腫瘍成長の加速が 、CD4+T 細胞の減少に関与して いるか どうかを 決定するために 、

枯渇分析 を実施した。抗 CD4抗体を腫船接種前日から投与し 、その後皮下腫瘍接種を行った。 コントロ
ールとしての Ig
G投与群の HFD給餌による腫船成長の加速は 、CD
4+T細胞 を枯渇させた群では観 察され
なかった。 CD8+T細胞についても同様の結果が観察さ れ た。 これ らの結果は、HFD誘発肥満 による腫瘍
成長の加速 は、CD8+T細胞依存性だけでなく、 CD4+T細胞依存性である ことを示していた。
<総括 >

本研 究では 、MC38細胞の肥満に伴 う TIMEにおいて 、CD4+T細胞の減少お よび抗腫船免疫機能不全を 明
4+T細胞 は、肥満の進展に伴い
、 そ
らかにした。我々 の結果では 、HFD給餌マウスでは 、末梢血 中の CD

の数が減少し 、経 時的に疲弊して い くことが分かった。 またこれまでの報告と同様 に HFDによる 肥満は
MC38腫瘍の成長を加速し 、生存率を低下させた。 さらに 、本研 究では 、1
I
F
D謗発肥満はこ れまで明らか

になっている CD8+
T細胞のみならず、CD
L
J
+T細胞の数の 減少と疲弊 ・機 能不全を導いた ことが明らかに
なった。 CD4+
T細胞を i
n vivoで枯渇させると 、CD4+
T細胞を枯渇さ せ た群では 、CD群と 1
I
F
D群とで腫
IFD マ ウスの肥満 に伴う TIME
瘍の成長に有意差は観察されなかった。 結論として 、腫船を有する 45%!

にお いて、CD4+T細胞の減少および抗腫瘍免疫機能不全が腫瘍成長の加速 に寄与して い ることが示され
た。HFDによる 肥満が CD4+T細胞の抗腫瘍活性に与える影態につ いての我 々の知見は、肥満を併発した
大腸癌の予後不良の病態を解明する手がかりとなる可能性がある 。
)I
巳満に関連した腫瘍免疫微小探坑につ いての研究で、肥 薦が CD4+
本研 究は、MC38大腸癌細胞株を用 いた
T細胞の抗腫船活性に与える影態を確認したもので 、同様の報告は他 にな い。 肥満 を併発 した大)
揚癌の

予後不良の病態に 関する知見を得たものとして価値ある業禎であると認め る。
よって 、本研 究者は 、博七(医学)の学位を得る斑格があると認める。

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