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Clinical Features and Risk Factors for Mortality in Hospitalized Older Adults with Pneumonia

福田 信彦 横浜市立大学

2022.03.25

概要

1.序論
超高齢化社会である日本において,肺炎は罹患率,死亡率がともに高い疾患のひとつである.厚生労働省による2018年の人口動態統計では,肺炎の死亡率は悪性新生物,心疾患,老衰,脳血管疾患に続き,第5位であり,第6位の誤嚥性肺炎と合わせると,老衰を除いて第3位となる.肺炎の治療および予防に関する知見が重要である.肺炎球菌は肺炎の病原菌として最も頻度が高い細菌である.その発症や重症化の予防は重要である.日本では肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(pneumococcal polysaccharide vaccine 23:PPV23)と沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine 13:PCV13)の2種類の肺炎球菌ワクチンを接種することが可能である.PPV23は5年ごとに公費で接種できる.先行研究で肺炎球菌ワクチンの効果として,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)の発症を73%予防すると言われている(Falkenhorst et al. , 2017).肺炎球菌ワクチンはIPDを伴わない肺炎球菌性肺炎を減少させる報告(Maruyama et al. , 2010)がある一方で,IPDを伴わない肺炎球菌性肺炎を増加させる報告もあり(Vila-Corcolesetal. , 2020),一致した見解を得られていない現状がある.肺炎の臨床背景,特に死亡に関わる危険因子を同定することは,肺炎の重症化を予防することに繋がり,重要である.本研究では,日本の市中病院で入院加療を行った高齢者肺炎を対象とし,臨床的特徴および肺炎球菌ワクチンとの関連について検討した.

2.研究の手法
2018年4月から2019年3月に藤沢市民病院呼吸器内科で急性肺炎として入院治療を行った患者を対象として,後方視的に研究を行った.市中肺炎あるいは医療・介護関連肺炎と診断された65歳以上の患者を抽出した.患者を肺炎球菌ワクチンの接種歴に基づいて2群に分け,それぞれの背景因子や重症度を含めた臨床的特徴について検討した.重症度の判定にはA-DROPスコアを用いた.A-DROPは年齢(男性:70歳以上,女性:75歳以上),血中尿素窒素(210mg/L以上),呼吸不全(経皮的酸素飽和度≦90%か動脈血酸素分圧≦60mmHg),意識障害,血圧(収縮期血圧≦90mmHg)より構成される.また,転帰に基づいて生存群と死亡群の2群に分け,肺炎球菌ワクチン接種歴を含めた死亡因子に関して多変量解析を行った.また,肺炎球菌ワクチン接種の有無で喀痰培養や尿中抗原検査による肺炎球菌の検出率について検討した.この研究はヘルシンキ宣言に基づいて施行され,藤沢市民病院の倫理委員会に承認された(No.F2020054).

3.結果
93人の肺炎患者を抽出した.肺炎による死亡のリスク因子として動脈血ガス分析上のアシドーシス,動脈血二酸化炭素分圧の上昇,抗緑膿菌抗菌薬の使用,A-DROP高値が挙げられた.Performance Status低下や低アルブミン血症も死亡と関連がある傾向にあったが,有意ではなかった.また,肺炎球菌ワクチン接種群の方が未接種群と比較して死亡率が高い傾向にあった(15.8%vs.9.1%:p=0.33).A-DROPと肺炎球菌ワクチンによる多変量解析の結果,A-DROPは独立した死亡リスク因子であったが(オッズ比,2.64;95%信頼区間:1.22-5.72,p=0.008),肺炎球菌ワクチンは独立した死亡のリスク因子ではなかった(オッズ比,2.71;95%信頼区間:0.667-11.02;p=0.16).また肺炎の原因微生物として検出された肺炎球菌の頻度はワクチン接種群では未接種群の約半数と低かった.(18.4%vs34.6%,p=0.09).

4.考察
肺炎の死亡リスク因子の探索は先行研究で行われている.Sindoetal.(2015)は日常生活動作の低下,低アルブミン血症,アシドーシス,頻呼吸,尿素窒素高値を死亡のリスク因子として挙げている.これらの結果は本研究で示唆された死亡リスク因子であるADL低下,低アルブミン血症,アシドーシス,A-DROPの尿素窒素高値と一致していた.日常的な運動や適切な栄養摂取が日常生活動作の低下,低アルブミン血症の予防となり,重症肺炎の回避にも繋がると思われた.肺炎球菌ワクチンの接種群で肺炎の死亡率が高かった理由として,肺炎球菌ワクチン接種群に呼吸器疾患を合併する症例が多かったことや両群で免疫不全の有無など調整ができない交絡因子が存在していた可能性が考えられた.肺炎球菌ワクチン自体に死亡率を低下させる効果が乏しいという可能性もある.国内で行われた施設入所者を対象とした前向きの二重盲検試験では,肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌性肺炎に対しては死亡率を低下させたが,微生物を問わない全肺炎に対しては死亡率に差異は生じなかったという報告がある(Maruyamaetal.,2010).本研究の限界点を挙げる.本研究は2018年から2019年の1年間で行われた単施設の研究であり,対象患者が少なかったことが挙げられる.肺炎球菌ワクチンの効果を推察するためには統計学的検出力が不足していると思われた.また,本研究でPPV23を接種した患者の20%が肺炎の発症5年以上前にワクチンを接種していたため,その期間が結果に影響を及ぼした可能性がある.PPV23は3-5年で徐々に効果が弱まることが報告されている(Pilishviliand Bennett,2015).本研究で,肺炎による死亡のリスク因子として動脈血ガス分析上のアシドーシス,動脈血二酸化炭素分圧の上昇,抗緑膿菌抗菌薬の使用,A-DROP高値が挙げられた.肺炎球菌ワクチン接種群の方が未接種群と比較して死亡率が高かったが,サンプル数が少なく,肺炎球菌ワクチンの影響は明らかにはならなかった.

参考文献

Falkenhorst G, et al. (2017), Effectiveness of the 23-Valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine (PPV23) against Pneumococcal Disease in the Elderly: Systematic Review and MetaAnalysis. PLoS One, 12, e0169368. doi: 10.1371/journal.pone.0169368.

厚生労働省, available at:

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei18/dl/11_h7.pdf

Maruyama T, et al. (2010), Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial. BMJ, 340, c1004. doi: 10.1136/bmj.c1004.

Pilishvili, T. , Bennett NM. (2015), Pneumococcal disease prevention among adults: strategies for the use of pneumococcal vaccines. Vaccine, 33, D60-D65.

Shindo, Y. , et al. (2015), Risk factors for 30-day mortality in patients with pneumonia who receive appropriate initial antibiotics: an observational cohort study. Lancet Infect Dis, 15, 1055-1065.

Vila-Corcoles, A. , et al. (2020), Clinical effectiveness of 13-valent and 23-valent pneumococcal vaccination in middle-aged and older adults: The EPIVAC cohort study, 2015- 2016. Vaccine, 38, 1170-1180.

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