オンラインによる散剤調剤実習の試み
概要
薬学教育において臨床に係る実践的能力を培うためには、実務実習の効果的な実施が不可欠であり、本邦では病院及び薬局においてそれぞれ2.5か月の実務実習が義務づけられている。一方で実務実習の実施にあたり、病院や薬局は患者に対して直接的に医療を提供する場であり最大限患者への安全を確保すると共に、病院では薬剤師のほか医師、看護師なども実習に関わることがあることを念頭に、医療従事者および薬学生自身の安全も保障されなければならないとしている1,2)。そこで各薬系大学では実務実習に先立ち、臨床現場で教育を受けるための資質を身に付けるために、学内で実務実習に関わる事前学習を実施している。本学でも、これまでに薬剤師業務に必要な基本的知識・技能・態度を修得することを目的として、実務実習事前実習が実施されてきた。当該実習では模擬調剤室や模擬病室など臨床現場を模倣した大学施設を利用して、各種調剤手技の習得や患者応対に関わるコミュニケーション能力の醸成など薬剤師業務に関わる能力習得を目標に学習を実践してきた。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で学生は大学への通学が制限され、当該実習も全てオンラインでの実施を余儀なくされた。本稿では、筆者がオンラインによる代替実習で行った「散剤調剤実習」での取り組みについて報告すると共に、オンラインによる調剤実習実施の可能性について検証する。