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大学・研究所にある論文を検索できる 「ナトリウムグルコース依存性グルコース輸送担体(SGLT)2阻害薬イプラグリフロジンのインスリン抵抗性改善作用に関するメカニズムの検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ナトリウムグルコース依存性グルコース輸送担体(SGLT)2阻害薬イプラグリフロジンのインスリン抵抗性改善作用に関するメカニズムの検討

荒川, 直子 東京大学 DOI:10.15083/0002005042

2022.06.22

概要

最近登場した尿中へのグルコース放出を促す抗糖尿病薬であるSGLT2(sodium glucose cotransporter2)阻害薬の作用メカニズムを解明するため、SGLT2阻害薬であるIpragliflozinを食事誘発性肥満糖尿病モデルマウスに投与して検討した。

C57BL/6Jマウスに普通食を20週投与した群を普通食群(以下NC群:normal chow diet)として、高脂肪・高ショ糖食をC57BL/6Jマウスに14週間負荷後も引き続き高脂肪・高ショ糖食を継続する群(以下HFHS群:high fat high sucrose)および14週以降は高脂肪・高ショ糖食にIpragliflozinを混餌して投与する群(以下HFHS+Ipra群)に分けて3群で比較検討した。

HFHS+Ipra群ではHFHS群に比べて、Ipragliflozin投与開始後体重増加が抑制され、インスリン負荷試験においてHFHS+Ipra群はインスリン抵抗性が改善した。HFHS+Ipra群の内臓脂肪組織重量はHFHS群よりも減少しており、組織像でもHFHS+Ipra群の脂肪細胞がHFHS群よりも小型化していた。MRIによる腹腔内の内臓脂肪量の評価においてもHFHS+Ipra群の内臓脂肪量はHFHS群に比べて有意に低下していた。また脂肪細胞の遺伝子発現をRT-PCRを用いて解析するとHFHS群よりHFHS+Ipra群においては脂肪組織の炎症に関連する遺伝子の発現がHFHS群より低下していた。

またIpragliflozinによる体重減少の内訳を検討するためにMRIによる筋肉量の評価を行った。HFHS群とHFHS+Ipra群では筋肉量に差は認めなかった。

肝臓の解析においては組織像ではHFHS群と比較してHFHS+Ipra群で脂肪肝の改善を認め、MRIによる肝臓脂肪量の評価においてもHFHS+Ipra群の肝臓の脂肪量はHFHS群に比べて減少していた。次世代シークエンサーによる肝臓の遺伝子発現の網羅的な解析を行ったところPathway解析では脂質の蓄積に関するPathwayが有意に変化していた。また糖代謝改善作用や褐色脂肪化作用があることが知られているFGF21(fibroblastgrowthfactor21)の発現が上昇していた。RT-PCRにおいても肝臓の遺伝子発現を解析したところHFHS+Ipra群では脂肪の蓄積に関連するPparg(peroxisome proliferator-activated receptorγ)、Cd36(Clusterofdifferentiation36)の発現がHFHS群では上昇していたが、HFHS+Ipra群では低下していた。さらにHFHS+Ipra群においてはPpara(peroxisome proliferator-activated receptoralpha)、Ppargc1a(peroxisome proliferator-activated receptor gammaco activator1-alpha)、Cpt1a(CarnitinePalmitoyltransferase1A)という肝臓での脂質のβ酸化を促す遺伝子が上昇していた。また糖新生に関連するPck1(phosphoenolpyruvate carboxykinase1)やG6pc(Glucose-6-phosphatase)という遺伝子もHFHS+Ipra群で上昇していた。RT-PCRにおいてもHFHS+Ipra群におけるFGF21の発現の上昇も確認できた。Pparaは転写因子であり、β酸化に関連する遺伝子やFGF21を誘導すると言われている。

このような病態の改善の機序が、Ipragliflozinの作用によるものか体重減少によるものかを検討するためにIpragliflozin投与群(以下HFHS+Ipra群)と同体重となるよう摂取カロリーを制限したHFHS摂食マウス(以下Weight Match群)においても検討した。HFHS+Ipra群とWeight Match群はインスリン負荷試験とブドウ糖負荷試験では大きな差は認めなかった。HFHS+Ipra群とWeightMatch群ではともに脂肪肝は改善していたがHFHS+Ipra群の方が肝臓の中性脂肪含量は低下していた。脂肪肝改善の機序としては脂質のβ酸化亢進がHFHS+Ipra群において特徴的であった。またHFHS+Ipra群においてのみFGF21の産生亢進が生じていた。またIpragliflozin投与群はグルカゴン分泌が上昇していた。グルカゴンにより脂肪分解やβ酸化の亢進がより促進された可能性も考えられた。他剤の同様の検討ではグルカゴン分泌が減少しているものもあり、SGLT2阻害薬のグルカゴン分泌がSGLT2の選択性に影響を受けるのではないかという報告もあることから、薬剤毎の生体への影響の違いがある可能性が示唆された。またFGF21の増加は他剤でも報告があり、SGLT2阻害薬に共通する作用の可能性が高いと考えられた。

以上から、Ipragliflozinによる糖代謝改善作用には、尿中へのグルコース放出による血糖降下作用や体重減少作用のみならず、脂肪細胞での脂肪酸分解促進を介した肝臓でのFGF21産生亢進による作用が加わっている可能性が示唆された。

また今回腸内細菌の解析も行ったが、インスリン抵抗性モデルであるHFHS群ではNC群に比べてBacteroidetes/Firmicutes比が低下していた。Ipragliflozinを4週間投与したところ、Bacteroidetes/Firmicutes比は変化しておらず、Ipragliflozinは腸内細菌叢非依存的に作用していると考えられた。腸内細菌叢への影響も、腸管に発現が多いSGLT1をどの程度阻害するかというSGLT2の選択性に影響を受けている可能性も考えられた。

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