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大学・研究所にある論文を検索できる 「水溶性食物繊維グァーガム酵素分解物と緑茶カテキンの生体調節作用の機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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水溶性食物繊維グァーガム酵素分解物と緑茶カテキンの生体調節作用の機能解析

安部, 綾 東京大学 DOI:10.15083/0002004315

2022.06.22

概要

第1章 序論
 本研究は、生活習慣病に対して予防効果が期待できる食品素材として、水溶性食物繊維グァーガム酵素分解物(partially hydrolyzed guar gum: PHGG)と緑茶カテキン(epigallocatechin gallate: EGCg)の生体調節作用を調べること、また、2つの食品素材を組み合わせて摂取した際の相乗、相加、相殺効果を明らかにすることを目的にした。PHGGはインドの北部やパキスタン地方に生育する豆科植物であるグァー豆からつくられる水溶性食物繊維である。これまでにヒトおよび動物試験により腸内環境改善、腸管バリア機能強化、糖代謝改善、脂質代謝改善などの作用が示されている。EGCgは緑茶葉に含まれるポリフェノールで、緑茶の苦みや渋みの成分であるカテキンの一種である。ヒトおよび動物試験により抗肥満、脂質代謝改善、糖代謝改善などの作用が示されており、詳細なメカニズムについても数多く報告されている。本研究では、PHGGとEGCgのそれぞれの作用機序を詳細に解明すること、また、異なる作用を持つ2つの食品素材の組み合わせの効果を検証することにした。

第2章 長期摂取時のPHGGとEGCgの生体調節作用の解析
 生活習慣病およびメタボリックシンドロームの主な原因は肥満であることから、高脂肪食負荷による生活習慣病モデルマウスにPHGGとEGCgを単独、もしくは共に長期摂取させ、肥満抑制作用と脂質代謝、糖代謝への影響について検討した。マウスを5群に分け、普通食(C群)、高脂肪食群(H群)、高脂肪食+PHGG5%(P群)、高脂肪食+EGCg0.32%(E群)高脂肪食+PHGG5%+EGCg0.32%(PE群)を12週間摂取させ、体重、体脂肪、臓器重量、血清成分、肝臓脂質量、腸内細菌叢、盲腸内容物および糞中の短鎖脂肪酸(SCFA)、血清胆汁酸、肝臓の遺伝子発現の解析を行った。
 P群では高脂肪食負荷による体重増加、体脂肪蓄積、および肝臓の脂質蓄積が抑制されなかったが、E群およびPE群では体重増加、体脂肪蓄積が抑制され、肝臓の脂質蓄積が抑制される傾向がみられた。肝臓の遺伝子発現解析の結果、H群では脂質蓄積および分解に関する遺伝子群の多くが発現上昇し、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)に至る前段階にある可能性が示された。P群、PE群ではエネルギー異化に関わる遺伝子群が発現上昇した。E群、PE群では脂質の蓄積に関する遺伝子が強く発現低下した。腸内細菌叢解析の結果、P群、E群、PE群ではBacteroides比率が上昇し、F/B比の上昇が有意に抑制された。P群およびPE群で腸管SCFA濃度が上昇し、血清胆汁酸濃度および2次胆汁酸比率が上昇する傾向がみられた。腸管SFCA濃度は肝臓のエネルギー異化に関わる遺伝子発現と正に相関した。一方、E群ではEscherichia比率の上昇がみられ、腸管SCFA濃度、血清胆汁酸濃度、および2次胆汁酸比率が低下するなど、腸内細菌叢への悪影響と考えられる変化がみられた。PE群では腸内細菌叢への悪影響はみられなかった。
 以上の結果より、PHGG摂取により脂肪の蓄積を抑制する作用はみられないが、腸内細菌の代謝物を介して肝臓でエネルギー異化に関わる遺伝子を発現上昇させる可能性が示された。EGCg摂取により脂肪の蓄積やNAFLD化が抑制される一方、腸内細菌叢に悪影響と考えられる変化が引き起こされた。2成分の共摂取によって、肝臓の遺伝子発現、腸内細菌叢、腸内細菌叢代謝物について、2つの成分の持つ良い作用が相加的に発揮され、悪い影響は相殺される可能性が示された。

第3章 短期摂取時のPHGGとEGCgの生体調節作用の解析
 生活習慣病の予防には腸管のバリア機能や免疫機能を強化することも重要であると考えられるため、PHGG、EGCgの単独もしくは共摂取による腸管への影響について検討した。腸内細菌は食事成分の変化により速やかに変化することが示されているため、摂取期間は2週間とした。5群のマウスに第2章と同じ餌を摂取させ、腸内細菌叢、腸内細菌数、短鎖脂肪酸、糞中ムチン量、血清IgA、回腸洗浄液中IgA、大腸洗浄液中IgA、大腸の遺伝子発現の解析を行った。
 腸内細菌叢解析の結果、P群、E群、PE群では短期でもBacteroides比率が上昇した。短期ではE群のみならずPE群でもEscherichia比率が上昇した。PE群のみで腸内細菌菌数の増加傾向がみられた。P群およびE群では糞中ムチン量が増加し、PE群ではさらにムチン量が増加した。大腸の遺伝子発現解析の結果、H群に対し、P群、E群、PE群では自然免疫および獲得免疫に関わる様々な遺伝子群が発現上昇した。P群およびPE群では、PPARα、PPARγおよびその下流の脂質分解、糖新生に関わる遺伝子群が発現上昇した。また、これらの遺伝子群は腸管内のSCFA濃度と正の相関を示した。E群およびPE群では免疫に関わる遺伝子群が強く発現上昇する一方、炎症に関わる遺伝子群も発現上昇した。
 以上の結果より、摂取開始後初期の段階では、腸内細菌叢において、EGCgの悪影響と考えられるEscherichia比率の上昇が相殺されないことが示された。PHGGおよびEGCgの摂取により、ムチンの産生が増え、腸管で免疫に関わる遺伝子群が発現上昇し、腸管バリア機能が増強される可能性が示された。PHGG摂取により腸内細菌の代謝物を介して脂質代謝および糖代謝が改善される可能性が示唆された。EGCg摂取により免疫が強く賦活される可能性が示されたが、炎症を引き起こす可能性も示唆された。PHGGとEGCgの共摂取により、ムチン産生量増加については相加的に働き、良い作用が期待できるが、炎症の惹起という悪い影響は相殺されない可能性が示された。

第4章 総合討論
 PHGG摂取により、脂肪蓄積は抑制されないが、腸内細菌代謝物を介して肝臓や大腸の遺伝子発現に影響し、代謝改善や腸管の恒常性維持に寄与する可能性が示唆された。EGCg摂取により、脂肪蓄積が強く抑制されたが、一方で腸内細菌叢にとって悪影響と考えられる作用もみられた。PHGGとEGCgの組み合わせにより、“PHGGは肥満抑制効果が期待できないが、代謝や腸管恒常性への良い影響が示唆される腸内細菌代謝物を増加させる”、“EGCgは体重増加や脂肪蓄積を抑制し、脂質代謝改善が期待できるが、腸内細菌叢に悪影響と考えられる変化をもたらす”というお互いの利点は相加され、欠点が相殺される可能性が示された。今後、マウスとヒトとの代謝や腸内細菌叢の違い、摂取濃度、摂取期間、他の食品成分との組み合わせなどを検討し、実際にヒトでの作用を明らかにすることで、生活習慣病予防に貢献できる機能性食品の開発につながることが期待される。

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