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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of fabrication method for high-quality two-dimensional heterostructures and investigation of their physical properties」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of fabrication method for high-quality two-dimensional heterostructures and investigation of their physical properties

Hotta, Takato 堀田, 貴都 名古屋大学

2020.10.19

概要

本論文は、六方晶窒化ホウ素(hBN)および原子層物質から成るヘテロ積層構造の高品質試料作製手法の確立およびその物性について論じたものである。第一章では、原子層物質、特に遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDs)原子層の性質・作製法および光学特性、hBN の特性・作製法およびそれらを構成要素としたヘテロ構造作製手法や界面不純物の影響・除去について論じた。第二章では、NbSe2/hBN ヘテロ構造の直接成長法およびその成長機構について論じた。第三章では、hBN/原子層物質/hBN 界面不純物除去法における荷電不純物誘起、数層グラフェンを用いた改善方法およびグラフェン保護試料における励起子間衝突について記述した。第四章では、hBN/MoSe2/hBN 中における励起子拡散とその散乱機構について論じた。第五章では、カーボンナノチューブ(CNT)をゲート電極に用いたデバイスの作製と荷電励起子の一次元閉じ込めについて述べた。

二次元物質、特にグラフェンをはじめとした原子層物質は、低次元性に由来する特異な物性、ダングリングボンドの不在による積層の自由度およびその種類の多さにより、新奇物性探索の肥沃なフィールドとして大変注目を集めている。その一方で、原子層物質は、「表面のみ」の物質であるため、支持材の特性(凹凸、荷電不純物)や表面へのガス吸着等の周環境の影響を容易く受け、本来の性質から変化することが知られている。これら周環境の抑制、平坦化に用いられる材料が hBN である。hBN は原子レベルの平坦性・気体の不透過性および荷電不純物の不在等の特徴を併せ持つため、原子層物質のための基板および保護層として用いることで、原子層物質の本来の性質を引き出すことができる。しかし、hBN を基板および保護層として用いる場合、その界面の清浄さが問題となる。hBN 積層の際に、その層間に空気などが入り込み、その品質を低下させる。現状では、これら不純物を効率的に取り除くは難しく、大面積の清浄界面の作製はいまだ困難である。そこで申請者は、TMD のhBN 上への直接成長およびhBN サンド構造間の不純物除去の二つのアプローチで、清浄界面をもつ高品質試料の作製に取り組んだ。

第二章では、hBN 基板に対し、分子線エピタキシー(MBE)法を用いて NbSe2 原子層を直接成長した。原料濃度、基板温度および成長時間等の条件を検討することで、 hBN 上への NbSe2 原子層の成長に初めて成功した。成長した NbSe2 の層数を調べたところ、その大半が単層であった。さらにその結晶方位は 0˚および 60˚のみであった。これらの結果は、基板の平坦さおよびその界面の清浄さにより、原料拡散が促進されたことで水平方向の成長が優先的に起こったことが示唆される。

第三章では、乾式転写法をベースとした界面不純物レス積層構造作製プロセスの開発を行った。不純物除去には原子間力顕微鏡(AFM)を用いた表面スイープを使用した。乾式転写法にて作製した hBN/MoSe2/hBN に対し AFM スイープを行った。 10K での発光スペクトルを測定したところ、不純物由来の発光ピークの消失とともに、励起子発光の半値幅が 12 から 4meV に減少し、界面不純物の除去に成功した。一方で、スイープ強度依存性における励起子/荷電励起子比逆転や hBN/グラフェン/hBN における移動度の温度依存性から、スイープにより hBN 表面に荷電不純物が誘起されることが判明した。この影響を排除するために、数層グラフェンを積層構造の上に乗せてからスイープ処理を行った。その結果、強度比逆転の抑制に成功した。0 K に概算した励起子発光の半値幅は 2.2meV であり、ほぼ寿命幅の限界に近い値であった。さらに、励起子の二体状態である励起子分子由来の発光が既報の 1/100程度の励起光強度で起こることが確認された。以上の結果は、試料界面の清浄さおよび平坦性に由来しており、試料の高品質さを示している。

第四章では、第三章で作製した試料を用いて、励起子拡散について詳細に調べた。試料に集光したレーザーおよび対応する発光スポット像の広がりを拡散方程式により解析し、拡散係数を導出した。拡散係数は、Einstein の関係式を用いて移動度に変換した。これを 10K から 60K の各 6 点で行い、移動度の温度依存性を得た。温度減少とともに移動度が上昇し、対数軸プロットにおいて傾き-1.2±0.3 で直線的にフィットできたことおよび 10K での移動度が~104 cm2V-1s-1 に達し、電子移動度より一桁程度大きくなることが分かった。以上は、試料の平坦性、励起子が中性粒子であることに由来した表面ラフネス散乱および基板中荷電不純物散乱の抑制により、その散乱機構が音響フォノン散乱に支配されていることを意味している。

第五章では、確立させた乾式転写法を適用し CNT をゲート電極として組み込んだ hBN/MoSe2/hBN デバイスを作製した。この CNT は化学気相成長法により作製した高い孤立度および配向性を有したものである。10K での発光スペクトルのゲート電圧依存性から、CNT がゲート電極として機能していることを確認した。さらに発光像により、CNT 上に荷電励起子が発生していることを確認した。その閉じ込め幅を概算したところ、約 30nm であった。

以上より、hBN を用いた高品質原子層ヘテロ積層構造作製手法の開発に成功し、数々の高品質さに由来した物性の観察に成功した。本研究で確立した手法により、原子層の物性研究がより発展すると期待できる。

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