Extension and evaluation of the GW approximation based on the Green’s function method in many-body perturbation theory
概要
近年、コンピュータの発展により第一原理計算は各分野の研究において重要性を増している。その中でもGreen関数法に基づいた多体摂動論による計算は得られる一粒子の波動関数及び固有エネルギーが直接準粒子の波動関数や固有エネルギーと対応関係にあり、光学スペクトルの分析に適している手法である。これに加えてBeathe Salpeter方程式を解くことで光吸収エネルギーの計算も可能であるが、波動関数の対称性の特定の困難や、計算精度の問題がある。また、GW近似の計算精度は系統的に向上させられる理論があるが、実際の研究は不足している。本研究では、新しい光吸収エネルギーの計算方法の提案及び実証計算と、GW近似の系統的高精度化に関する二つの研究を行なった。
第一の研究では、Beathe-Salpeter方程式を解かずに、準粒子方程式を解くだけで光吸収の計算が可能となる新手法の理論を提案した。また、孤立系の原子や分子にその計算を適応し、その計算精度を調べた。従来のGW+BSE法と比べて、新手法により計算された光吸収エネルギーは実験値とよい一致を示したが、実験値を過小評価する傾向にあった。このことから、イオンの状態であれば高い順位の空軌道についてもGW近似で精度よく計算できることが分かった。また、バーテックス補正Γや準粒子方程式の線形化を行なったscGWΓやscLGWΓの計算を行い、複数の光吸収エネルギーの計算を試みた。scGWΓでは過小評価する傾向があったが、線形化を取り入れたscLGWΓによって改善した。scLGWΓの計算結果は実験値と0.1eV以内で非常によく一致した。本研究結果により、励起状態の対象性を明らかな高精度な光吸収計算が可能となった。
第二の研究では、GW近似からscLGWΓまで段階的に精密な理論を用いて準粒子エネルギーを計算した結果を報告する。GW近似、自己無撞着に解いたGW近似であるscGW、及び線形化を行なったscLGWのそれぞれの準粒子エネルギーの計算結果を比較し、自己エネルギーのエネルギー依存性の効果を調べた。GW近似、scLGWのどちらにおいてもエネルギー依存性を考慮することによりエネルギーギャップを縮小する効果があることが分かった。この効果により、scGWで過大評価されていたエネルギーギャップがある程度scLGWで改善された。また、scLGWにおいてはエネルギー依存性の項は準粒子エネルギーだけでなく準粒子波動関数にも影響を及ぼすことが明らかとなった。他にも、scLGWとscLGWΓについてっも準粒子エネルギーの計算結果を比較した。今回考慮したバーテックス補正Γでは、scLGWと比べてscLGWΓの計算の全てが実験値とよりよく一致するという結果は残念ながら得られなかった。しかし、バーテックス補正を考えることによりエネルギーギャップは更に縮小するという傾向が見られた。以上の研究により、GW近似を系統的に高精度化していく際に、考慮する要素とその結果得られる効果についての予測がある程度可能となった。