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書き出し

高空間分解能STEM-ELNESマッピングと電子軌道の関係性について

岩清水, 千咲 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24431

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

高空間分解能 STEM-ELNES マッピングと電子軌道の関係性について

氏名

岩清水 千咲

第 1 章 緒言
電子軌道は物性を特徴づけるため、その可視化は科学的に大きな関心が寄せられるテー
マの一つと言える。STEM-EELS とは、走査透過型電子顕微鏡 (STEM) と電子損失エネルギー
分光法 (EELS) を組み合わせた装置であり、局所的なエネルギースペクトルと原子分解能
像を同時に取得する事ができる。この利点を生かし、原子分解能の元素種識別マップや、内
殻電子励起スペクトルの吸収端に現れる微細構造(ELNES)を利用した電子状態マップが報
告されてきた。STEM-ELNES 法の次のステージとして、原子の内部構造、すなわち電子軌道
の可視化が期待されてきた。その可能性について様々な理論計算が報告されたが、明確な実
験結果は得られていない。これは、EELS 信号の微弱さ・電子線ダメージ・装置の不安定性
による試料ドリフトが引き起こす像歪みなど、実験的な課題によるものと考えられる。本研
究では、当研究室で開発されたマルチフレーム測定手法を応用して従来の実験的課題を克
服し、
より細密な実験データを再構築することで、
高精度の STEM-ELNES マッピングを行い、
電子軌道との関連性について考察した。また、その過程で、運動量移送と軌道の向きの関係
に起因する遷移強度の違いや結晶構造が ELNES マップにもたらす影響が明らかになった。
第 2 章 STEM-EELS 法の原理
STEM、特に STEM-HAADF 法の結像理論と EELS 測定の概要を述べた後、これらを組み合わ
せた Spectrum Imaging (SI) 法について述べた。さらに、EELS 測定の物理的基礎を与える
非弾性散乱について説明した。最後に、試料厚さの見積もりについて解説した。
第 3 章 実験手法
観察試料は立方晶型 SrTiO3(以下 STO)と正方晶系ルチル型 TiO2 とした。マルチフレーム
測定手法は以下の通りである。まず、試料ドリフトや電子線ダメージを低減するために低ド
ーズ量(短露光時間・低電流)条件で敢えてノイジーなデータを取得する。そのあと、スペ
クトルイメージデータにおいて結晶学的に等価な領域を多数抽出し、僅かに残る像歪みを
非線形に補正した後、これらを数千枚以上積算する事でランダムノイズの低減と EELS 信号
の増幅を試みた。これにより、S/N が劇的に向上したデータを得ることができた。
第 4 章 酸素 O 1s 励起の ELNES マッピング

立方晶型 STO およびルチル型 TiO2 中の酸素 O K-ELNES を用いて、結合の違いによる O 2p
軌道の方向性の直接可視化を試みた。STO において、[001]軸投影の観察では軌道マッピ
ングできなかった。これは、Ti-O カラムと O カラムの距離が近く、両カラム間のバックグ
ラウンドにより各カラムが明瞭に分離できない事や、遷移終状態の軌道の向きと入射電子
の向きの特異な関係性に主な原因がある。そこで、軌道の向きを 45°回転させた[110]軸
投影で観察を行うと、O 2p 軌道の方向性を反映したマップを得ることができた。また、TiO2
を[001]軸投影して観察した結果では、明瞭な軌道方向性を示すマップを得る事ができた。
第 5 章 チタン Ti L-ELNES マッピング
TiO2 の Ti L2,3-ELNES マップでは、全てのピークマップが投影八面体 TiO6 の長軸に沿って
楕円形に伸長した強度分布となり、軌道方向性の直感的な可視化には至らなかった。Ti 元
素マップが投影八面体の長軸に沿って楕円形に伸長した異方的なコントラストを示し、Ti

L2,3-edge 全体の異方的な強度分布の影響を強く受けてしまった事が分かった。
計算シミュレーションにより、その原因は結晶内の電子伝播にある事が明らかになった。
投影八面体の Ti-O 結合の長軸方向と短軸方向を比べると、電子伝播過程が非対称的である
ことが分かった。さらに、仮想的なルチル構造や同様の投影八面体構造をもつ[110]軸投
影した STO を用いてシミュレーションを行うと、ルチル型 TiO2 の結晶構造は、Ti 元素マッ
プにおける Ti カラムのコントラストの楕円形が強調される構造であることが分かった。
第 6 章 ELNES マップの理論的解釈
ELNES マップについて理論的な解釈を行った。K-edge では、終状態 2p 軌道と同じ方向の
遷移行列要素だけがゼロでない値をもつ。そのため、ある特定の K-ELNES ピークを用いてマ
ッピングを行うと、その終状態 2p 成分と同じ方向に異方的に分布するマップが得られたと
考えられる。一方、強度については、その電子雲分布そのものを反映しているとは言えない
ことが分かった。
第 7 章 総括
本研究では、STO と TiO2 の酸素 O K-ELNES を用いて、O 2p 軌道の方向性を示すマッピ
ングの実験に成功し、これにはマルチフレーム法が有効である事を示せた。また、電子軌道
と入射電子の向きの関係性には注意が必要である。一方、TiO2 のチタン Ti L-ELNES マッピ
ングについて、Ti 元素マップが投影八面体 TiO6 の長軸に沿って楕円形に伸長したコントラ
ストとなり、全てのピークマップでその影響を受け、軌道の異方性を反映したマップは得ら
れなかった。このような異方的な強度分布は、特異なルチル型結晶構造と結晶内での電子の
伝搬の特性にある事が明らかになった。また、1s→2p 遷移に起因する K-ELNES マッピング
で軌道の方向性を捉えられる原因について理論的な解釈を行い、終状態 2p 成分の異方性が
反映される一方、その強度分布は電子雲分布に対応しない事が分かった。 ...

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