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大学・研究所にある論文を検索できる 「Scanning Tunneling Microscopy and Spectroscopy Studies of Graphene Zigzag Edges Fabricated by Hydrogen Plasma Etching」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Scanning Tunneling Microscopy and Spectroscopy Studies of Graphene Zigzag Edges Fabricated by Hydrogen Plasma Etching

アメンド, アンドレ オイゲン ベンハード 東京大学 DOI:10.15083/0002006282

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

アメンド アンドレ オイゲン ベンハード

本論文では、炭素が作る単原子層結晶であるグラフェンにおいて、
そのジグザグ型エッジと呼ばれる端にのみ局在した電子状態を、極低
温走 査トンネル顕微鏡/分光 法( STM/STS)を用い て観測し 、理論的に
予言されていた端状態でのスピン分裂の確証を初めて実験的に示すこ
とに成功した。非磁性元素から構成されるグラフェンにおいて、端だ
けにスピン偏極した電子状態を持つことが示され、これは物性物理学
だけでなくスピントロニクス等への応用の観点からも極めて興味深い
成 果 と 言える。
グラフェンは炭素の単原子層結晶であり、そこでの伝導電子が「質
量ゼロのディラック電子」と呼ばれる特異な性質をもつことが発見さ
れ 、2010 年のノーベル物理学 賞の対象となった。 グラフェンの2次元
シートとしての特殊性だけでなく、グラフェンシートの端にも興味深
い電子状態が出現することが理論的に予想され、 実験的にも確認され
てきた。ジグザグ型エッジと呼ばれる端の炭素原子を水素原子で終端
すると、平坦バンドと呼ばれる分散の無い特殊なバンドがフェルミ準
位 に形 成される が、それ が STS 等の実験手法で確認されていた。さら
に、グラフェンが幅の狭いリボン状になった場合(グラフェン ナノリ
ボ ン 、 GNR)、 両 側 の 端 状 態 の 相 互 作 用 に よ っ て 、 そ れ ぞ れ 逆 向 き に ス
ピン偏極した状態になることが理論的に示されていたが、その実験的
実証は不完全であった。本研究では、そのスピン偏極によるエネルギ
ー 分 裂幅やその GNR 幅依存性、 下地グラフェンに対する2つの端の原
子 配 列 の違い(副格子)に起因する現象 などを 実験的に多角的に調べ、
それらがすべて理論的予測に合致することから端状態でのスピン分裂
の確証を得た。その他に、端状態の減衰長、およびスピン分裂が起こ
る GNR の幅 の制限 、GNR の両側の端が平行でない場合にはスピン分裂が
起きないことから、スピン分裂は異なる副格子の端状態の相互作用に
よって引き起こされること、端状態はエッジに原子レベルの欠陥があ
っても頑強に存在することなど、端状態に関して新しい知見も得るこ

1

と に 成 功した。
本 論文は7 章から構成されている。第1章では本研究の背景と して 、
グラフェンおよびその端状態に関する先行研究を概観して、その中か
ら生まれた問題意識および本研究の目的が述べられている。 第2章で
は、理論的および実験的先行研究によって明らかにされた事実を 総括
し、本研究の基礎となる事項を述べている。第3章では、本研究で使
用した実験手法および試料作成法を解説している。第4章から第6章
に本研究の成果が詳述され、第7章において本研究で得られた結果を
ま と め 、それをもとに将来に 向けた展望を述べている。
まず第4章では、グラファイト表面の最上層のグラフェンを 、水素
プラズマエッチング法を利用して部分的に剥離することによって、制
御性良く高品質のジグザグ型エッジを作成できること、また、それに
よ っ て 幅の異なる GNR や、両 側のエッジが平行または 平行でない GNR
も 作 成 可能であることが示さ れている。その試料を STM/STS 観測し、
孤 立 し たエッジにできる端状 態 に対応するピークが STS スペクトル中
のディラック点近傍に観察されること、また、エッジから離れるにし
た が っ てその 端状態が 1~3 nm 程度の減衰長で減衰することが示され
て い る 。さらに 、2つのエッジが 平行になって 近接している GNR にお
い て は 、端状態に対応する STS スペクト ルピークが 数十 meV 程度離れ
た2つのピークに分裂していること、その分裂幅はエッジの副格子に
よって異なることを見出した。これは、エッジにおいて副格子対称性
が破れることに起因してスピン分裂が起こるという理論予測に合致し
ている。一方、両側のエッジが平行でない場合にはピークの分裂が見
られず1つのピークになっていることも発見し、同じ副格子に属する
エッジの相互作用では端状態のスピン分裂が起きないことを示した。
さ ら に、スピン分裂 に対応したピーク 分裂幅は、GNR の幅の増大 ととも
に減 少し、23 nm 以上の幅の GNR では分裂が消滅 して孤立エッジと同じ
に な ることを見出した。


第 5章では、炭素原 子終端の炭化ケイ素 結晶表面 SiC(0001 )上 に形成
された数層厚のグラフェンに対して、第4章と同様の水素プラズマエ
ッチングを施して最上層のグラフェンにおいて孤立したジグザグ型エ

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ッ ジお よび GNR 構造を作成して STM/STS 観測を行った。グラファイ
ト表面上のグラフェンに比べて欠陥が多く、またドーピングのために
エ ネ ル ギー位置がシフトして いる が、概ね第4章と同様の結果を得た。
これは、端状態が原子レベルの欠陥や摂動に対して頑強であることを
意味し、端状態のトポロジカル電子状態の性質を示唆していると言え
る。また、スピン分裂がグラファイト上のグラフェンに比べて大きく
(約 200 meV) 観測され 、 これは基板との相互作用が弱 いためで ある
と考 察した。
第 6章では、ケイ素 原子終端の炭化ケイ素結晶表面 SiC(0001)上に形
成された単層グラフェンに対しても第5章と同様の観測を行った。こ
の場合、水素プラズマエッチング中に水素原子がインターカレートさ
れ 、い わゆる 炭素原子からから構成される バッファー層が SiC 基板か
ら分離されて、フリースタンディング的な2層グラフェンとなる。そ
の場合でも最上層のグラフェンに形成された孤立エッジにおいて端状
態が観測された。これも、端状態が環境に依らずに頑強に存在するこ
と を 示 す結果であ るといえる。
以上のように、本研究では、よく制御された高品質のジグザグ型エ
ッジをグラフェンに作成することによって、先行研究では明確な結論
が得られていなかった端状態でのスピン分裂、およびその諸性質を今
までにない明確さで示すことに成功した。この研究成果の物性物理学
としての価値と独創性は十分と認められ、博士(理学)の学位論文と
してふさわしい内容をもつものと認定し、審査員全員で合格と判定し
た。なお、本論文は、共同研究者らとの共同研究であるが、論文提出
者が主体となって実験の遂行や結果の解析を行ったもので、論文提出
者 の 寄 与が十分であると判断 した。

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