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大学・研究所にある論文を検索できる 「Designing topological phases of quasi-1D vdW stacked bismuth halides and controlling Rashba splitting in noble metal quantum films investigated by ARPES」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Designing topological phases of quasi-1D vdW stacked bismuth halides and controlling Rashba splitting in noble metal quantum films investigated by ARPES

野口, 亮 東京大学 DOI:10.15083/0002006666

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

野口 亮

電子のスピンの向きに依存してエネルギーが異なる電子状態、すなわちスピン
分 裂 し た 電 子状態を、磁場を 印加せずに実現できるのなら、電荷の自由度だけ で な
く電子のスピン自由度を利用するスピントロニクス分野やスピンの量子性を利用
した量子コンピュータ等の分野で極めて有用となる。ラシュバ効果を示す 物質表
面やトポロジカル絶縁体では、強いスピン軌道相互作用と空間反転対称性の破れ
に 起 因 し て 、スピン分裂した電子状 態が実現していることが知られており、現 在 、
物性物 理学 の分 野で 盛んに 研究 され てい る。 角 度分 解光 電子 分光法 ( ARPES) お
よび、それにスピン情報の分解能を付与したスピン角度分解光電子分光法
( SARPES)は、エネルギーと波数の関係、すなわち バンド分散 だけでなく 、ス ピ
ン偏極の情報も直接測定できる手法であり、これまでも上述の物質群 などの研究
に 多 用 さ れ てきた。しかし、そのエネ ルギー分解能や空間分解能等が不十分であ り 、
さらには軌道選択性に欠けていたので、複雑なスピン構造やスピン分裂の起源解
明 と 制 御 の ための情報を得るの に十分とは言い難かった 。
本 研 究 で は、偏光状態を制御した 励起光 による SARPES 法や1 μm 程度以下の
ス ポ ッ ト に 集束させた励起光による nano-ARPES 法という 最先端 の測定技術 を 活
用 し 、表 面 合金、金 属量子薄膜、弱いト ポロジカル絶縁体、および高次トポロジカ
ル絶縁体のスピン分裂電子状態の研究を行い、今までにない明瞭さで新規な知見
を 得 る こ と に成功した。
本論文は6章から構成されている。第1章では本研究の背景として の先行研究
を概観して、その中から生まれた問題意識および本研究の目的 と本論文の構成が
述 べ ら れ て いる。第2章では、ラシュバ効果とトポロジカル物質相に関する基 礎 知
識を整理して、本研究 で扱う物質 群の理論 的背景 を述べている。第3章では、本研
究で使 用し た実 験手 法 であ る角 度 分 解光 電子分 光法 ( ARPES)の 基礎 を述 べ 、 特
に、偏光を制御した レーザー光およびシンクロトロン放射光励起 ARPES、スピン
分 解 し た SARPES、 お よ び 励 起 光 を 1 μm 以 下 の ス ポ ッ ト に 集 束 さ せ た nanoARPES の実 験手 法 を解説 して いる 。 第 4章 と 第5 章に 本研 究の成 果が 詳述 され 、
第6章において本研究で得られた結果をまとめ、それをもとに将来に向けた展望
1

を 述 べ て い る。
第 4 章 で は、2つの 系のラシュバ効果を 研究している。 1つ は、 Ag(111)結晶 表
面 上 に 1/3 原子層の Bi を吸着 させ て形成される Ag(111)-√3×√3-Bi 表面合金相の
表 面 状 態 で あり、巨大なスピン分裂を持つこと が知られていた 。しかし 、単純なラ
シュバ効果では説明できない複雑なスピン偏極構造を持つことが理論的に予言さ
れ て い た が 、実験 で は 実証されていなかった 。本研究は、偏 光依存 ARPES および
SARPES 測定によ って各バンドの軌道 キャラクター とスピ ン偏極 を同定する こ と
によって、異なるパリティをもつバンドが交差して混成するとスピンが反転する
ことを実証し、スピン軌道相互作用の強い物質での 複雑なスピン偏極構造を説明
す る 一 般 的 な指針を 得ることに成功した 。
ま た 、Au(111)結晶 表面上の Ag 超薄膜に形成された量子井戸状態がラシュバ効
果 に よ っ て ス ピン分裂することが知られていたが、2つ目の研究対象として、そ の
高 分 解 能 SARPES 測定を行った 。その 結果、膜厚が薄くなるほど、また 量子井 戸
状態の量子数が大きいほどスピン分裂の大きさを示すラシュバ定数が大きくなる
こ と を 見 出 した。その結果を理論計 算結果と比較して解析したとこ ろ、ラシュバ 定
数は、波動関数の包絡 線関数の界面 での非対称 性の強さで記述されることから 、基
板と膜との界面での電荷密度、および基板と薄膜を構成する原子のスピン軌道相
互作用の大きさの比に比例するというスケーリング則を見出すことに成功し、ラ
シ ュ バ 効 果 を増強する指針を得た。
第5章では、擬1次元ビスマスハロゲン化合物によって構成される 2次元原子
層をファンデルワールス積層して得られる結晶の電子状態を調べ、その積層構造
に依存して、いわゆる弱いトポロジカル絶縁体や高次トポロジカル絶縁体と呼ば
れ る 相 に な ることを 初めて 実験によ り示した。 Bi 4 I 4 の1次元鎖 で形成される 2 次
元原子層が

AA’積 層 すると( α-Bi 4 I 4 )トリビアル 絶縁体になるが、それが AA 積

層 すると( β-Bi 4 I 4 )2次元 トポロジカル 絶縁体 が 積層した物質 と 見なせ 、その 側 面
だけにスピン偏極したディラックコーン状 のトポロジカル表面状態が形成されて
い る こ と を nano-ARPES および SARPES を用いて実証し 、弱いトポロジカル絶
縁 体 で あ る こ とを初めて 示した。また、Bi 4 Br 4 の1次元鎖 で 形成される2次元原子
層 が AB 積 層した β-Bi 4 Br 4 では、その (001)面と(100)面が出 た凸凹 の表面を持つ結
晶 を nano-ARPES および SARPES 測 定 した 結果、両結晶面が交わる稜に1次 元
的 な デ ィ ラ ックコーン状の金属的な 電子状態ができること、それが(スピン偏 極 の
極性が反対なディラックコーン状電子状態が同時に測定されているために) スピ
ン偏極していないように観測されることを見出し、高次トポロジカル絶縁体での
ヒ ン ジ 状 態 であることを実証した。このように、2次元 原子層 がファンデルワー ル
2

ス積層するとき、その積層構造によって異なるトポロジー相が現れることを初め
て示した。
以上のように、本研究では、最先端の光電子分光技術を利用し、スピン分裂した
電子状態を今までになく高い分解能で測定し、従来から知られていたラシュバ効
果 の 理 解 を 格段に深めてスピン分裂 に関するスケーリング則を見出し、また、2 次
元原子層のファンデルワールス積層構造に依存して異なるトポロジカル相になる
こ と を 示 し 、物質のトポロジカル相 の制御と探索の指針を与えることに成功し た 。
こ の 研 究 成 果の物性物理学としての 価値と独創性は十分と認められ、博士(理 学 )
の学位論文としてふさわしい内容をもつものと認定し、審査員全員で合格と判定
した。なお、本論文 は、共同研究者らと の共同研究であるが、論文提出者が主体 と
なって実験の遂行や結果の解析を行ったものであり、論文提出者の寄与が十分で
あ る と 判 断 した。

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この論文で使われている画像

参考文献

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