リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「肝外胆管癌におけるInflammation-Based Scoresの予後への影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

肝外胆管癌におけるInflammation-Based Scoresの予後への影響

朝倉, 力 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Prognostic Impact of Inflammation-Based Scores
for Extrahepatic Cholangiocarcinoma

朝倉, 力
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8597号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482345
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Prognostic Impact of Inflammation-Based Scores for
Extrahepatic Cholangiocarcinoma

肝外胆管癌における Inflammation-Based Scores の予後への影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
外科学講座

肝胆膵外科学

(指導教員:福本

朝倉





教授)

【緒言】
治療の進歩に伴い、様々な癌腫において生存期間の延長が得られている。一方、
外科的切除が唯一の根治手段である胆道癌は、手術手技や周術期管理の改善に
も関わらず依然としてその予後は不良である。そのため、今後は化学療法や放射
線療法を併用するなど、新たな治療戦略が求められている。肝外胆管癌において
は、これまでに組織型、リンパ節転移の有無、根治度などが予後因子として報告
されてきたが、いずれも術後に明らかになる因子であり、今後、術前治療の導入
を検討する際には、術前に評価可能な予後因子が必要である。
近年、全身性の系統的な炎症反応が、悪性腫瘍の進行と相関することが明らか
となってきた。これに伴い、炎症反応に基づいた様々なスコアが提唱されており、
様々な癌腫において予後と関連することも報告されている。これらのスコアは
術前に評価可能である点も有用であると考えられ、胆道癌においてもいくつか
のスコアの予後因子としての有用性が報告されている。しかしながら、どのスコ
アが最も予後を反映するのかは十分に検証されていない。
そこで、本検討では当院で根治切除を受けた肝外胆管癌患者を対象に、既報に
おいて有用性が示唆されているスコアの、予後因子としての有用性を再検証す
るとともに、どのスコアが肝外胆管癌における予後因子として最も有用である
のか検討することを目的とした。
【対象と方法】
2000 年 1 月から 2019 年 12 月の間に、当院肝胆膵外科で根治切除を受けた肝
外胆管癌(肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌)患者を対象に、後方視的な検討を実
施した。遠隔転移、R2 切除、Conversion 手術、重複癌、また十分なデータが得
られなかった症例は除外した。
既報において有用性が示唆されている、以下の 9 つの炎症に基づいたスコア
について検討した: Glasgow prognostic score (GPS), modified Glasgow prognostic
score (mGPS), Neutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR), Platelet-to-lymphocyte ratio
(PLR), Lymphocyte-to-monocyte ratio (LMR), Prognostic nutrition index (PNI), Creactive protein-to-albumin ratio (CAR), Controlling nutritional status (CONUT),
Prognostic index (PI)。すべてのスコアは手術直前の血液検査を用いて算出した。
また、本コホートで ROC 解析を行い、それぞれカットオフ値を設定した。これ
らのスコアについて、他の腫瘍病理学的因子と併せて、予後因子としての有用性
について検討した。
【結果】
対象患者は 169 人であった。平均年齢は 70 歳で、男性 112 人、女性 57 人で

あった。腫瘍部位は肝門部胆管癌が 71 人、遠位胆管癌が 98 人であり、術式は肝
葉切除、膵頭十二指腸切除、胆管切除のみがそれぞれ 64 人、85 人、20 人であっ
た。術前に胆管炎と診断されたのは 103 人であり、術後補助化学療法を受けた
のは 82 人であった。
本コホートにおける全生存 (overall survival: OS) 期間の中央値は 42 ヶ月であ
り、5 年生存率は 41.6%であった。各スコアを層別化因子として、OS に対する
Kaplan-Meier 解析を行ったところ、Low CAR 群(≤ 0.23)の生存率は High CAR 群
(> 0.23)と比較して有意に良好であり(5 年生存率: 48.2% vs 20.2%, p=0.03)、また
Low CONUT 群(≤ 2)の生存率は High CONUT 群(> 2)と比較して有意に良好であ
った(5 年生存率: 53.8% vs 29.2%, p=0.02)。一方、残りのスコアについては 2 群間
で有意差を認めなかった。
さらに、OS に関する単変量解析では、主要血管の合併切除、リンパ節転移(N1)、
神経周囲への浸潤(pn1-3)、根治度(R1)、High CAR、High CONUT が統計的有意に
予後と関連した因子であった。また、これらの因子を用いて多変量解析を行った
ところ、リンパ節転移、根治度、High CAR (HR: 1.82, p=0.01)が独立した予後因
子であることが示された。
最後に、Low CAR 群と High CAR 群の患者背景について比較したところ、High
CAR 群で術前胆管炎と診断された患者の割合が有意に高かった(55% vs 76%, p
=0.02)。一方で、その他の手術因子や腫瘍病理学的因子には 2 群間で有意差を
認めなかった。また、Clavien-Dindo IIIa 以上の術後合併症の発生率や、術後在院
日数といった短期成績においても、2 群間で有意差を認めなかった。
【考察】
本研究では、根治切除後の肝外胆管癌において、CAR が最も予後を反映する
スコアであることが示された。これまでにも肝外胆管癌における CAR の有用性
に関する報告は存在するが、本検討では複数のスコアについて検証しており、肝
外胆管癌の予後因子としての CAR がより有用であることを示唆するものである
と考える。
CAR の構成要素である CRP は肝臓で産生されるタンパク質であり、IL-6 や
TNF-α などの炎症性サイトカインによって制御されている。また、これらのサイ
トカインは腫瘍の増殖・浸潤・壊死によって産生されることが明らかとなってお
り、腫瘍の進行に伴い CRP 高値を示すと考えられている。一方、もう1つの構
成要素のアルブミン値についても、IL-6 や TNF-α を介した全身性炎症反応に関
与して低アルブミン血症を引き起こすことが報告されている。よって、CAR は
炎症・栄養の両面から、炎症性サイトカインを介した腫瘍進行の程度を反映した
スコアであると考えられる。

今回の検討では、Low CAR 群と High CAR 群で腫瘍病期に差がなかったこと
から、CAR と腫瘍進行との明確な証拠を示すことはできなかった。しかし、CAR
と同因子が用いられる GPS に関して、腫瘍による慢性炎症の結果生じる悪液質
Cachexia と関連することが報告されていることから、CAR についても同様に腫
瘍に伴う慢性炎症を反映している可能性がある。一方で、2 群間の腫瘍病期に差
がなかったことから、CAR が従来の腫瘍病期とは異なる層別化因子として有用
である可能性についても示唆された。
胆管癌では術前の胆管炎がしばしば問題となる。CAR の構成要素である CRP、
アルブミン値はいずれも胆管炎による急性炎症の影響を受け、実際に本検討に
おいても High CAR 群において術前胆管炎患者の割合が有意に高かった。そのた
め、スコアリングの際に胆管炎が及ぼした影響については常に考慮する必要が
あるが、本検討では術前胆管炎自体は予後因子ではなかったことから、胆管炎に
よる影響は完全に否定はできないが、そのうえでも有用なスコアであったと考
えられる。
このように、CAR については腫瘍による慢性炎症、術前胆管炎による急性炎
症、両方の影響を受けると考えられ、本検討では Low CAR 群と High CAR 群の
予後の差の明確な原因特定には至らなかった。今後は、CAR がどういった病態
を反映したスコアであるのか、基礎医学的な観点でのより詳細な検討が求めら
れる。
本検討の Limitation として、単施設の後ろ向き研究であること、また研究機関
が長期間のため、手術方法や周術期管理などに一貫性が保たれていないことが
結果に影響を与えた可能性が挙げられる。さらには、今回定めたカットオフ値は
本コホート内で定めた値であり、既報の値とは相違があった。そのため、今後は
大規模かつ多施設検討を行い、より適正なカットオフ値について検証する必要
がある。また前向き試験における有用性の検証も求められる。
【結論】
根治切除後の肝外胆管癌において、検討したスコアの中で CAR が最も価値の
ある予後予測スコアであり、独立した予後因子であった。

神 戸 大 学 大 学 院 医 学(
系)
研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受 付番号

論文題目

甲第

3262 号

氏 名

朝倉力

Prognos
t
i
cImpactoflnflammation・BasedS
c
o
r
e
sf
o
r
E
x
t
r
a
h
e
p
a
t
i
cCholangiocarcinoma

T
i
t
l
eo
f
D
i
s
s
e
r
t
a
t
i
o
n
肝外胆管癌における I
n
f
l
a
m
m
a
t
i
o
n
-BasedS
c
o
r
e
sの予後への影響

審査委員

Examiner



と伐



-

主 査

~

C
h
i
e
fExaminer


V
i
c
e・
e
x
aminer

/
1
1

丁惰政 汽^乙

副 査 叶 」

V
i
c
e・
exami
ne
r
(要旨は 1
, 000字 ∼ 2, 00 0字 程 度)

八元


背景】
胆道癌は予後不良な癌腫の 1つであり 、依然 として外科的切除が唯一 の根治方法である。近年、悪性
腫瘍の進行により、全身性炎症反応が惹起されることが 明 らかとなってきた。これに伴い 、炎症反応に
基づいた様々なスコアが提唱され、多くの癌腫にお いて予後との関連が報告されている。 胆道癌におい
てもその有用性が示唆されて い るが、報告によって有用とされるスコアが様々であり 、どのスコアが最
も予後を反映するのかは十分に検証されていない。本検討では当院で根治切除を受けた肝外胆管癌患者
を対象に、既報において有用性が示唆されているスコアについて、どのスコアが肝外胆管癌における予
後を最も反映しているのか比較検証することを目的とした。

対象と方法 】

2000年 1月から 2019年 12月の間に当院で根治切除を受けた肝外胆管癌(肝門部領域胆管癌、遠位
n
v
e
r
s
i
o
n手術(切除不能に
胆管癌)患者を対象とした。遠隔転移、R2切除(肉眼的癌逮残切除)、 Co
対する化学療法奏功例に対する根治切除)、重複癌、また十分なデータが得られなかった症例は除外し
た。既報において有用性が示唆されている以下の 9 つの炎症スコアにつ い て検討した :Glasgow

p
r
o
g
n
o
s
t
i
cs
c
o
r
e(
G
P
S
)
,m
o
d
i
f
ie
dGlasgowprogno
s
t
i
cs
c
o
r
e(mG
P
S
)
,N
e
u
t
r
o
p
h
i
l
t
o
l
y
m
p
h
o
c
y
t
er
a
t
i
o
(NLR),P
l
a
t
e
l
e
t
t
o
l
y
m
p
h
o
c
y
t
er
a
t
i
o (PLR),Lymphocyte-to-monocyte r
a
t
i
o (LMR),P
r
o
g
n
o
s
t
i
c
n
u
t
r
i
t
i
o
nindex(
P
N
I
)
,Cr
ea
c
t
i
v
ep
r
o
t
e
i
n
t
o
a
l
b
u
m
i
nr
a
t
i
o(
C
A
R
)
,C
o
n
t
r
o
l
l
i
n
gn
u
t
r
i
t
i
o
n
a
ls
t
a
t
us


(
CONUT
)
,P
r
o
g
n
o
s
t
i
cind
ex(pI)

結果】

1名、遠位胆管癌が 98名であった。術式は肝葉切除、膵頭十
対象患者は 169名で、肝門部胆管癌が 7
5、20名であった。 1
03名が術前に胆管炎と診断されてい
二指腸切除、胆管切除のみがそれぞれ 64、8
o
v
er
a
l
ls
u
r
v
i
v
a
l
:OS)
期間の中央値は 42ヶ月で、 5年生存率は 41
.6%
た。本コホートにおける全生存 (
であった。各スコアを層別化因子とした OSに対する Kaplan-Mei
e
r
解析では、 Low CAR 群~0.23) の
生存率は HighCAR群 (
>
0
.
2
3
)と比較して有意に良好であ り(HR:1
.
6
4
,95%CI:1
.
03・
2
.5
0
,p=0
.
0
3
)、また

LowCONUT 群 ~2) の生存 率は High CONUT群 (
>
2
)と比較して有意に良好であ った (HR:1
.
6
6,
95%C
I
:
1
.
0
7・
2
.
5
9
,p
=
0
.
0
2
)。一方、残りのスコアについては 2群間で有意差を認めなかった。
N
l
)、神経周囲への浸潤
また、 OS に関する単変量解析では、主要血管の合併切除、リンパ節転移 (
(
p
n
1・
3
)
、根治度 (
R
l
)、HighCAR
、HighCONUTが統計学的に有意な因子であり、多変量解析では、
g
hCAR(HR:1
.
8
2,
95%C
I
:1
.
14・
2.
91
,
p
=
0
.
0
1
)が独立した予後因子であった。
リンパ節転移、根治度、 Hi
さらに Low/HighCAR群間の患者背景について比較したところ、術前に胆管炎と診断された患者の割

ghCAR群で有意に高かった (55%vs76%,p=0
.
0
2
)が、その他の腫瘍病理学的因子は 2群間で
合は Hi
av
i
en・
Din
doI
l
l
a以上の術後合併症の発生率や、術後在院日数といった術後の短期
有意差を認めず、 Cl
成績においても 2群間で有意差を認めなかった。


考察】
CAR の構成要素である CRP は IL•6 や TNF· a などの炎症性サイトカインによって制御される蛋白で

あり、これらのサイトカインは腫瘍の増殖 ・浸潤 ・壊死によって産生されることが知られている。また
アルブミン値についても、これらの炎症性サイトカインを介した全身性炎症反応により低アルブミン血
症を引き起こすことが報告されている。そのため、 CAR は腫瘍進行に伴う炎症性サイトカインを介し
た全身性の反応を、炎症 ・栄蓑の観点から反映したスコアであると考えられる。
本検討では、 Low
/HighCAR群間で腫瘍病理学的因子に差を認めず、 CARと腫瘍進行との関連を示
すことは出来なかった。 しかし一方で、 CARが従来の腫瘍病期とは異なる新たな層別化因子として有
用である可能性も示唆された。CARと同因子が用いられる GPSは、腫瘍による慢性炎症の結果生じる
悪液質 Ca
ch
ex
i
aとの関連が報告されている。このことから、 CARについても同様に、腫瘍に伴う全身
性の慢性炎症を反映していることが示唆される。 また胆管癌では術前の胆管炎がしばしば問題になる。

CRP、アルブミン値は胆管炎による急性炎症の影孵を受けるため、スコアリングの際に胆管炎が及ぼし
gh
た影密については常に考慮する必要がある 。本検討でも術前に胆管炎と診断された患者の割合は Hi
CAR群で有意に高かった。 しかし、多変量解析にて術前胆管炎は予後因子として示されなかったこと
から、胆管炎の影孵は否定できないが、そのうえでも有用なスコアであると考えられる 。
本研究では根治切除後の肝外胆管癌において、 CARが最も予後を反映したスコアであることが示さ
れた。今後、 CARがどういった病態を反映しているのか、基礎医学的な観点でのより詳細な検討が求
められる。ま た、これまでのほとんどの検討が小規模 ・単施設での検討であることから、今後は大規模
かつ多施設での検討が求められる。

本研究は根治切除後の肝外胆管癌について、炎症スコアの予後因子としての有用性について研究した
ものであるが、従来ほとんど行われていなかった様々なスコアについて比較検証した報告である。肝 外
胆管癌においては CARが最も予後を反映していることを明らかにするとともに、 CARは従来とは異な
る腫瘍の層別化因子と成り得るとした点で価値ある業績と認める。 よって、本研究者は、博士(医学)
の学位を得る資格があると認める。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る