リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Barcelona Clinic Liver Cancer (BCLC)病期分類BまたはCの肝細胞癌に対する減量肝切除の有用性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Barcelona Clinic Liver Cancer (BCLC)病期分類BまたはCの肝細胞癌に対する減量肝切除の有用性の検討

Yasuhara, Yuki 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景】
国際的に汎用されているBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類の治療アルゴリズムでは、肝細胞癌に対する根治的治療として肝切除はStage 0またはStage Aのみの推奨とされている。Stage BやStage Cの進行肝細胞癌に対しては肝動脈化学塞栓療法(TACE)/肝動注化学療法(TAΙ)や分子標的薬などの姑息的治療が推奨されており、根治的治療対象とはされていない。当科では肝内両葉多発転移を来たすような高度進行肝細胞癌に対しても、肝内病変が短期的な予後規定因子と考えられる症例に関しては、減量肝切除術を施行し、術後にTACE/TAIや当科独自の経皮的肝灌流化学療法(PIHP)などの肝局所療法を組み合わせた集学的治療を施行してきた。今回、BCLC Stage B/C進行肝細胞癌に対する減量肝切除術の有用性について検討した。

【対象/方法】
2000年1月から2018年12月まで、当科で肝細胞癌に対して初回肝切除を施行した717例を対象として後方視的に検討を行った。

【結果】
全717例の内訳は根治切除群614例(BCLC Stage 0/A: 389例, Stage B/C: 225例)、減量切除群103例(全例BCLCStage B/C)であった。根治切除群の生存期間中央値(MST)は71.9ヶ月、減量切除群のMSTは18.0ヶ月であった。
 全生存期間における単変量および多変量解析の結果、根治切除群では高齢(≧70歳)、腫瘍数(≧4個)、血清AFP値(≧40ng/ml)が独立した予後因子であり、減量切除群では血清総ビリルビン値(≧l.0mg/dl)、血清アルブミン値(≦2.9g/dl)が独立した予後因子であった。
 減量肝切除後に肝局所療法が施行可能であった症例は103例中86例であり、治療法の内訳はPIHP56例、TACE/TAΙ23例、放射線治療6例、再肝切除1例であった。追加治療が施行できなかった17例の原因としては、術後肝機能低下: 13例、遠隔転移を含む急速な腫瘍進行: 4例、であった。減量肝切除後に肝局所療法が施行可能であった症例のMSTは20.1ヶ月であったのに対し、肝局所療法が施行不能であった症例のMSTは3.2ヶ月と有意に不良であった(p<0.001)。術後肝局所療法施行可能症例のうち、減量肝切除後の残肝遺残腫瘍数が3個以下(n=26)のMSTは31.8ヶ月であったのに対し、残肝遺残腫瘍数が4個以上(n=60)のMSTは19.2ヶ月と有意に不良であった(p=0.192)。残肝遺残腫瘍数が3個以下の26例では全刎術後肝局所療法としてTACE/TAIが施行されていた。残肝遺残腫瘍数が4個以上の60例中、術後肝局所療法として56例でPIHP、4例でTACE/TAIが施行されていた。PIHP施行群では3年生存率24.4%であったのに対し、TACE/TAI施行群では3年生存率0%と不良な結果であった。
 減量肝切除群の予後因子であった血清総ビリルビン値(≧1.0mg/dl), 血清アルブミン値(≦2.9g/dl)の2因子を用いて予後予測スコアを設定し、両方満たさない症例をscore0(低リスク群)、いずれか一方を満たす症例をscorel(中リスク群)、両方満たす症例をscore2(高リスク群)と定義した。予後予測スコアごとのMSTは、低リスク群が201ヶ月、中リスク群が14.8ヶ月、高リスク群が2.7ヶ月であり、低リスク群と高リスク群、中リスク群と高リスク群の間にはいずれも有意差を認めた(p<0.001)。

【考察】
今回、BCLC Stage B/C進行肝細胞癌における減量肝切除術の適応を明らかにした。根治切除群の予後規定因子が腫瘍数や腫瘍マーカーなど腫瘍因子であったのに対し、減量切除群の予後規定因子は肝機能を反映する血清総ビリルビン値と血清アルプミン値であった。血清総ビリルビン値と血清アルブミン値の2因子を用いて、減量肝切除後の予後予測スコアを設定し層別化に成功した。血清総ビリルビン値≧l.0mg/dl、血清アルブミン値≦2.9g/dkの両因子を満たす高リスク群では予後不良であり、減量朋2切除の適応は慎重に判断すべきである。一方、両因子を満たさない低リスク群では減量肝切除により予後延長が期待できるため、積極的に減量肝切除適応を検討すべきと考えられた。
 また本検討では、減量肝切除後の残肝遺残腫瘍数が3個以下の症例では、全例術後肝局所療法としてTACE/TAIが施行され、MSTも31.8ヶ月と良好であった。残肝遺残腫瘍数が3個以下の症例では、TACE/TAI、放射線治療など一般的な施設でも施行可能な治療法で予後延長が期待できるため、積極的に減量肝切除を検討すべきであると考えられた。一方で、残肝遺残腫瘍数が4個以上の症例では、術後肝局所療法としてPIHPが施行可能であった症例では3年生存率24.4%であったのに対し、TACE/TAI施行群では3年生存率0%と不良な結果であった。残肝遺残腫瘍数が4個以上となるような進行肝細胞癌症例では、術後PIHPのような強力な肝局所療法が必要である事が示唆されたが、施行可能な施設は限定されており、残肝遺残腫瘍数が4個以上の症例では、減量肝切除術の適応は慎重に判断する必要があると考えられた。

【結論】
BCLC Stage B/C進行肝細胞癌の減量肝切除における予後予測スコアを確立した。術後適切な肝局所療法が施行可能であれば、減量肝切除は予後延長が期待でき、特に残肝遺残腫瘍数が3個以下の症例は減量肝切除の良い適応である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る