リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「全腫瘍体積は切除可能大腸癌肝転移における最も強い予後因子である」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

全腫瘍体積は切除可能大腸癌肝転移における最も強い予後因子である

Tai, Kentaro 神戸大学

2020.03.25

概要

【背景】
大腸癌肝転移の標準治療は肝切除であり、切除不能症例や切除困難症例に対し ても化学療法後に腫瘍減量が得られて切除可能となれば、切除適応となる。また、近年の肝切除の技術・術式の発展により手術の安全性が向上し、それに伴い切除 適応も拡大してきている。しかし一方で、巨大腫瘍や多発腫瘍は肝切除後の予後 不良因子として報告されており、それら切除境界症例についての明確な切除の 適応は定まっていない。腫瘍最大径や個数などの予後因子の組み合わせやそれ らから計算された予後スコアなどが切除の指標として有用であるという報告は されているが、標準指標となり得るものはまだ報告されていない。

近年、全腫瘍体積:total tumor volume (TTV)がいくつかの固形癌での予後因子として重要であると言う報告が増えている。肝臓においても、肝細胞癌に対する肝切除後や肝移植後の再発・死亡との関係性が報告されているが、大腸癌肝転移における報告はされていない。TTV は腫瘍径・個数やそれらを用いた予後スコアと比較しても腫瘍の病勢を最も直接に反映しており、予後因子として重要である可能性があると考えられた。

その為、今研究では切除可能大腸癌・肝転移における術前 TTV と術後の予後との関係を解析し、TTV の肝切除後予後因子としての有用性を評価した。また、肝切除適応の指標としての TTV の有用性を検討した。

【対象/方法】
2008 年 4 月~2017 年 9 月に神戸大学病院肝胆膵外科で大腸癌肝転移に対し初回肝切除を施行した 94 例を後方視的に解析した。
TTVは全症例、術前のマルチダイナミックCT画像を3D画像解析ソフトで解析し、計測した。TTVは全ての腫瘍の体積の合計値とした。

初回肝切除術後の全生存(OS)、無再発生存(RFS)をエンドポイントとした。 TTV の cutoff 値はOS、RFS のそれぞれについて ROC 解析を行い設定した。比例ハザード解析を用いて術前 TTV の術後予後に与える影響を他の因子と比較・評価した。Kaplan-Meier 法による生存率解析を行い TTV の cutoff 値の有用性を評価した。TTV による再発の違いを検討するため、肝切除術後の初回再発率、再切除率について比較検討した。

【結果】
Cutoff 値は OS で 100ml、RFS で 10ml と設定した。比例ハザード解析による多変量解析で、OS においては TTV≧100ml(HR:6.34、p=0.002)、両葉病変(HR:5.61、p<0.001)、原発リンパ節転移陽性(HR:5.71、p<0.001)、原発右側結腸(HR:3.55、p=0.006)が有意な予後不良因子であり、なかでも TTV≧100ml が最もハザード比が高く、予後への影響が強い因子であった。これまで報告されている予後スコア(Tumor burden score、Fong score)との比較を行う為、それぞれの予後スコアを TTV と入れ替えて多変量解析を行ったが、いずれも予後への有意な関係性は認められなかった(p=0.095、p=0.95)。RFS においては TTV≧10ml(HR:1.90、p=0.017)、原発リンパ節転移陽性(HR:1.69、p=0.025)、原発右側結腸(HR:2.60、p=0.002)が予後不良因子であり、それぞれのハザード比は同程度であった。Tumor burden score、Fong score と入れ替えて多変量解析を行うと、Tumor burden score は TTV と同程度に予後との関係を認めた(p=0.037、p=0.068)。

生存率解析では OS において TTV≧100ml 群は TTV<100ml 群に比べて有意に予後不良(5 年生存率 41% vs. 67%、p=0.006)で、RFS において TTV≧10ml 群は TTV<10ml 群と比べ有意に予後不良(5 年生存率 14% vs. 58%、p=0.009)であった。

TTV≧10ml 群における初回肝切除後の再発率は、10ml≦TTV<100ml 群と TTV≧100ml 群で同程度(72% vs. 83%、p=0.19)であったが、初回再発病変に対し切除治療が可能であった症例は 10ml≦TTV<100ml 群と比べ、TTV≧100ml 群で有意に少なかった(42% vs. 10%、p=0.009)。

【考察】
今回検討した TTV は腫瘍全体の量を正確に直接計測しているため、腫瘍の広がりを最もよく反映していると考えられる。このため、これまで予後に関係が深いとされてきた腫瘍最大径や個数、それらを用いた予後スコアと比較しても、特に OS において TTV はより有意に予後と関係する因子であった。腫瘍量を評価するこれらの因子以外にも原発大腸病変の因子(右側結腸病変、リンパ節転移陽性)はこれまでも予後因子として報告されており、予後因子として有用であるとされている。これらの原発病変の因子は今研究でも有意な予後因子として抽出されたが、それらの因子と比較しても TTV は同様以上に有用な予後因子であった。TTV の cutoff 値とした 10ml、100ml はそれぞれ単発では直径約 2.7cm、5.7cm であり腫瘍最大径の予後因子として報告されている 3cm、5cm と近い値である。再発病変の解析結果では再発率の上昇するTTV≧10ml群の中でも、TTV≧100ml 群では術後の再切除不能な再発が有意に増加していた。このことから TTV≧100ml 群では再発病変に対する切除困難率の上昇により再発後の治療成績が低下し術後 OS が低下すると予想された。TTV≧100ml 群で切除不能な再発が増加する理由としては、①腫瘍体積が大きくなると、初回切除時の肝切除量が多くなるため、残肝体積が少なくなり、残肝再発した場合の再切除の余地が少ない。②腫瘍体積が大きいと、容易に脈管侵襲を来し多発・全身性の切除不能な再発を来し易い。等の理由が考えられる。

TTV≧100ml の症例では肝切除を行っても、切除不能な再発を来し予後不良となる可能性が高いことが分かった。このことから、TTV≧100ml の症例は切除可能であっても、化学療法を先行し、TTV≦100ml となった症例に切除を行うという切除適応が有用かもしれない。TTV の切除適応における指標としての有用性については今後、さらなる研究が必要である。

大腸癌肝転移に対する初回肝切除後の予後予測因子として術前 TTV は最も強い因子であり、有用であると考えられた。TTV≧100ml の症例は、術後高率に切除不能な再発を来し、予後不良であった。TTV<100ml は大腸癌肝転移の切除適応として有用である可能性が示唆された。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る