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大学・研究所にある論文を検索できる 「下大静脈腫瘍栓を有する肝細胞癌患者に対する肝切除術の適応」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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下大静脈腫瘍栓を有する肝細胞癌患者に対する肝切除術の適応

西沢, 祐輔 神戸大学

2022.03.25

概要

【背景】
肝細胞癌は、2018 年のデータでは世界で6番目に多い悪性新生物であり、死因では4位に位置づけられる疾患である。病期が進行すると共に腫瘍は門脈や肝静脈、さらには下大静脈や右心房へと進展し腫瘍栓を形成する。下大静脈腫瘍栓を合併する肝細胞癌患者の予後は非常に悪く、突然死を引き起こすことが報告されている。
肝癌に対する手術手技は近年急速に向上し、外科的肝切除術は肝細胞癌患者に対する安全な治療選択肢となっているが、下大静脈腫瘍栓を合併する肝細胞癌患者は少なく、詳細な検討はこれまで報告されていない。2014 年と 2017 年に肝静脈腫瘍栓を合併した肝細胞癌患者の予後に関する論文が本邦から報告されているが、いずれの論文も下大静脈腫瘍栓は肝静脈腫瘍栓の一部として議論されるに留まり、病型による違いは検討されていない。

【対象/方法】
2006 年 1 月から 2018 年 12 月までに当科で肝細胞癌に対し初回肝切除を施行した 643 例のうち、術前に Vv3 と診断された 20 例を対象として後方視的に検討を行った。追跡期間は死亡日または 2019 年 12 月 31 日までとした。

【結果】
年齢の中央値は 67.5 歳、Child-Pugh 分類は A が 19 例、B が1例であった。肝炎ウイルスタイプは HBV、HCV、NBNC がそれぞれ8例、4例、8例であった。11 例に対し R0 切除を実施しており、うち 10 例が再発し、再発を認めなかった1例は術後 61.6 か月生存した。全患者の生存期間中央値(MST)は 9.8ヶ月で、1年生存率は 35%、3年生存率は 12%であった。追跡期間終了時点で全症例中2例のみが生存し、死亡した 18 例の死因は 12 例が残肝再発、3例が転移(肺転移2例、脳転移1例)、2例が感染症、1 例が交通事故であった。

単変量解析では腫瘍個数(単発、p=0.050)と pathological Vp0(p=0.009) が、多変量解析では pVp0(p=0.037)が予後因子であった。Kaplan-Meier 法で追加検討した結果、全生存期間は腫瘍個数単発で 45.8 ヶ月、多発で 8.6 ヶ月と、単発の方が良好な傾向を示したが、有意差は認めなかった(p=0.063)。pVpは pVp0(n=4)で 53.7 ヶ月であったのに対しその他(n=16)では 9.1 ヶ月と pVp0 で有意な生存期間の延長を認めた(p=0.022)。さらにその他を pVp1(n=12)と pVp2-4 (n=4)に分けて検討を行ったが、pVp1 の MST が 10.2 ヶ月、pVp2-4 が8.8 ヶ月と有意差を認めた(p=0.035)。pVp は摘出した肝臓の病理結果からのみ診断されることから、術前に診断可能な画像診断による門脈浸潤(iVp)、手術時に診断される門脈浸潤(sVp) についても同様の検討を行なったが、有意差は認めなかった。

【考察】
今回の検討の結果、手術を実施した下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者の MSTは 9.8 ヶ月であった。pathological Vp が予後規定因子であり、pVp0 の患者では MST は 53.7 ヶ月まで延長した。

下大静脈腫瘍栓を合併するような高度進行肝細胞癌に対する外科的肝切除術の適応は施設ごとに異なり、一般的に複数の肝外転移を認める症例や R0 切除が困難と予想される症例についてはほとんどの施設が手術適応禁忌と判断してきた。我々の施設では肝細胞癌が切除後の残肝側に残存する場合でも経皮的肝灌流化学療法による追加治療が可能であることから、他施設で手術適応なしと判断されるような高度進行肝癌に対しても積極的に外科的治療を実施してお り、下大静脈腫瘍栓を合併する肝細胞癌に対する手術症例も単一施設でこれだけ集積することができた。同定されたリスク因子は pVp0 であり、この結果は門脈腫瘍栓の有無が肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者の全生存期間に影響を与えるという本邦の全国調査結果と合致する。この結果から、門脈浸潤のない R0切除が可能な下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者に対しては、治療法として外科的肝切除を選択することの妥当性が示唆された。

本検討の限界としては、症例数の少なさと化学療法レジメンの変遷が挙げられる。術後の化学療法として当初ソラフェニブが使用されていたが、2017 年にレンバチニブの効果が証明され、2018 年 3 月から本邦で使用されるようになった。本検討では追跡期間が死亡日または 2019 年 12 月 31 日であることから、術後にレンバチニブを投与された患者は1名のみであった。外科的肝切除と術後レンバチニブ投与の組み合わせにより、今後更なる予後延長が期待される。また高度進行肝細胞癌に対する外科手術以外の治療選択肢として陽子線治療が最近では挙げられるが、自費治療であることから、すべての患者に対し展開することはできない。

【結論】
pVp0 の下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者の全生存期間は 53.7 ヶ月であっ た。本検討の結果から、門脈浸潤がなく、R0 切除が可能な下大静脈腫瘍栓合併肝細胞癌患者に対しては外科的切除を考慮すべきであり、その他の患者に対しては、化学療法を含めた他の全身治療や粒子線治療の適応を検討すべきであることが明らかとなった。

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