リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthetic Phytohormone–Receptor Pair for Precise Regulation of Plant Growth and Development」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Synthetic Phytohormone–Receptor Pair for Precise Regulation of Plant Growth and Development

YAMADA, Ryotaro 山田, 遼太郎 名古屋大学

2020.04.02

概要

植物の成長や環境応答は、主に植物ホルモンと呼ばれる数種類の小分子によって制御されている。これまで、植物ホルモンによるシグナル伝達の解析には遺伝学的手法が用いられてきた。しかし、植物ホルモン受容体の重複(遺伝的冗長性)や変異体の示す成長不全のため、遺伝学のみでは機能解析の困難な場合が多い。この課題を解決するため申請者は、天然と同様の植物ホルモンシグナルを誘起する人工の植物ホルモンとその受容体ペアの開発に取り組んだ。具体的には、植物ホルモン結合部位に位置するアミノ酸残基を立体的により小さいアミノ酸に置換することで結合ポケットを拡張した人工受容体を作製し、この拡張した結合ポケットを埋めるよう適切な置換基を導入した人工植物ホルモンを合成することで、人工植物ホルモンと人工受容体のペアを創出する。この戦略のもと、申請者は三種類の植物ホルモンに関して、人工植物ホルモン–受容体ペアの開発に取り組んだ。本論文は、以下の四章から構成される。

第一章では、人工オーキシンと受容体ペアの開発とその応用について論じている。オーキシンは植物の成長全般を制御する、最も重要な植物ホルモンである。申請者は、オーキシンシグナルの精密制御を目指し、オーキシン受容体 TIR1 に点変異を導入して結合ポケットを拡大した人工 TIR1 を作製し、対応する位置にアリール基を導入した人工オーキシンを合成した。種々の実験から、人工オーキシンは人工 TIR1 に選択的に結合し、天然と同様のオーキシン応答を誘起することが明らかとなった。すなわち、内在の系とは独立に人工オーキシンでのみ作動する人工 TIR1 経路の確立に成功した。さらに申請者は、開発した人工ペアをオーキシンで誘導される伸長生長の機構解明研究へ応用した。植物をオーキシンで処理すると、数分以内に急激な伸長が観測されるが、そのオーキシンの受容メカニズムは長い間不明であった。野生株と人工 TIR1 を発現させた植物に対して、それぞれ人工オーキシンを作用させた結果、野生株ではほとんど伸長が見られなかったが、人工 TIR1 を発現する植物では明らかな伸長が観測された。本結果は、オーキシンによる伸長生長には TIR1 が関与していることが明らかにしただけでなく、開発した人工オーキシン−人工TIR1 ペアが植物科学における強力な研究ツールになることを明確に示している。

第二章では、より高活性な第二世代人工オーキシン–人工受容体ペアについて論じている。オーキシンには着果促進や果実肥大作用があり、これらの性質は現在トマトの栽培などに利用されている。この作業は非常に手間がかかるが、人工 TIR1 を子房特異的に発現させた植物を用いれば、人工オーキシンを全体に散布するだけで果実の肥大効果を選択的に誘起することが可能であり、農業効率の飛躍的な向上が見込まれる。このような農業応用を目指し、より低濃度で作動する新規人工オーキシン−人工受容体ペアの構築に取組んだ。オーキシン誘導体を種々合成し、人工オーキシンの構造最適化を行った。その結果、オーキシンに導入する置換基はアリール基よりも立体的に嵩高いアダマンチル基の方が、人工 TIR1 に対して高い親和性を有することが明らかとなった。In vitro での結合評価実験から、天然のオーキシン–TIR1 ペアと比べるとアダマンチルオーキシン–人工 TIR1 ペアは 10,000 倍高い親和性を有することが明らかとなり、天然をはるかに凌駕する活性をもつ第二世代の人工オーキシン−受容体ペアの創出に成功した。

第三章では、人工サイトカイニンと受容体ペアの開発について論じている。サイトカニンは細胞分裂やシュート形成などの成長制御を担っており、オーキシンと並ぶ重要な植物ホルモンである。申請者は、緻密な分子設計をもとに、サイトカイニン受容体 AHK4 の結合ポケットに存在する疎水性残基を立体的に小さいアミノ酸残基(グリシンもしくはアラニン)に変換した人工 AHK4 を作製した。一方で、対応する位置に置換基を導入したサイトカイニン誘導体を合成し、作成した人工 AHK4 に選択的に結合する分子(人工サイトカイニン)を探索した。In vitro での活性評価実験の結果、合成したサイトカイニン誘導体の中から天然の AHK4 には結合しないが、人工 AHK4 には結合する人工サイトカイニンを見出すことに成功した。

第四章では、人工ジベレリンと人工受容体(GID1)ペアの開発について論じている。ジベレリンは GA3 や GA4 に代表されるジテルペン酸の総称であり、植物の成長を制御する植物ホルモンである。申請者は、植物成長調整剤として大量供給されている GA3 に着目した。これまで GA3 を出発原料としたジベレリンの誘導化研究が盛んに行われてきたが、その複雑な分子構造と転位反応の起こりやすさから、GA3 骨格を保ちながら置換基を導入した例はほとんど存在しない。申請者は、人工ジベレリン−人工 GID1 ペアの開発を志向し、GA3 を出発原料としたジベレリン誘導体の合成経路を確立させた。さらに、in vitro および in vivo 実験の結果、合成したジベレリン誘導体はいずれも天然のジベレリン受容体 GID1 に結合しないことが明らかとなっており、本分子設計の妥当性を示唆している。

以上、申請者は合成化学と植物科学を組み合わせることで、天然と同様の植物ホルモンシグナルを誘起できる人工植物ホルモンと人工受容体のペアを開発に取り組んだ。本研究で開発した合成分子の一部は現在市販化されており、世界中の植物科学者が利用可能な研究ツールとなっている。また、本技術は農業にも応用が可能であり、喫緊の課題である食糧問題に対してひとつの解決策を提供する革新的な分子技術になると期待される。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る