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大学・研究所にある論文を検索できる 「早漏におけるヒスタミンH3受容体活性化作用に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

早漏におけるヒスタミンH3受容体活性化作用に関する研究

清原, 和裕 KIYOHARA, Kazuhiro キヨハラ, カズヒロ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Involvement of histamine H3 receptor agonism in
premature ejaculation
清原, 和裕

https://hdl.handle.net/2324/6787550
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(創薬科学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式5)




論文題名

:清原 和裕
:Involvement of histamine H3 receptor agonism in premature ejaculation

(早漏におけるヒスタミン H3 受容体活性化作用に関する研究)




:甲















【目的】
男性の性機能障害である早漏(premature ejaculation; PE)は、有病率が 4%に達すると報告されてい
る一般的な性機能障害である。PE の治療には心理療法、行動療法および薬物治療が用いられており、
利用可能な治療薬としていくつかの薬剤(例えば、局所麻酔薬や抗うつ薬)が知られているものの、
薬効は限定的でありかつ安全性に関する多くの問題点を有するため、十分な有効性と副作用の少ない
新規薬剤の開発が必要とされている。
PE の治療標的を探索する中で、我々はヒスタミン H3 受容体(H3R)の活性化に着目した。H3R は
末梢神経において発現しており、またその活性化がラットの四肢や尾部への刺激による疼痛を抑制す
る報告がある事から、これらの末梢部位と同様に、H3R の活性化は陰茎への刺激により誘発される神
経興奮抑制を介して射精潜時(ejaculation latency; EL)を延長する可能性を有するのではないかという
仮説が考えられたが、H3R と PE の関連性は知られていない。
そこで本研究においてはラットを用い、PE における H3R の機能解明を目的に、H3R アゴニスト作
用を有する化合物(imetit)を用いた薬効評価および薬効メカニズム解明を行った。

【方法ならびに結果】
PE の治療効果を示す指標である EL を評価すべく、EL 延長を安定的に評価できる Wistar-Imamichi
ラットを用いた交尾行動試験を行ったところ、imetit はラットの EL を有意に延長した。また選択的
H3R アンタゴニストを共処置すると EL 延長作用は完全に抑制された。
一方で、EL 延長作用を示す上で想定される機序である神経活動の興奮抑制について検討する必要
があるが、陰茎などの末梢の生殖器を刺激した際の神経活動を評価する試験系に関して報告されてい
るものがなかったため、脊髄-陰茎神経伝達機構を評価するための新規手法構築を行った。陰部から
の外部刺激は脊髄の腰仙髄部の脊髄後角に入力するため、本部位での in vivo 細胞外記録法を行い、非
侵害、侵害や化学的刺激など、多様な刺激により誘発される神経活動評価を可能とした。また、末梢
神経である骨盤神経においても同様に神経活動記録法を構築した。
この評価系を用い、陰部を刺激した際に誘発される神経発火に対する imetit の作用を評価したとこ
ろ、imetit は陰茎への機械刺激により誘発される神経発火を有意に抑制した。Imetit は H3R のみなら
ずヒスタミン H4 受容体(H4R)の活性化作用を有する事が知られていることから、これまでに認め
られた神経発火抑制作用に対する H3R の寄与を検証するため、選択的 H3R アンタゴニストもしくは
1

選択的 H4R アンタゴニストとの併用実験を行ったところ、imetit の作用は H3R アンタゴニストで阻害
されたものの、H4R アンタゴニストによる拮抗作用は認められなかった。

【総括】
本研究の結果より、H3R の活性化は機械刺激により誘発される神経活動を末梢神経および脊髄後角
深層のニューロンにて抑制する事、またラットの EL を延長させる事が示された。
H3R はヒスタミンの自己受容体として機能し、またその他の神経伝達物質の放出に関与する。H3R
は中枢神経系のみならず末梢神経系の神経細胞で発現し、触覚などの情報を伝達する Aβ 感覚神経に
発現することが報告されている。H3R は抑制性 G タンパク質共役受容体であり、その活性化は、神経
伝達物質放出の減少や細胞内シグナル伝達を低下させる事が知られている。
PE においては、陰茎への非侵害的な機械的刺激によって誘発される神経発火は H3R 活性化によっ
て抑制され、すなわち、性行為に伴う陰茎に対する刺激による神経活動の興奮伝達と脊髄への入力を
抑制する事により、EL の延長作用をもたらすと考えられる。H3R 活性化が PE における EL 延長とい
う治療効果を発揮する、新たな治療メカニズムとなりうることを示した初めての報告である。本研究
成果が、PE におけるアンメットメディカルニーズを充足する新たな治療法の提供に繋がる研究に広
く応用されることを期待したい。

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