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大学・研究所にある論文を検索できる 「AMPA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターの開発を目指した低アゴニスト性を有するTAK-137/TAK-653の有用性に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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AMPA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターの開発を目指した低アゴニスト性を有するTAK-137/TAK-653の有用性に関する研究

鈴木, 篤 SUZUKI, Atsushi スズキ, アツシ 九州大学

2020.03.23

概要

グルタミン酸は中枢神経系で主要な興奮性の神経伝達を担っている。グルタミン酸を介した神経伝 達の増強は、学習や記憶の基礎となる神経可塑性に重要である。また、グルタミン酸神経障害は統合 失調症、アルツハイマー病、注意欠陥多動性障害および大うつ病などのさまざまな疾患に関連してい る。したがってグルタミン酸神経伝達の増強は精神疾患および神経疾患の有望な治療戦略となりうる。

近年、グルタミン酸受容体の1つであるイオンチャネル型のα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾール-プロピオン酸 (AMPA) 受容体の活性化は中枢神経疾患に有望なアプローチであることを支持する報告が増えている。しかしながら、AMPA 受容体アゴニストは脳内にある休止状態の AMPA 受容体を非選択的に活性化させることから痙攣のリスクが出てくるため、臨床での使用には向かない。脳内におけるグルタミン酸遊離は厳密に制御されていることから、グルタミン酸と異なる部位に結合し、グルタミン酸によって生理的に活性化された AMPA 受容体のみを機能的促進させる AMPA 受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(AMPA 受容体 PAM)は代替的アプローチとして非常に魅力的である。しかしながら、LY451646 のようなAMPA 受容体 PAM は初代海馬神経細胞における細胞内Ca2+レベルおよび AMPA 受容体電流を指標とした評価系において顕著なアゴニスト作用を示した。また、LY451646 は痙攣に対して安全域が狭いこと、認知機能改善効果に対しては低用量から用量の増加にともない効果が発現してくるものの高用量になると効果が減弱するベル型用量反応性がラットおよびサルで示された。さらに LY451646 および S18986 はラット海馬における脳由来神経栄養因子 (BDNF) mRNA 発現誘導など他の薬理試験においても同様のベル型用量反応性を示した。これらのことから、AMPA 受容体PAM がもつアゴニスト作用はこれらの狭い安全域およびベル型用量反応性と関連しているかもしれない。

AMPA 受容体PAM の開発の過程で、最近 AMPA 受容体 GluA1 の 743 番目のセリンと立体障害を有することがジヒドロピリドチアジアジン2,2-ジオキシド骨格を有するAMPA 受容体PAM のアゴニスト性の低減に重要であることが見出された。そこで、独自のスクリーニングフローとして 1) AMPA受容体のリガンド結合部位の組み換え体を用いたグルタミン酸存在下および非存在下での結合試験、
2) X 線共結晶解析、3) ヒト GluA1i および変異体GluA1i 発現 CHO 細胞を用いた細胞内 Ca2+レベル測定、ラット初代海馬神経細胞を用いた 4) 細胞内 Ca2+レベル測定、および 5) AMPA 受容体電流測定、を構築して低アゴニスト性化合物を探索し、私のグループは最終的に TAK-137 を見出した。TAK-137はグルタミン酸依存的に AMPA 受容体に結合し、ラット初代海馬神経細胞において LY451646 と比べて細胞内 Ca2+レベル測定および AMPA 受容体電流測定で低アゴニスト性を示した。TAK-137 はラットにおいてLY451646 と比べて強い認知機能改善作用と広い安全域を示した。このようにアロステリック部位を調節する活性化化合物において、化合物が有するアゴニスト性の詳細な評価は中枢疾患治療薬の開発において、副作用が少ない優れた薬剤の発見につながると考えられた。

そこで本論文では初代海馬神経細胞を用いてTAK-137 のネイティブなAMPA 受容体に対する電気生理学的性質を、強いアゴニスト作用をもつ LY451646 と比較検討した。その結果、これら 2 つの化合物においてアゴニスト作用のみが特徴的に異なることを見出した。この知見から薬効および毒性に大きな影響を与えるのがアゴニスト作用であることが強く示唆されたため、アゴニスト作用と安全域およびベル型用量反応性との関連をさらに検討するため、TAK-137 より低アゴニスト性のTAK-653 を探索した。さらに、低アゴニスト性の AMPA 受容体PAM TAK-137 が動物モデルで治療効果を示すかを検証するため、ヒトで抗うつ作用が報告されるケタミンと比較しながらTAK-137 の抗うつ様効果と副作用をラットで検証した。その結果、TAK-137 はケタミンと同様に抗うつ様効果を示し、ケタミンと異なり精神異常様作用は認められなかった。これらのことからTAK-137 などの低アゴニスト性の AMPA 受容体 PAM は安全で即効性の大うつ病治療薬になる可能性が示唆された。TAK-653 は現在臨床開発中である。

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