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書き出し

牛肉の格付における小ザシの取り扱いと改良の可能性

口田 圭吾 帯広畜産大学

2020.01.20

概要

牛肉の格付における小ザシの取り扱いと改良の可能

著者
雑誌名


ページ
発行年
URL

口田 圭吾
食肉の科学
56
1
15-19
2015
http://id.nii.ac.jp/1588/00004600/

食肉の科学 V
o
l
.
5
6N
o
.
I(
2
0
1
5
)1
5
1
9
【今日の話題】

午肉の格付における小ザシの取り扱いと改良の可能性
口田圭吾
帯広畜産大学,一般社団法人ミート・イメージジャパン
キーワード:牛脂肪交雑,小ザシ,画像解析,遺伝的趨勢

BMSの評価は, 1
9
8
8年に制定された BMSシリコン
模型を使って行われてきたが, 2009年に脂肪交雑標準

せていた。導入から 20年以上経過した 2009年に脂
肪交雑標準写真が取り入れられ,さらに 2014年 3月に
は,標準写真の差し替えが行われ,現在に至っている

図1


シリコン模型の BMS標準模型を策定するに当たって

, BMSナンバーとロース芯内脂肪面積割合ならびに
脂肪交雑の周囲長が等差数列となるよう設定されてお
り,脂肪交雑標準写真の選定の際にも両者が考慮され
ている。

写真が取り入れられ,さらに 2014年 3月には,小ザシ
を考慮した標準写真の差し替えが行われた。 BMSは
脂肪交雑の量と形状の組合せにより決定されるが,新
しい標準写真の導入は,全国統一的な判定をより実施
しやすいものとした。小ザシの改良は現在の格付システ
ムでは困難で、あるが,北海道での試験調査によれば,
小ザシの遺伝率は 0
.
6程度と高く,近年の BMSの改
良により脂肪交雑の量は増えたが脂肪交雑の形状の改
良スピードが鈍化していることが示された。新しい取り
組みとして,全国を流通する格付面が狭い枝肉でも画
像解析可能な写真を撮影できるようになり,今後の脂
肪交雑形状の改良が期待される。

脂肪交雑形状の画像解析
牛枝肉の客観的な手法として,画像解析を用いるこ
とが考えられる。これまで、著者らが脂肪交雑のあらさ 2)
や細かさ 3)に関して,画像解析を行うことで牛枝肉の
脂肪交雑の詳細な評価が可能であることを明らかにし
てきた。しかしながら,従来法による細かさ指数は,単
位面積当たりの脂肪交雑の細かい粒子の数を基準とし
て開発したため,脂肪の量が多い枝肉のロース芯内で
は小ザシの入るスペースが小さし脂肪面積割合の高
い枝肉が不利となる問題点があった。 2014年には脂
肪交雑の周囲長を基準とした新たな脂肪交雑形状の
評価法について報告し,新細かさ指数として利用されて
いる九前述した脂肪交雑標準写真も脂肪面積割合と
新細かさ指数の組合せにより選定されており,新細かさ
指数の概念は現在の BMSの格付に大きく反映されて
いる。
著者らは,牛肉の横断面画像よりロース芯を抽出し,
その部分を筋肉と脂肪交雑とに分離し,脂肪交雑の量を
「脂肪面積割合J
,形状を「新細かさ指数J
により評価し,
さらには「脂肪面積割合」と「新細かさ指数Jからなる
マトリックスを作成し,牛脂肪交雑を評価する方法に関し
て特許出願を実施した九 BMSナンバーの判定には脂
肪交雑の量ならびに脂肪交雑粒子の形状が関与してい
るとされているものの,各段階で l枚の基準写真しかな
く,様々な様相を呈する脂肪交雑を評価するには極めて

BMS標準写真の導入
わが国における牛枝肉の肉質評価は,通常(公社)
日本食肉格付協会の格付員によって牛枝肉取引規格 I)

に基づき行われている。この規格は農林水産省畜産試
験場の研究を基に制定され,肉量に関する項目を歩留
等級,肉質に関する項目を肉質等級として判定する。
肉質に関する項目は,「脂肪交雑J
,「肉の色沢J
,「肉
の締まりおよびきめ j および「脂肪の色沢と質 Jの 4
項目である。これらの項目のうち「脂肪交雑 j は,牛
枝肉の第 6
7肋骨間切開面における胸最長筋ならびに
背半練筋および頭半東京、筋の脂肪交雑の程度を 1
2段階
(
1:「脂肪交雑がほとんどないもの」∼ 1
2 「脂肪交雑
がかなり多いもの J
)の牛脂肪交雑基準( BeefMarbling
S
t
a
n
d
a
r
d
:BMS)に基づいて評価される。
この規格の導入により,牛脂肪交雑格付の判定精度
の向上,全国統一の基準導入ということが一気に進む
こととなった。しかしながら,当時の技術では,小ザシ
をシリコン模型の中に加味することができず,格付現場
における脂肪交雑の状態と,シリコン模型との聞に ;
/
f
t
離が生じ,脂肪交雑の安定的な格付をしにくいものとさ
zJ

食肉の科学 V
o
l
.
5
6 N
o
.
I (
2
0
1
5
)

今日 の話題

繭臨ん

B.
M.
S
.No.1は脂肪交殺の認められない
もの、 B.
M.S.No.
21
孟B.
M.S.No.3こ

満たないものであるため、写真によるスタ

ンダードを作成していません。

IIIIIIII

公益社団法人日本食肉格付協会

図 1 現在の牛枝肉格付で利用されている牛脂肪交雑標準写真

熟練した経験が必要で、あった。これを解決するために,

脂肪交雑形状の遺伝的評価

脂肪面積割合ならびに脂肪交雑粒子の形状を的確に
数値化する画像解析手法を開発し,両者の形質からな

北海道内で蓄積した黒毛和種の大規模データ
(n=8,422)を利用して,枝肉格付形質ならび、に小ザ、


るマトリックスを作成した結果,脂肪面積割合と新細か

を含む画像解析形質に関する遺伝的パラメータを推定

さ指数の組合せを利用することで,適切に脂肪交雑を

した。表 lは,画像解析形質の基礎統計量,分散成

評イ面可能となった。

分および遺伝率を示した。最大粒子のあらさ指数およ

これにより図 2で示すような脂肪交雑の形状が極端な

びロース芯複雑さを除く画像解析形質の遺伝率は中程

ロース芯の BMSナンバーの全国統一的な判定に一定
の基準を示すことができるようになった。日本食肉格付

度から高い値( 0
.
3
3∼ 0
.
7
9)であり,脂肪交雑の量や
形状は表型値に対して遺伝的変異の割合が高く,十分

協会では,あらい脂肪交雑の画像データベースを作成
し,統一的な判定が可能となるよう研償を積んで、
いる。

の遺伝率は 0
.
6
7と高い値を示した。

に遺伝的改良ができることが示された。新細かさ指数
表 2には,新細かさ指数と各枝肉格付形質問の遺
伝および表型相関係数を示した。新細かさ指数は枝肉
重量およびばらの厚さと低い正の遺伝相関(ともに
0
.
2
0)があり,皮下脂肪厚と低い負の遺伝相関(−0
.
2
5
)

であったため,新細かさ指数を改良すると枝肉の充実
度が望ましい方向へ向かうことが示された。 BMSナン
バーとの遺伝相関は 0.
6
9と高い値が得られた 。 BMS
ナンバーの基準となっている 1
2段階のシリコン樹脂の
アラザシ

コザシ

図 2 脂肪交雑形状が極端なロース芯の例

模型の作製時,一つの基準として脂肪交雑粒子の周囲
長を利用したことから,周囲長を取り入れた新細かさ指
数は BMSナンバーと高い相関を示したことが示唆され

-1
6-

牛肉の格付における小ざしの取り扱いと改良の可能性
表 1 北海道産黒毛和種の脂肪交雑に関する基礎統計量ならび、
に遺伝的パラメータ
画像解析形質

平 均 士 SD

脂肪面積割合(%)
あらさ指数(%)
最大粒子のあらさ指数(%)
細かさ指数({固/ c
m
2
)
新細かさ指数
短径長径比
ロース芯複雑さ

4
6
.
0±8
.
3
1
6
.
3±5.
0
4.
0±2
.
4
3
.
3±0.
5
77± 1
1
0
.
6
6±0.
0
7
1
.
1
0±0
.
0
3

最小値

最大値

1
4
.
9
1
.
5
0.
3
0
.
8
35
0.
38
1
.
0
5

69.
5
4
9
.
6
4
2
.
6
5
.
1
1
2
0
0.
9
5
1
.
3
9

遺伝分散

残差分散

h
2± SE

4
6
.
0
0
1
3.
3
5
0
.
4
4
0
.
1
3
0
.
6
9
1
5.
24
1
.
1
7

1
2
.
0
7
8
.
8
4
5.
02
0
.
1
4
0
.
4
2
3
0
.
7
4
8
.
0
6

0
.
7
9士 0
.
0
5
0
.
6
0±0.
05
0
.
0
8±0
.
0
2
0
.
4
9士 0
.
0
5
0.
67±0.
05
0
.
3
3± 0
.
0
4
0
.
1
3± 0
.
0
3

表 2 新細かさ指数と枝肉格付形質ならびに画像解析形質との間の遺伝ならびに表型相関係数
枝肉格付形質

遺伝相関

表型相関

画像角卒析形質

遺伝相関

表型相関

枝肉重量
ロース芯面積
ばらの厚さ
皮下脂肪厚
歩留基準値
BMSナンバー
BCSナンバー

0.
20
0
.
6
4
0
.
2
0
-0
.
2
5
0
.
5
9
0
.
6
9
-0
.
2
6

0
.
1
8
0
.
5
1
0
.
1
6
-0
.
1
5

脂肪面積割合
あらさ指数
最大粒子のあらさ指数
細かさ指数
短径長径比
ロース芯複雑さ

0.
6
2
-0
.
0
1
-0
.
3
7
0
.
6
0
0
.
2
7
0
.
0
1

0.
6
1
-0
.
1
2
-0
.
2
3
0
.
5
7
0
.
1
5
0.
04

0
.
4
6
0.
62
-0
.
1
9

る。新細かさ指数と脂肪面積割合間の遺伝相関は 0.62
と高い値を示したが,あらさ指数との聞にはー0.01とほ
ぼ無相関であり,脂肪交雑のあらさと細かさは独立した
形質であるといえる。新細かさ指数と最大粒子のあらさ
指数聞の遺伝相関は,−0.37と中程度の負の値を示し
た。最大粒子のあらさ指数はロース芯内において極端
に大きな脂肪が入り込んで、いる場合,高い値を示す。
ロース芯内に大きな脂肪があると細かい脂肪の入る余
地が小さいことが,新細かさ指数との聞に負の関連性
を示した原因と考えられる。新細かさ指数とロース芯形
状の形質問に関して,短径長径比との聞には 0.27の遺
伝相関があったが,ロース芯複雑さとの聞は無相関
だった( 0.01)。一般に,ロース芯は肩平な形状よりたわ
ら型が好まれ,ロース芯形状は複雑で、ない方が好まれ
る。新細かさ指数の改良を進めることで,ロース芯形状
に影響を与えず,望ましいとされるたわら型へ改良がで、
きることが示唆された。
新細かさ指数および脂肪面積割合に関して,繁殖雌
牛の遺伝的趨勢を比較するために それぞれの育種価
を標準化し各年ごとに平均した値の推移を図 3に示し
た。新細かさ指数および脂肪面積割合の平均予測育
種価は 1990年頃まではほぼ横ばいだが,それ以降増
加傾向を示した。牛枝肉取引規格は 1988年に改正さ
れ,枝肉外観による一元評価から量と質の二元評価に
なるとともに脂肪交雑の評価が現在の 12段階となった。
また以前から脂肪交雑の改良は行われていたが, 1991

年の牛肉輸入自由化以降,輸入牛肉に対抗するために
より脂肪交雑へ重点、を置いた改良が行われるようになっ
た。さらに 1991年には フィーノレド情報を活用したアニ
マルモデル BLUP法の導入がなされた 6)。このような背
景から 1990年以降,脂肪面積割合の育種価が急速に
増加したと考えられる。繁殖雌牛に関して,新細かさ指
数の標準化した平均予測育種価は脂肪面積割合の
それと比較し緩やかな増加で、あった。 2005年において
脂肪面積割合の標準化予測育種価の平均は 1
.
4であ
るのに対し,同年の新細かさ指数のそれは 0.9であり,
二つの形質問には高い遺伝相関があるにもかかわら
ず,約 0.5標準偏差の差が認められた。このことから
現在の黒毛和種の改良方向は,脂肪交雑の量に関し
て増加方向であるが,細かさに関して増加量が緩やか


2.0




1
.
5


7 -

1
.
0

震 0.5

3



0.
0

%-0.5

I-1.0
価 ー1
.
5

1970

1980

1990

2000

図 3 新細かさ指数(・)および脂肪面積割合(口)の標準化
した繁殖雌牛の育種価の推移

吋/

食肉の科学

Vol
.
5
6 No.
l(
2
0
1
5
)

今日の話題
となっていることが明らかとなった。肉質に関して BMS
ナンバーのみを用いた近年の改良は,あらい脂肪交雑
粒子を増加させる可能性があり,改良にあたって留意す
る必要がある。
小ザ、
シ に関しては,著者らの研究究ループによる複数
の研究報告が実施されており,小ザシとアラザシの黒
毛和種をしゃぶしゃぶで、食べ比べた際,小ザ、
シの肉の
食味が高く評価されたこと,小ザシの枝肉単価


/ kg)はそうで、
ないものと比べ 100円程度高いことな
どが示されてきた。
和牛,特に黒毛和種が目指すべき脂肪交雑の特徴
は,図 2の左側のアラザ、
シで、はなく右側の小ザ、
シで、
ある

図 4 全国を流通する牛枝肉のほとんどを占める狭い切開面
での枝肉格付

ことは多くの人に支持されることであろう。それに加え,
上述したように,遺伝的な改良が可能で、
,食味性もよ
く,枝肉単価も高いとなると,今後改良すべき形質の l
つとなっていくものと信じている。しかしながら,現状の
格付では,脂肪交雑に関わる記録が BMSナンバー l
つのみであり,例えば, BMSナンバー 8と判定された
枝肉が,アラザシであったのか,小ザシであったのか
は,格付明細からは推し量ることができない。
一般社団法人ミー卜・イメージジャパンの取り組み
平成 26年 1
2月 2
5日に発足した一般社団法人ミート・
イメージ ジャパンで、
は,肉質評価の機械化ならび、
に画
像情報,格付情報,さらには生産履歴を統合した畜産
クラウドを構築し,将来のおいしい肉の生産に寄与する
ことを目指している。特に,肉質評価の機械化に関して

図 5 現在開発中のカメラから得られるロース芯画像

は,平成 27年度日本中央競馬会畜産振興事業の牛
肉のおいしさ分析・評価事業に採択されており, 3年
後の機械の完成が待たれるところである。この肉質評
価のシステムを利用することで,小ザシの程度を瞬時に
数値化し,またそれを蓄積させ改良事業などに応用する
ことで,わが国の肉用牛,特に集団が大きく血統データ
の整備がしっかりしている黒毛和種をより良くしていくこ
とに大きく寄与することが期待される。現在,中央食肉
卸売市場を流通する牛枝肉を対象に,図 4に示すよう
な枝肉に対して試験撮影を実施しており,図 5で示すよ
うな画像を得ることに成功している。機械による肉質評
価の可能性がかなり高まっている O
肉質判定の最終判断は熟練した経験を持つ格付員
であることに揺るぎはないが,機械により肉質評価を実
施することで,これまで、
の枝肉格付の中で、
時間的制約に
より測定が困難で、
あったリプロース面積,リブロース内筋

間脂肪割合,パラの霜降りの程度なども画像解析により
瞬時に測定可能となり,これらデータを生産現場にフィー
ドパックし,次の生産の参考にしてもらえるようになること
は,肥育技術の向上にもつながるものとなるであろう。

まとめ
消費者のニーズの多様化により,今後の和牛育種の
ターゲ、
ツトをどこに置くかがきわめて重要となる。数十年
後の家畜改良の目標を予想することは誰にもできない
が,おいしい肉を圏内の資源を利用して効率的にかっ
安全に生産することに対して賛同してくださる方は多数
いると信じている。貴重な遺伝資源である黒毛和種を
含む和牛の遺伝的多様性を残しつつ,独自の膨大な
データ収集システムを構築し,それを活用することで,わ
が国の肉用牛生産を高度に発展させていくことが大い
に期待される。

間脂肪割合,サイコロ脂面積,皮下脂肪面積,僧帽筋
面積,僧帽筋内脂肪交雑程度の評価,パラの面積と筋
00

牛肉の格付における小ざしの取り扱いと改良の可能性
1
) (公社)日本食肉格付協会,牛・豚部分肉取引規格
解説書, p
p
.6
2
9,日本食肉格付協会,東京( 1
9
8
8
)

2)口田圭吾,鈴木三義,三好俊三,日畜会報, 7
3(
1
)
,
9・1
7(
2
0
0
2
)
3)口田圭吾,大津剛史,堀武司,小高仁重,丸山新,

動物遺伝育種研究, 3
4
,4
5
5
2(
2
0
0
6
)
4)加藤啓介,前田さくら,口田圭吾,日畜会報, 8
5(
1
)
,

2
1
2
6(
2
0
1
4
)
5)口田圭吾,金井俊男,脂肪交雑の評価法,特願

2
0
1
2
2
1
7
9
3
4(
2
0
0
9
)
6)向井文雄,家畜育種研究会報, 1
7
,3
4
6
4(
2
0
0
9
)

-1
9-

食肉の科学 V
o
l
.
5
6 No. ...

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