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重症心身障害児者の日常の嚥下頻度が嚥下関連筋量に与える影響

魚田, 知里 大阪大学

2022.03.24

概要

【研究目的】
 多くの重症心身障害児(者)(以下、重症児者)において嚥下障害が認められる。嚥下障害の原因としては原疾患の進行や加齢だけではなく嚥下関連筋の廃用性筋萎縮が挙げられている。廃用性筋萎縮は活動量の低下によって生じる筋量の減少であり、筋活動の頻度の低下との関連が示唆されている。このことから嚥下関連筋においては筋活動の頻度、すなわち嚥下頻度の低下が廃用性筋萎縮に関連する可能性がある。そこで、重症児者の嚥下頻度が嚥下関連筋量に与える影響を検討した。(承認番号:R1-E48)

【対象】
 対象者は、医療福祉センターに入所中の重症児者178名の内の重症者62名(男性:31名女性:31名、20〜69歳、平均年齢46.9(SD13.2)歳)とした。除外対象は、20歳未満の者、進行性の疾患を有する者、家族の同意が得られない者、調査期間中に全身状態が安定せず主治医に本研究の参加が困難と判断された者とした。

<実験I> 日常の嚥下頻度の測定
【目的】
 重症児者の嚥下頻度と嚥下関連筋量の関連を評価するにあたり、まず重症児者における日常の嚥下頻度を測定した。
【方法】
 嚥下頻度はTanakaらの方法に準じ、頸部に装着した喉頭マイクロフォンを介してICレコーダーに喉頭音を録音し、その喉頭音から嚥下時産生音を同定して嚥下頻度を測定した。測定時間は13時〜15時の間の1時間とし、同一被験者において1Η1回、日を変えて3日間、計3回測定を実施した。測定で得られた3回の嚥下頻度の値から級内相関係数(ICC)を求め、被験者内における嚥下頻度の安定性を評価した。
【結果】
 同一被験者の3回の嚥下頻度においてICC=0.89であり、同一被験者の嚥下頻度は安定していた。一方で被検者ごとの嚥下頻度は平均22.9(SD22.9)冋(1〜111回)と多様であり幅広い値をとった。
【小括】
 重症児者の嚥下頻度は同一被験者内で経日的に安定しており、被験者間では多様で幅広い値を示した。

<実験Ⅱ> 嚥下頻度と嚥下関連筋量の関連の検討
【目的】
 重症児者における嚥下頻度と嚥下関連筋量の関連を明らかにする。
【方法】
 嚥下関連筋量はKajisaらの方法に準じ超音波診断装置(ARIETTA70:日立アロカメディカル)を用いて測定した。また測定対象となる筋として、嚥下関連筋のなかでも誤嚥防止に大きく貢献し、超音波検査においても高い信頼性が認められているオトガイ舌骨筋(GM)を選択した。被験者の下顎骨オトガイと甲状軟骨最大豊隆部の中間点に6.0MHzのリニアトランスデューサーを留置し、GMの横断面積を測定した。得られた横断面積と嚥下頻度の相関の有無をPearsonの積率相関係数を使用し評価した。
【結果】
 嚥下頻度とGMの横断面積の間に有意な正の相関(P<0.01, r=0.45)を認めた。
【小括】
 重症児者において嚥下頻度が低い者ほどGMの横断面積が小さい傾向が認められ、嚥下頻度がGMの横断面積に影響を与えている可能性が示された。

<実験Ⅲ> 嚥下関連筋量に関連する因子の検討
【目的】
 実験Ⅱから重症児者における嚥下頻度とGMの横断面積の関連が示された。しかし嚥下頻度以外のGMの横断面積に関連しうる因子が横断面積に影響を及ぼす可能性があるため、それらの因子を含めた上で嚥下頻度の影響の強さを検討する必要がある。そこで実験ⅢではGMの横断面積に関連する因子を多変量解析で評価する。
【方法】
 重症児者のGMの横断面積に関連しうる因子として、年齢、性別、体重、全身の骨格筋量の指標である上腕筋面積(ΑΜΑ)を調査した。ΑΜΑは望月らの方法に準じ、上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)とL・腕周囲長(AC)の測定値から算出した。目的変数をGMの横断面積、説明変数を嚥下頻度・年齢・性別・体重・ΑΜΑとして重回帰分析を行った。
【結果】
 修正重相関係数=0.60、修正決定係数=0.36となり、嚥下頻度(偏回帰係数=0.01, 標準誤差=0.00, 標準偏回帰係数=0.34, t値=3.23, P<0.01)と体重(偏回帰係数=0.02, 標準誤差=0.01, 標準偏回帰係数=0.34, t値=3.11, Ρ<0.01)と性別(偏回帰係数=0.25, 標準誤差=0.09, 標準偏回帰係数=0.30, t値=2.85, P<0.01)はGMの横断面積と関連を認めた。GMの横断面積に対して嚥下頻度と体重はいずれも正の相関を示し、性別においては男性と比較して女性で有意に小さかった。また影響度は嚥下頻度、体重が同程度に大きく、性別はそれに次ぐ結果となった。一方で、年齢およびΑΜΑはGMの横断面積との間に有意な相関が認められなかった。
【小括】
 重症児者において嚥下頻度、体重が低い者ほどGMの横断面積は小さく、男性に比べ女性でGMの横断面積が小さい傾向が認められた。一方で年齢や上腕筋面積はGMの横断面積と関連を認めなかった。また、GMの横断面積と関連を認めた因子の中で影響度が強かったのは嚥下頻度と体重であった。

【総括】
•重症児者の嚥下頻度は、同一被験者内で経日的に安定しており、被験者間では多様で幅広い値を示した。
•重症児者の嚥下関連筋量は嚥下頻度、体重、性別と関連していた。なかでも嚥下頻度と体重の影響が強く、嚥下頻度の低下を認める者ほど筋量が減少し、廃用性筋萎縮が生じることが示唆された。
•このことから嚥下頻度の多寡に着目した対応策が嚥下関連筋の廃用防止につながる可能性があると考えられた。

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