リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「加工原料用キャベツの安定供給に向けた貯蔵条件の検討とカット加工後の品質保持」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

加工原料用キャベツの安定供給に向けた貯蔵条件の検討とカット加工後の品質保持

髙田 優紀 東京農業大学

2021.09.24

概要

近年,ライフスタイルの多様化により,一次加工品であるカット野菜の需要が増加している。カット加工の原料用野菜には,定時,定量,定価格,定品質が求められるが,ここ数年,天候不順により安定供給が難しくなっている。カット野菜原料として最も需要の高いキャベツも例外ではなく,解決策のひとつとして数か月程度の貯蔵法の確立が求められている。カット加工後のキャベツの品質保持に関しても課題があり,切断面の褐変と異臭の発生によって消費期限は 3~4 日と非常に短い。食品ロス軽減の意味からも,消費期限の延長が必要である。

これらを背景に,本研究では,まず第 1 章において,加工原料用キャベツを安定供給するための貯蔵条件を温度,湿度,ガス環境の面から検討した。さらに実用化に向けて,プラスチックコンテナでの貯蔵試験を試みた。次いで第 2 章では,まずカットキャベツの品質劣化要因である褐変と異臭の発生を評価できる方法を決定した。その評価方法を用いて,カットキャベツの品質保持期間を延長させることを目的に,プレハーベストの要因として,品種,窒素施肥条件を検討し,またポストハーベスト要因として,キャベツに含まれる辛み成分であるアリルイソチオシアネート(AITC)の利用,密封時に初期ガス濃度を調製する Active MA 包装の効果について検討した。

第 1 章 加工原料用キャベツの長期貯蔵
第 1 節 個包装における貯蔵条件
愛知県産寒玉系キャベツについて,温度(0℃,3℃),湿度(高湿度,低湿度),包装(0.03mm厚延伸ポリプロピレン(OPP))の有無を組み合わせた計 8 試験区で 3 か月間の長期貯蔵を試みた。貯蔵中の実測温度(かっこ内は最低温度)は,3℃低湿度区,3℃高湿度区,0℃低湿度区,0℃高湿度区でそれぞれ 2.7℃(1.5℃),2.6℃(1.9℃),-0.3℃(-0.9℃),-0.1℃(-0.4℃)であった。とくに 0℃貯蔵区では,最低温度をキャベツの凍結温度(-0.9℃)以上に制御できた。湿度は 3℃低湿度区,0℃低湿度区でそれぞれ 80%,91%,高湿度区ではいずれも≧ 95%であった。貯蔵 3 か月後の外観は,0℃で貯蔵するとほとんどの試験区で緑色が保持され,黄変がみられた 0℃無包装区でもその発生は外葉に限られていた。一方 3℃貯蔵では黄変と萎れの発生が著しかったが,包装を行うことでその発生を軽減できた。原料重量に対するカットキャベツの製品割合(歩留まり率)をみると,0℃のすべての試験区および 3℃で包装を行った試験区で 3 か月間 70%以上を確保できた。

第 2 節 大袋包装における貯蔵条件
さらに実用化に向けた貯蔵条件を明らかにするため,加工原料用キャベツの出荷に用いられているプラスチックコンテナを使って 3℃条件下での貯蔵を試みた。プラスチックコンテナを積み重ねてその全体を 0.03mm 厚ポリエチレンフィルム(PE)でおおった外包装区では,高湿度に保持されていたため重量減少率は低く抑えられたものの,ガスコントロールができていなかったため歩留まり率は 56%と低くなった。そこでプラスチックコンテナに PEを内装し,キャベツを入れた後に袋開口部を何重にも折り込みテープ止めした内包装区を設けた。その結果,袋内は酸素・二酸化炭素濃度とも 6%程度で推移し,外葉の緑色が保持され,歩留まり率も 75%以上と高い値を示した。食味に関わる成分として遊離アミノ酸 18 種を貯蔵前後で比較したところ,3 か月貯蔵中に半数以上の遊離アミノ酸が増加したが,呈味特性に変化はみられなかった。さらに現場で利用できる冷蔵庫の温度実測値に基づき 10℃貯蔵試験を行った。その結果,3℃貯蔵に比べると劣るものの,内包装によってガスコントロールすることで,歩留まり率 70%を維持できた。

以上のように,加工原料用キャベツの安定供給には,低温,高湿が有効で,中でも 0℃貯蔵の品質保持効果が高かった。さらに省エネルギーと社会実装の観点から大袋包装における貯蔵条件の検討を行った結果,フィルム包装を利用することで 10℃貯蔵でも 3 か月間歩留まり率 70%を確保することができた。

第 2 章 カットキャベツの品質保持期間の延長
第 1 節 褐変特性の評価法の考案
カットキャベツの褐変特性を,異なるガス透過特性をもった 6 種類のフィルムで評価した。その結果,0.03mm 厚の低密度ポリエチレンおよび微細孔フィルム(P フィルム)を使用し て 10℃で保存することにより,袋内を酸素濃度 5%程度に維持でき,異臭を発生させること なく褐変特性の評価が可能であった。

第 2 節 品種間差異について
キャベツ 25 品種の切断面の褐変特性を,P フィルムを使用して評価した。その結果,品質保持期間は,最も短い‘YR 晴信’で 2.2 日,最も長い‘彩ひかり’および ‘YR 清美’で 7.0 日であり,品種により 3 倍以上の差が認められた。

第 3 節 窒素施肥条件による品質保持期間の違い
キャベツ栽培中の窒素施肥条件を慣行の半分(N 少),慣行,慣行の 2 倍(N 多)と 3 段 階に設定し,収穫後のカットキャベツにおける球重および品質保持期間への影響を検討した。球重は試験区間で差は認められなかった一方,品質保持期間は,N 少区で最も長く 9.2 日, N 多区で最も短く 5.2 日であった。翌年,栽培規模を拡大して継続調査を行い,同時にキ ャベツの主要な辛み成分であり褐変しにくい品種に多く含まれるとされるアリルイソチオ シアネート(AITC)量と遊離アミノ酸含量を測定した。その結果,球重,品質保持期間お よび遊離アミノ酸含量については試験区間で差は認められなかったが,AITC 量は N 少区で 最も高い値を示した。

第 4 節 アリルイソチオシアネート(AITC)処理の効果
収穫後の褐変抑制法として外生 AITC の包装前処理が検討されてきた。AITC 溶液に直接浸漬する方法や AITC をシクロデキストリンに包接して徐放する方法が試みられてきたが,安定した効果が得られなかった。新たな方法として密閉容器内でガス化した AITC を包装前のカットキャベツに曝露処理する方法を考案した。処理条件を検討したところ,AITC を 30% エタノールで 0.05%に調整後 1 時間曝露処理することで,品質保持期間の延長効果が確認できた。そこで品種による延長効果の違いを比較したところ,品質保持期間を 5.0 日から 7.6 日まで延長できる品種‘輝吉’がある一方,4.0 日から 4.6 日までしか延長しない品種‘信州 868’も確認された。

第 5 節 Active MA 包装の効果
袋内のガス組成を人為的に改変して品質保持を図る Active MA 包装は,密封してすぐに品質保持に最適なガス濃度に調製できるほか,従来 MA 包装では実現できない酸素,二酸化炭素濃度の組み合わせも可能である。そこで,カットキャベツの Active MA 包装の褐変抑制効果について検討した。まず,カットキャベツの品質保持に最適なガス濃度といわれる 5%酸素,15%二酸化炭素に調製後,異なるガス透過特性をもった 6 種類のフィルムに入れ評価したところ,P フィルムの品質保持期間が最長の 6 日間を示した。さらに品質保持期間を延ばすために,大気よりも高濃度の酸素と二酸化炭素を組み合わせた Active MA 包装を試みた。酸素濃度を 5,20,50,80%,二酸化炭素濃度を 0,15%に調製し酸素透過度の低いナイロンポリ(NP)および P フィルムで包装した結果,酸素 50%,二酸化炭素 15%に調製後 NP で包装した試験区で,品質保持期間が最長の 7 日間となった。

以上のように,実際の流通温度に近い 10℃貯蔵を前提として褐変特性評価法を決め,この方法で,品種,窒素施肥量,包装前の AITC 曝露処理および Active MA 包装の褐変抑制効果を検討した。その結果,品質保持期間を現状の 3~4 日から 1 週間程度まで延長できる可能性を明らかにした。

本研究では,加工原料用キャベツの安定供給に向けた貯蔵条件およびカット加工後の品質保持について検討した。0℃貯蔵では包装せずに,10℃貯蔵でもフィルム包装を利用することで 3 か月間 70%以上の歩留まり率を確保できた。カット加工後のキャベツの品質保持については,品種の選定,包装前の AITC 処理および高濃度酸素,二酸化炭素の利用を提案し,いずれも品質保持期間を 1 週間程度まで延長できる条件を明らかにした。これらの研究成果は,消費期限の長いカットキャベツの安定供給に貢献するものである。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る