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大学・研究所にある論文を検索できる 「農産物直売所における集荷問題に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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農産物直売所における集荷問題に関する研究

金, 東壹 KIM, DONGIL キム, ドンイル 九州大学

2021.05.31

概要

近年の農産物直売所(以下、直売所)における出荷者の高齢化の進展により、出荷を断念する出荷者が増え、直売所の商品不足問題が顕在化してきた。直売所の出荷者の高齢化とともに、出荷者自身による直売所への農産物の運搬と回収という仕組みが高齢化の進展の中で不整合を起こしていることが、近年の商品不足問題に拍車をかけているといえる。以上の問題に対して一部の直売所では、運転困難な高齢農家から農産物を集荷する試みを始めている。しかし、集荷費用と利用料の収支のバランスが取れず、直売所の集荷事業の持続可能性が低いという結果が支配的であった。しかし、今後、農家の高齢化は進行し、集荷サービスに対する需要は増加する見込みである。従って、本研究は持続可能な集荷に向けて、直売所の集荷の想定を見直し、最小費用で集荷の運用が可能となる最適な集荷の計画を研究した。

第 2 章では、直売所の集荷に関する先行研究および実証実験が直売所の集荷事業に否定的な結論を出した理由を整理した。まず、ターゲット層は運転困難な高齢農家であり、また、利用者は庭先集荷を選好することが一般に想定されている。また、集荷対象農家が空間的に疎に分布していることから集荷 1 件当たりの集荷費用が膨大になること、一方で、集荷する商品の金額が小さい集荷を行っている。以上のことから直売所の集荷に対する研究はまず、集荷の想定における利用者の想定と集荷方法の見直しを検討し、次は最適な集荷物流モデルの構築で、直売所の集荷問題を段階的に研究する必要性を明らかにした。

第 3 章では、第 2 章で挙げた先行研究における集荷サービスの想定について、これらの想定が必ずしも妥当ではないことを明らかにした。福岡県の中山間地域に位置し、10 年間、集荷サービスを行っている農産物直売所Mを事例として取り上げ、直売所と集荷サービス利用農家へのヒアリングを行った。調査から、時間の機会費用が大きい農家へもターゲット層を広げるべきであること、また、利用農家の多くは、たとえそれが自動車運転の困難な高齢農家であっても、庭先集荷方式よりも拠点集荷方式を選好していることを明らかにする。次に、集荷サービスの収益性試算を行い、ターゲット層の拡大と拠点集荷方式の下で、初めて集荷サービスが経済的に成立していることを示した。

第 4 章では、直売所における集荷が最小費用で運用できるような計画を図れるモデルを構築した。直売所の集荷事業では、開店前の限られた時間の中で、点在する農家から集荷することが容易でないこと、季節によって集荷地点ごとの出品品目や数量が異なり、集荷順路がその都度異なってくる。そのため最適な集荷の計画が難しい。更に、今後の出荷農家の高齢化の進展に伴い、段階的に集荷サービスの需要が増えていくことなどから、多様なケースを想定した集荷物流構築および費用面からの妥当性の判断が要求されている。そこで、 拠点集荷方式における直売所の集荷サービスについて、効率的な集荷物流設計 問題を、混合 0-1 整数計画問題として定式化した。モデルにおいて、集荷サービス利用量をパラメトリックに変更することで、集荷サービスを経済的に成立させるために必要な集荷サービス手数料を、利用量規模別に算出した。その結果、対象地域で実現可能な範囲で将来的に集荷サービス利用量が増加した場合、手数料 5%以下で集荷サービスを実現させることが 可能であることが確認された。

以上のように、本論文では、これまでの直売所における集荷サービスの実証事業の多くが、経済的に成立することが難しいと結論付けられていた理由について再考し、集荷対象が運転困難な高齢農家以外に拡大可能であること、集荷方式も庭先集荷方式よりも拠点集荷方式が選好されうることを示した。そして、拠点集荷方式であれば、将来の集荷サービス利用者増加にあたって、経済的に持続可能な集荷物流の構築が可能であることを集荷物流モデルによるシミュレーションによって明らかにすることができた。本論文の成果は、一地域を対象として分析されたものであるが、地理的に類似する多くの中山間地域において同様に適用可能である。本論文が示す集荷事業計画および集荷物流設計を行うことで、直売所における集荷サービスの経済的な成立可能性を高めるものと考える。

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