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大学・研究所にある論文を検索できる 「抑制性免疫受容体Allergin-1 リガンドの同定」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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抑制性免疫受容体Allergin-1 リガンドの同定

柴垣, 翔平 筑波大学

2021.08.03

概要

【背景・目的】
Allergy inhibitory receptor 1 (Allergin-1) は細胞外に免疫グロブリン様ドメインを、細胞内に Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif (ITIM) を有する抑制性免疫受容体で、ヒト及びマウスの肥満細胞 (mast cells; MC)、樹状細胞 (dendritic cells; DCs)、マクロファージ及び好塩基球に発現する。Allergin-1 は高親和性 IgE 受容体や TLR シグナルを抑制することで全身性アナフィラキシー、house dust mite (HDM) 誘導性喘息、皮膚炎及び食物アレルギーなどのアレルギー疾患を制御する生理的機能を持つ。しかし、マウス及びヒトの Allergin-1 リガンドは不明であることから、Allergin-1 のアレルギー抑制機能を人為的に誘導してアレルギー疾患の根本的治療へ応用するにはリガンドの同定が求められている。

本研究では、アレルギー疾患の病態解明や新規治療法の基盤開発を目的として、Allergin-1 リガンドの同定を試みた。

【方法】
マウス Allergin-1 リガンド発現細胞のスクリーニングには、転写因子 NFAT の活性化依存性に緑色蛍光タンパク GFP を発現するレポーター細胞に、マウス Allergin-1 の細胞内領域を Fc receptor gamma chain (FcRγ) に置換したキメラ受容体を過剰発現させ、Allergin-1 にリガンドが結合すると GFP を発現するマウス Allergin-1 レポーター細胞を用いた。Allergin-1 レポーター細胞をマウス各組織から分離・誘導したプライマリ細胞と共培養後、フローサイトメトリー法で GFP 陽性分画の出現を解析した。骨髄由来培養樹状細胞 (Bone marrow-derived cultured DC; BMDC) 上で Allergin-1 と会合する分子を免疫沈降するため、Allergin-1 と Allergin-1 会合分子を架橋剤 DTSSP で架橋させた後、抗マウス Allergin-1 抗体を用いて免疫沈降した。免疫沈降物は液体クロマトグ ラフィー質量分析(LC-MS)で解析した。候補分子のリガンドとしての機能解析はAllergin-1 レポーター細胞を用いた。リガンド候補分子との結合を検出するプローブには可溶型マウス Allergin-1 のC 末端に 3 つの Flag タグを融合させたリコンビナントタンパク msAllergin-3×Flag を用いて、ELISA 法、ウエスタンブロッティング法、およびフローサイトメトリー法で解析した。

【結果】
マウス Allergin-1 レポーター細胞を用いたスクリーニングから、BMDC と共培養するとレポーター細胞が GFP を発現する結果を得た。また、フローサイトメトリー法により msAllergin-3×Flag が BMDC に結合することから BMDC 上にリガンドが発現することが示唆された。そこで BMDC 上で Allergin-1 と会合する分子を抗マウス Allergin-1抗体で免疫沈降し、質量分析解析から Allergin-1 と会合する候補分子を選出した。この候補分子の構造から膜型受容体ではなく、分泌型の分子であることが示唆された。さらに先行研究から、この分子はカルシウムイオン結合能を有し、カルシウムと結合することで立体構造変化を起こすことが明らかとなった。実際に、候補分子と Allergin-1 の結合を ELISA 法で検証した結果、カルシウムイオン存在下でより強く Allergin-1 に結合する結果を得た。また、候補分子がマウス腹腔滲出細胞中の MC 上の Allergin-1 に結合することをフローサイトメトリー解析により明らかにした。次に候補分子のリガンドとしての機能を検証するため、マウス Allergin-1 レポーター細胞に加えて刺激したところ、レポーター細胞が GFP 陽性となる結果を得た。以上の結果より、この候補分子がマウス Allerign-1 リガンドであることが示唆された。

【考察】
これまで Allergin-1 のリガンドは長らく不明であった。本研究により、BMDC 上でAllergin-1 と会合している候補分子がマウス Allergin-1 リコンビナントタンパクに直接結合し、マウス Allergin-1 レポーター細胞を活性化することから、リガンドである可 能性が見出された。今後、プライマリの細胞を用いた in vitro の機能解析及び in vivo 解析から本分子がリガンドであることを証明できれば、アレルギーの発症機構と病態の理解に新しい知見を加えることができる。さらに、アレルギー疾患における Allergin-1リガンドの発現局在および発現量を明らかにすることで、アレルギーの新しい制御法の開発につながる可能性もある。例えば、アレルギー病態に関与する MC の近傍において Allergin-1 リガンドの発現量が低い患者に対しては Allergin-1 リガンドリコンビナントタンパクや Allergin-1 に対するアゴニストを投与することでアレルギー応答を人 為的に制御することが可能となりうる。

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