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大学・研究所にある論文を検索できる 「血漿ペプチドミクスにて同定した新規ヒト生理活性ペプチドの受容体・結合蛋白探索研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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血漿ペプチドミクスにて同定した新規ヒト生理活性ペプチドの受容体・結合蛋白探索研究

佐々木 紗也加 北里大学

2021.07.20

概要

【背景と目的】
 ヒト血漿中の強力な生理活性因子の多くは低分子量蛋白やペプチドであるがその血中濃度はきわめて低いことが知られている。すなわち血液中には未知の生理活性ペプチドや疾患バイオマーカーはごくわずかしか存在しないため、過去約 20 年間に発見された新規因子や脱オーファン化されたG 蛋白共役型受容体はきわめて少数にとどまっている。その中で著者所属研究室および北里大学理学部プロテオミクスセンターの共同研究では血漿中の低分子量ネイティブペプチドを網羅的に多数同定することに成功しつつある。1 万を超える同定された新規ネイティブペプチドのデータベースの中から今回アンジオテンシノーゲン由来ペプチドに着目し、生理活性を有するペプチドを探索した。
 新たに作成された血漿ペプチドームデータベースを用いると新規生理活性ペプチドの同定が容易になることが予想される一方で、依然としてペプチドホルモンの細胞表面受容体を同定することは容易ではない。
 強力な生理活性ペプチドの受容体探索は、シグナル伝達研究および創薬シーズ探索の重要なターゲットとされており、多くの方法論が検討されてきた。今回、低分子量生理活性ペプチドの細胞表面受容体を分離するための簡単な方法を開発することを目的とし、ペプチド性リガンドと細胞表面受容体を化学架橋させ、リガンド-受容体の複合体の単離と検出を試みた。アンジオテンシンⅡを用いて、ヒト大動脈平滑筋細胞に発現するアンジオテンシンⅡタイプ 1 (AT1) 受容体を単離することを試みた。

【方法】
 ヒト大動脈平滑筋細胞に AT1 受容体が発現し、細胞内シグナルを惹起することを確認するために、アンジオテンシンⅡ添加後の細胞内Ca2+濃度の変化を測定し、蛍光標識アンジオテンシンⅡの細胞表面 AT1 受容体への結合を共焦点顕微鏡での二重染色により確認し た。そのうえでビオチン化アンジオテンシンⅡを培養ヒト大動脈平滑筋細胞表面受容体に結合させた上で架橋剤を添加し、回収した細胞分画からストレプトアビジンビーズを用いて架橋されたペプチドリガンド-細胞表面受容体の複合体を抽出し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったのちにストレプトアビジンおよび抗 AT1 受容体抗体を用いてイムノブロットした。
 また、ヒト血漿ペプチドームにて同定されたペプチドライブラリーの中からペプチド同定偽発見率 (FDR) 1%以下の精度で構造決定されたネイティブペプチドをインシリコ解析してアンジオテンシノーゲン由来ペプチドを探索し、化学合成した。これらの合成ペプチドが生理活性を有するかを検討するため、ヒト培養細胞における細胞内Ca2+濃度が上昇するかどうかを検討し、さらに蛍光標識ペプチドを用いて培養細胞への結合を共焦点顕微鏡で評価した。

【結果】
 ヒト大動脈平滑筋細胞は AT1 受容体を発現し、細胞内Ca2+濃度はアンジオテンシンⅡに応答して増加した。免疫細胞染色では細胞表面の AT1 受容体発現部位に一致して蛍光アンジオテンシンⅡが認められた。AT1 受容体とビオチン化アンジオテンシンⅡを細胞培養下にて化学架橋したうえ、抽出した細胞成分をウエスタン解析したところ、両者の共在が確認され、リガンドと受容体蛋白が結合した状態で電気泳動にて分離できたことが示された。
 新規ネイティブペプチドデータベースに登録したペプチドライブラリーの中から、FDR 1%以下の精度で同定されたアンジオテンシノーゲン由来ペプチド配列をインシリコ解析で探索したところ 17 個同定され、うち、16 個はユニークペプチドであった。これらの中でアミノ酸配列 448 から始まるC 末端側の配列に、ヒト単球性白血病細胞由来マクロファージで細胞内Ca2+濃度上昇活性を示すものがあり、蛍光標識ペプチドを添加して共焦点顕微鏡にて観察すると時間依存的に細胞表面の蛍光シグナル強度を増加させたことから、細胞表面受容体の存在が示唆された。

【結論】
 培養下のリガンド・受容体を化学架橋することにより、アンジオテンシンⅡの細胞表面受容体である AT1 受容体を検出できた。今回考案した手法は新たな細胞膜受容体・結合蛋白同定法として用いられる可能性が示された。また、アンジオテンシノーゲン由来ペプチドの中に、アミノ酸配列 448 以降のC 末端側のペプチドにおいて生理活性を有する新規因子が存在する可能性が示唆された。

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