接着状態のマスト細胞におけるLILRB4/gp49B - Fibronectin - Integrin の三者複合体形成による活性化調節機構に関する研究
概要
(書式18)
学 位 論 文 要 約
( A b s t r a c t )
博士論文題目
接着状態のマスト細胞における LILRB4/gp49B - Fibronectin - Integrin の
三者複合体形成による活性化調節機構に関する研究
東北大学大学院医学系研究科医科学
専攻
加齢制御研究部門 遺伝子導入研究
分野
氏名
宮本 祥太朗
【研究背景】
マスト細胞は自然免疫および獲得免疫の受容体を介して活性化することで、宿主を病原体やアレルゲンの
侵入から保護する役割を担う。一方で、過剰な活性化による自己傷害を防ぐため、その機能は抑制性受容体
および特異的結合分子リガンドによって厳密に制御され、免疫細胞ひいては生体の恒常性が維持されている
と考えられている。そのため、抑制性受容体とそのリガンドの免疫学的機能を知ることは、免疫細胞の負の
制御機構を理解するのに重要である。私の所属研究室では、抑制性受容体 Leukocyte Immunoglobulin-like
receptor B4(LILRB4)に着目しており、これまでに LILRB4 およびそのマウス相同性分子 gp49B の新規
リガンドとして Fibronectin(FN)を独自に同定し、ループス腎炎モデルマウスにおける LILRB4/gp49B
と FN の結合阻害によって、抗二本鎖 DNA 自己抗体の減少と糸球体腎炎の改善に効果があることを見出し
た。加えて、gp49B はマウス骨髄由来マスト細胞(Bone marrow-derived mast cell, BMMC)上から同定
され、高親和性 IgE 受容体(High-affinity Fc receptor for IgE, FcRI)を介した BMMC の活性化を抑制
できることが報告されている。しかし、FN は活性化受容体である Integrin の活性化および FcRI の刺激
に関与する分子であり、マスト細胞上に発現する LILRB4/gp49B の制御機構と FN の関連は未だ明らかで
はない。
【研究目的】
本研究は FN が BMMC 上の活性化受容体 Integrin 51 および抑制性受容体 LILRB4/gp49B に共通する
リガンドであることに着目し、LILRB4/gp49B – FN – Integrin の三者複合体を形成することの検証を目的
とした。
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(書式18)
【研究方法・結果】
本研究の共焦点レーザー顕微鏡による蛍光シグナル解析によって、BMMC の非接着状態において、
Integrin 1 と gp49B は空間的に近接して局在していることが示唆された。また固相化 FN に強固に接着し
た際の細胞輪郭に沿って、Integrin 1 と gp49B はより共局在性が増すことが示された。一方で FcRI の
サブユニット FcRIは浮遊状態および接着状態のいずれにおいても、gp49B、Integrin 1 と共局在しなか
った。固相化した抗原を用いて、FcRI を介した刺激を行うと、FcRIの蛍光シグナルは細胞輪郭より内
側に集中し、gp49B および Integrin 1 のシグナルとの相関がわずかに増加した。
【考察結論】
活性化および抑制性の FN 受容体である Integrin と gp49B は、細胞輪郭線で共局在していたが、活性化
受容体である FcRI と gp49B は空間的に近接しなかった。IgE/抗原を介した刺激は gp49B と Integrin を
FcRI とより近い位置に集積させることが示唆された。以上より BMMC 上において、LILRB4/gp49B –
FN – Integrin の三者複合体が形成されており、FcRI を介した活性化によって BMMC 活性化の調節機構
として機能していることが示唆された。この研究から、FN – LILRB4/gp49B の調節機構による、マスト細
胞における活性化の制御を標的にしたアレルギー治療につながる可能性が期待できる。 ...