リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「第34回(2022年度)名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究シンポジウム 講演要旨」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

第34回(2022年度)名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究シンポジウム 講演要旨

名古屋大学

2023.03

概要

講演要旨
一 般 講 演 セッシ ョン1
中国浙江省余丁市田螺山遺跡出土木柱の放射性炭素年代

○中村俊夫(名大)・金原正明(奈良教育大)・菊地大樹(中国蘭州大)・丸山真史(東海大)・孫 国平
(中国浙江省文物考古研究所)・松井 章(奈良文化財研究所・故人)・中村慎一(金沢大)・佐藤正教
(パレオラボ(株))
2013 年 3 月,2014 年 10 月および 2016 年 9 月に,浙江省余姚市田螺山遺跡を調査に訪れた際,遺
跡全体の発掘が進行しており,おびただしい数の木柱がむき出しにされていた.田螺山遺跡の発掘は,
層序を確定しつつ行われていたが,これは相対的な編年でしかない.遺跡の各層が何年前に形成され
たかを年代値として捉えるために,遺跡内で床面に立っている,あるいは横たわっている木柱のうち主
要な 97 本選んで最外年輪に近い部位から木材片を採取し,名古屋大学の加速器質量分析計を用い
て放射性炭素(14C)年代を測定した.こうして採取した試料から,田螺山遺跡の編年について検討して
得られた結果をここに報告する.田螺山遺跡から出土した木柱の出土層位は,上層から下層に向けて,
第 3 層,第 5 層,第 6 層,第 7 層,第 8 層と区分されている.それぞれ出土層に属する木柱の 14C 年代
の平均値を求めると,第 8 層で 6040 ± 50 BP,第 7 層で 5960 ± 50 BP,第 6 層で 5870 ± 70 BP, 第 5 層
で 5680 ± 60 BP,第 3 層で 5420 ± 80 BP と得られ,層序関係と 14C 年代値の大小は良く調和している.
14

C 年代を暦年較正した結果として,第 8 層で 7000〜6800 cal BP,第 7 層で 6900〜6700 cal BP,第

6 層で 6800〜6500 cal BP,第 5 層で 6500〜6300 cal BP,第 3 層で 6300〜6100 cal BP の範囲に集中
すると推察される.まとめると,田螺山遺跡は,約 7000 cal BP から 6000 cal BP にかけて栄えた,日本で
言う縄文時代前期の大集落遺跡である.

安定硫黄同位体分析による姉川古せき止め湖堆積物のヒ素起源

○益木悠馬・勝田長貴・内藤さゆり(岐阜大)・南 雅代(名大・ISEE)・由水千景・陀安一郎(総合地球研)

滋賀県伊吹山の姉川の河岸段丘崖には,伊吹山の地滑りで生じた古せき止め湖の湖成層が露出す
る.この湖成層から,層状に分布する高濃度のヒ素(平均 68 μg/g; 大陸地殻の約 30 倍)が硫化物とし
て検出された.本研究は,安定硫黄同位体比(δ34S)をトレーサーとし,流域の原岩(3 種 8 個),河川水
(姉川と 2 支流),3 箇所の湧水の分析により,姉川湖成層に濃集するヒ素の起源推定を行った.全硫黄
(TS)含有量は有機元素分析装置(ISEE),安定硫黄同位体比(δ34STS,δ34SSO4)は S–IRMS(RIHN),酸
素同位体比(δ18OSO4)は有機 OH–IRMS(RIHN)を用いて決定した.堆積物 δ34STS は–1.75 ± 2.50‰を
示し,姉川 δ34SSO4(4.03 ± 0.76‰,70 µM)とほぼ同じ値であった.この一致は,堆積物の間隙水中の硫
酸還元により硫酸イオンが完全に枯渇したことを意味し,δ34STS は堆積時の湖水の δ34SSO4 を示すと考え

71

られる.原岩の TS 含有量は 0.10 ± 0.08%であり,チャート(0.13%)や砂岩(0.14%)は高い値を示す.チ
ャートは黄鉄鉱(FeS2)粒子や放散虫化石,砂岩は直径 0.1 mm の石英や長石を主体とする岩石組織を
持つ.チャートの δ34STS は–22.87‰,砂岩は–2.15‰であり,周辺の美濃帯堆積岩類の δ34STS(–20‰ ~
–2‰)と整合する.河川の δ34SSO4 は–7.4 ~ 4.0‰,δ18OSO4 は 0.7 ~ 3.0‰であり,河川の硫酸イオンは原
岩の黄鉄鉱酸化,湧水の δ34SSO4 は–1.3 ~ 4.2‰,δ18OSO4 は–0.6 ~ 1.4‰であり,土壌由来とそれぞれ推
察される.これにより,姉川当該流域の水は地質影響を強く受けており,湖成層のヒ素と硫黄は流域の
原岩から湖に河川水を通じて供給されたと推察される.

秋田県男鹿半島に見られる巨大ドロマイトコンクリーション

○隈 隆成(名大・ISEE)・西本昌司(愛知大)・村宮悠介(深田地質研)・吉田英一(名大・博物館)
秋田県男鹿半島の鵜ノ崎海岸の波食台には,直径 1‒9 m の巨大な球状炭酸塩コンクリーションが 100
個以上見られる.これらの巨大な炭酸塩コンクリーションの内部には鯨骨が含まれており,その形成メカ
ニズムについてはよく分かっていなかった.本研究では,この巨大な炭酸塩コンクリーションの成因を解
明し,その堆積環境を推定することを目的とした.鯨骨を含む巨大炭酸塩コンクリーションは,中新統の
女川層と西黒沢層の境界に集中して産出し,同一層準や上下層にはマウンド状のハンモック状斜交層
理砂岩も確認された.ハンモック状斜交層理砂岩自体もコンクリーション化しており,様々な生痕化石が
確認された.これらのコンクリーションから採取した試料に対して,鉱物組成分析や,炭素・酸素安定同
位体比分析を行った.鉱物組成分析の結果,コンクリーションの主要鉱物はドロマイトであった.鯨骨部
とコンクリーション部の炭酸塩の炭素同位体比は−15.3 ~ −14.6‰であった.ドロマイトの沈殿条件を考慮
すると,コンクリーションは硫酸イオンが除去された還元環境で沈殿したことが示唆される.また,コンクリ
ーションの中心に鯨骨が含まれることと,炭素同位体比の値から,鯨に含まれる有機物がコンクリーショ
ンの炭素源であると考えられる.したがって,鵜ノ崎海岸の巨大ドロマイトコンクリーション群は,初めに鯨
の遺骸が暴風波浪の営力によって集積し,速い堆積速度で埋積され,次に,底生生物や微生物による
有機物の分解によって生成された重炭酸イオンが,間隙水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン
と反応することによって形成されたと推定される.

北海道石狩地方の 10 万年前以降の古植生とその推移

〇星野フサ・春木雅寛(北大・総合博物館)・南 雅代・北川浩之(名大・ISEE)・中村俊夫(名大・名誉教授)

北海道中央部の石狩地方とその周辺部は北海道内で最も多くのボーリング試料の花粉・胞子分析デ
ータや植物遺体化石データがある.遡れば新生代古第三紀の石炭化石に残る温暖期の植物が分布し,
その後,本研究で述べるように新生代新第三紀中新世の 1300 万年前ころのイヌブナ,ブナ群など暖温
帯性落葉広葉樹や常緑針葉樹が出現した.最近のボーリングデータからは数十万年前,約 10 万年前,
さらに縄文時代(約 1 万年前)以降の花粉分析データも加わった.

72

本研究では,著者の一人である星野がこれまで携わってきた調査地点での花粉・胞子分析のデータ,
その地層の成り立ちや植物遺体データ,さらには名古屋大学との共同研究で得られた AMS14C年代測
定値などにより当時の古植生と現生森林植生がどのようにリンクされるのか検討することができた.
試料採取時の柱状図とその花粉・胞子データを調査地点付近の現生森林植生と土壌調査による表層
土壌内部の花粉・胞子組成と比較検討することで古植生変遷の特徴や現在に至る森林植生の成立の
要因を把握するために 7 箇所の調査地点について考察した.
西部の海抜 600 m 余の中山峠は 1300 万年前ころにはイヌブナ,ブナをはじめスギ,ツガ属,メタセコ
イアなどの暖帯性の樹種が出現し,現在も見られるトウヒ属,モミ属の針葉樹,コナラ属,カバノキ属,ハ
ンノキ属,ニレ属,オニグルミ,シデ属,ハシバミ属といった広葉樹の種属が出現した.これはプレートテ
クトニクスに伴う火山活動によりテフラ堆積地が多くなり,気温の低下,種子の鳥獣散布樹種の増加によ
り樹種の多様化を生じ,陽樹の常緑針葉樹は衰滅するものも現れたが,温帯性の常緑針葉樹と落葉広
葉樹の混生林あるいは落葉広葉樹林に引き継がれる形で(のややいびつだが連続性を持って)現在に
至っていく様子について報告する.

一 般 講 演 セッシ ョン2
愛知県南知多町の先苅貝塚から産出した貝形虫化石(予察)

〇佐々木聡史・隈 隆成(名大・ISEE)
20 世紀以降,地球温暖化に伴う氷河氷床融解によって海水面が上昇しており,今後数百年に渡って
海水面の上昇が予測されている(e.g., IPCC, 2019).急激な海水面の上昇が起きた場合,沿岸域の低地
帯の水没などが考えられ,人間社会維持のためにも海水面変動の予測は重要な課題である(菅沼ほか,
2020).特に,汎世界的に約 12000–7000 年前にかけて急激な海水面上昇が地質学的研究によって報
告されており(e.g., Fairbanks, 1989),この時期の海水面を復元し,今後の予測に貢献することは重要で
ある.愛知県知多郡南知多町には縄文時代の貝塚が多数分布する.その中でも先苅貝塚は,縄文早
期からの古環境や人間活動などの重要な記録を持つ可能性があるが,古環境復元に関する研究があ
まり行われていなかった.そこで本研究では,先苅貝塚のボーリング掘削調査時に採取された試料に含
まれる貝形虫化石の採取同定を行い,当時の古環境および海水面の復元を行った.

イラン北西部の石灰岩地域から湧出する地下水の放射性炭素

○南 雅代(名大・ISEE)・淺原良浩・金子将己(名大・院・環境)・Hadi Amin-Rasouli(イラン・クルジスタ
ン大・工)・Hossein Azizi(イラン・クルジスタン大・理)
西アジア地域における古気候変動の解明は,古代西アジアの都市文明の発生と変容への影響を考
察する上で重要である.近年,世界各地の鍾乳石の化学分析から過去数千年から数万年の降雨量の
変化が復元され,気候変動に伴い降雨特性が大きく変化していたことが明らかになってきた.しかし,西

73

アジア(特にイラン・イラク)を対象とした研究はほとんどなされていない.
イラン北西部のザグロス造山帯及びその周辺にはジュラ系から白亜系の石灰岩が広く分布し,石筍だ
けでなく,第三紀〜第四紀の火成活動にともなう温泉生成物のトラバーチンも広く産出する.そこで,
我々は,ケルマンシャー州コリカレ鍾乳洞の石筍,西アゼルバイジャン州タフテ・ソレイマーンのトラバー
チンを対象として,放射性炭素(14C)測定,元素・同位体分析を行い,西アジア地域の過去数千年〜数
万年間の古気候復元を目指している.本研究では,石筍,トラバーチンのもとである滴下水,地下水の
溶存無機炭素の 14C,δ13C 分析を行い,その炭素の起源を調べることを目的とした.
地下水,滴下水の DCF(Dead Carbon Fraction)と δ13C の関係を調べた結果,タフテ・ソレイマーンのソ
ロモンの玉座(トラバーチンの円形台地),トラバーチンの丘(ゼンダン・ソレイマーン)の麓の湧水池の水
の溶存無機炭素は石灰岩 CO2 と大気 CO2 の混合で説明可能であった.一方,コリカレ鍾乳洞の滴下水
の炭素は,石灰岩 CO2,大気 CO2 のほか,土壌 CO2 の寄与が見られた.さらに,クルジスタン州ゴルベ
のババ・グーグーの湧水の炭素は,ほぼ石灰岩 CO2 起源であった.以上のことから,比較的近い場所の
地下水,滴下水も場所によって起源元素の寄与率が異なっていることが明らかになった.

14

C,δ13C を用いたイラン北西部クルディスタンの大気エアロゾルの発生源解析

〇片岡賢太郎(名大・院・環境)・南 雅代(名大・ISEE)・淺原良浩(名大・院・環境)・Hossein Azizi(イラ
ン・クルジスタン大・理)
大気エアロゾル中の主成分である炭素(有機炭素,元素状炭素,炭酸塩炭素等)の発生源を明らかに
することは,大気汚染の対策や,地球の気候変動の解明につながる(e.g. ...

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る