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大学・研究所にある論文を検索できる 「Analysis of microRNA in Bile Cytological Samples is Useful for Detection and Diagnosis of Extrahepatic Cholangiocarcinoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Analysis of microRNA in Bile Cytological Samples is Useful for Detection and Diagnosis of Extrahepatic Cholangiocarcinoma

内畠 由加里 広島大学

2022.03.23

概要

背景:肝外胆管癌 extrahepatic cholangiocarcinoma(eCCA)は近年の治療の進歩にもかかわらず、5 年生存率は低いままである。eCCA の診断のため胆管擦過細胞診や胆汁細胞診が使用されるが、検査として特異度は高いが、感度は低い。その理由として、胆管擦過細胞や胆汁細胞診検体は容易に変性するため詳細な形態観察による良悪性の鑑別が困難な例が多いためと考えられる。
microRNA は、18〜23 塩基の非コード RNA であり、特定の mRNA の翻訳を調節し、腫瘍においては様々な役割を果たすことが知られており、microRNA がいくつかのがんの早期診断マーカーの候補であることが示されている。
一部の microRNA は、eCCA 組織及び細胞株を用いた研究で eCCA の診断バイオマーカーや予後予測因子として報告されているが細胞診検体を用いた解析は殆どない。そこで著者らは胆汁細胞診検体を用いて microRNA を定量的に解析し、良悪性の鑑別に有用な新規マーカーを選定し胆汁細胞診の精度を向上出来るか検討した。

方法:既報及び The Cancer Genome Atlas(TCGA)において胆管癌に関して報告されている microRNA の中から miR-182-5p、miR-31-5p、miR-122-5p、miR-92a-3p、miR-378d の 5 つの microRNA を選択し、検討を行った。組織検体、細胞診検体から total RNA を抽出し、qRT-PCR法により各 microRNA と U6 small nuclear RNA の custom primer を用いてコピー数の定量的解析を行った。組織検体は本学で切除された eCCA32 例の腫瘍組織と 20 例の正常胆管組織を対象とした。細胞診検体は本学で採取された胆管擦過細胞診あるいは胆汁細胞診検体を用い、40例の標本作製後残余沈渣凍結検体と 84 例のプレパラート標本から細胞を剥離した検体を対象とした。各 microRNA の発現と細胞診判定及び病理診断との関係について検討をした。

結果: miR-31-5p、 miR-122-5p、miR-378d は胆管癌組織において正常組織よりも有意に高発現であった(miR-31-5p: P<0.001, miR-122-5p: P<0.001, miR-378d: P=0.009)。一方、miR-182-5p は胆管癌組織で有意に低発現であった(P=0.006)。miR-92a-3p は胆管癌と正常組織で有意差はなかった(P=0.2836)。
細胞診プレパラート標本から剥離した細胞で、病理診断が胆管癌であった 53 例と良性疾患であった 31 例の各 microRNA の発現量を比較すると、細胞診判定に関係なく miR-31-5p、miR-182-5p、 miR-378d、miR-92a-3p が良性症例より胆管癌症例で有意に高発現であった(miR-31-5p: P<0.001, miR-182-5p: P<0.001, miR-378d: P<0.001, miR-92a-3p: P<0.001)。
miR-122-5p は有意差を示さなかった。また、ROC 解析では miR-182-5p 単独が他の microRNAや miR-182-5p と miR-31-5p の組み合わせと比較して感度が高かった(miR-31-5p: AUC =0.82 ,感度=73.6%, miR-182-5p: AUC =0.86,感度=94.2%, miR-378d: AUC =0.74,感度=51.0%, miR-92a-3p: AUC =0.75,感度=77.4%, miR-122-5p: AUC=0.47,感度=48.0%, miR-31-5p&miR-182-5p: AUC =0.88,感度=73.1%)。細胞診と比較して miR-182-5p の感度及び特異度が共に最も高かった。(細胞診:感度=41.5%,特異度=64.5%, miR-182-5p:感度=94.2%,特異度=67.8%)。また、miR-182-5p の発現量は細胞診判定と有意に相関した。(スペアマン順位相関係数:0.45;P<0.001)。
細胞診で Atypical と判定された 26 例のうち組織学的に胆管癌と診断された 15 例と良性疾患の11 例では、胆管癌症例で miR-182-5p が有意に高発現であった。
細胞診標本作製後の残余沈渣を用いて同様に 5 つの microRNA の発現量の解析も行った。 miR-182-5p の発現量は 23 例の病理診断が良性疾患の症例より 17 例の病理診断が胆管癌の症例で有意に高値であった(P=0.008)。他の4つのmicroRNA では有意差を認めなかった(miR-31-5p:P=0.266, miR-378d: P=0.508, miR-92a-3p: P=0.061, miR-122-5p: P=0.692)。
以上の結果より本研究は胆管細胞診標本の補助判定として microRNA の発現を解析し、miR-182-5p の発現が細胞診で Atypical と診断された悪性例と良性例を区別できることを示した。

考察:凍結組織を対象として解析した miR-182-5p の発現レベルは、細胞診検体の結果とは異なった。この原因としては、組織検体は上皮細胞、炎症細胞、間質細胞、内皮細胞などの様々な細胞を含むが、胆汁細胞診プレパラート検体では、主として上皮細胞と炎症細胞であり、含有細胞の違いが microRNA の発現量の違いに関与したと考えた。著者らの知る限り、eCCA における miR-182-5p の発現レベルと機能に関する報告はない。また eCCA 患者の胆管擦過により採取された塗抹細胞診標本から剥離された細胞検体中の microRNA に関する報告もない。本研究は、良性疾患の患者と比較して eCCA 患者の胆汁細胞診検体でいくつかの microRNA の発現レベルが高かった。これらの結果は、胆汁細胞診標本における microRNA の定量的解析が、客観的な診断補助として有用である可能性を示唆している。塗抹標本を使用すると、プレパラートから細胞を剥離する工程が必要になるため、作業が増加するが、検鏡で細胞を観察出来ることが最大の長所である。また、塗抹標本をすぐに 95%アルコールで固定し、封入できるため検体の空気暴露を防ぎ、RNA の分解を抑制できると推定される。胆汁中の RNA を高品質のまま維持するための最適な処理法や保存法については、更に検討する必要がある。
本研究の限界は、microRNA の診断に対する有用性を評価するには検体数が十分であったので、症例数を増やし大規模な研究を実施する必要があろう。多くの細胞診検体から microRNAを抽出し、複数の microRNA の定量解析を臨床応用するためには、自動検査システムを構築し、より簡便な方法の開発が望まれる。

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