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大学・研究所にある論文を検索できる 「Gene expression profiling using targeted RNA-sequencing to elucidate the progression from histologically normal lung tissues to non-invasive lesions in invasive lung adenocarcinoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Gene expression profiling using targeted RNA-sequencing to elucidate the progression from histologically normal lung tissues to non-invasive lesions in invasive lung adenocarcinoma

門永 太一 鳥取大学

2022.03.04

概要

令和 4年 2月

門永太一


学位論文審査要旨








副主査





廣 繁











主論文
Gene expression profiling using targeted RNA-sequencing to elucidate the progression
from histologically normal lung tissues to non-invasive lesions in invasive lung
adenocarcinoma
(肺腺癌の正常肺組織から非浸潤性病変への進行における遺伝子発現解析)
(著者:門永太一、坂部友彦、城所嘉輝、春木朋広、野坂加苗、中村廣繁、梅北善久)
令和4年

Virchows Archiv

doi: 10.1007/s00428-021-03250-y

参考論文
1. Gene expression profiling by targeted RNA sequencing in pathological stage I lung
adenocarcinoma with a solid component
(充実型増殖を有する病理病期Ⅰ期の肺腺癌における遺伝子発現解析)
(著者:城所嘉輝、坂部友彦、春木朋広、門永太一、野坂加苗、中村廣繁、梅北善久)
令和2年

Lung Cancer

147巻

56頁~63頁













Gene expression profiling using targeted RNA-sequencing to elucidate the progression
from histologically normal lung tissues to non-invasive lesions in invasive lung
adenocarcinoma
(肺腺癌の正常肺組織から非浸潤性病変への進行における遺伝子発現解析)

浸潤性肺腺癌は、不均一な形態学的特徴を示し、最も多い組織型に応じて、置換型、腺
房型、乳頭型、微小乳頭型、充実型の各亜型に分類される。浸潤性肺腺癌の特徴は、正常
肺における遺伝子的な変化により、上皮内腺癌を含む非浸潤性病変となり、浸潤能力を獲
得することで、微少浸潤性腺癌、浸潤性腺癌へと段階的に進行することである。浸潤性肺
腺癌内の置換型増殖は、非浸潤性病変を表している。上皮内腺癌から浸潤性腺癌への進行
と遺伝子の変化の関連については報告が散見されるが、浸潤性肺腺癌内で正常肺組織と非
浸潤性病変との間の遺伝子発現の違いに着目した解析はみられない。本研究では、浸潤性
肺腺癌内で正常肺組織と非浸潤性病変を比較することで、発癌早期に発現する特異的な遺
伝子を検索することを目的とする。



2015年1月から2018年12月までに鳥取大学医学部附属病院呼吸器外科で根治切除が施行

された病理病期IA1-IA2期肺腺癌180例のうち、非浸潤性病変および浸潤性病変をともに腫
瘍全体の10%以上含む7例を対象とした。正常肺組織、非浸潤性病変をそれぞれlaser
microdissectionで採取してtotal RNAを抽出した。次世代シーケンサーを用いて20,812の
既知遺伝子の発現量を測定した。RNAの品質が維持されている6例を最終対象として、正常
肺組織群と非浸潤性病変群とで二群間比較(ペアワイズ尤度比検定)を行い、発現変動遺
伝子(Differentially expressed gene; DEG)を同定した。DEGのエンリッチメント解析、
タンパク質間相互作用 (Protein-protein interaction; PPI)解析から、非浸潤性病変で特
徴的な遺伝子の機能評価を行った。非浸潤性病変、浸潤性病変をともに腫瘍全体の10%以
上含む30例と上皮内腺癌または微小浸潤性腺癌30例を対象にDEG発現を免疫組織化学染色
にて検証した。TCGAデータベースから早期肺腺癌患者 (病理病期IA期)119例のRNA-Seqデー
タを抽出し、生存期間解析を行った。



比較解析の結果、2,536のDEGを同定した。このうち、非浸潤性病変で発現増加する遺伝

子は863、発現減少する遺伝子は1673であった。Gene set enrichment analysis (GSEA)で
は細胞死や免疫反応に関連する遺伝子がDEGで多く含まれていることが明らかになった。
PPIでは、発現増加遺伝子ネットワークではCDH1、EGF、HRASなどが、発現減少遺伝子ネッ
トワークではIL6、TNF、VEGFAなどがハブ遺伝子として同定された。非浸潤性病変で発現増
加していたCholine transporter-like protein 5 (SLC44A5)のタンパク発現は、浸潤性肺
腺癌患者、上皮内腺癌/微小浸潤腺癌患者において、正常肺組織よりも非浸潤性病変で有意
に高値であった。一方、発現減少が認められたTransmembrane protein 100 (TMEM100)のこ
れらの患者における発現は、正常肺組織よりも非浸潤性病変で有意に低値であった。また、
これらはEGFR変異の有無には影響されなかった。さらに、早期肺腺癌患者のTCGAデータベ
ースを用いた生存期間解析では、SLC44A5高発現群では全生存期間が低下傾向にあり、
TMEM100低発現群では無再発生存期間が有意に低下していた。



SLC44A1-SLC44A5 familyは中間親和性コリントランスポーター様タンパク質として知ら

れており、様々なヒト細胞株で高発現を示しているが、肺腺癌細胞株におけるSLC44A5の
mRNA、タンパク質の発現はこれまで報告されていない。一方、SLC44A5発現は、肝細胞癌の
細胞生存率、浸潤、アポトーシス抑制に重要な役割を果たしていることが報告されている。
このことから、肺腺癌発癌におけるSLC44A5の機能解明の為には、さらなる研究が必要であ
るが、SLC44A5が肺腺癌の悪性度獲得に重要な役割を果たしていると推測される。一方、発
育中の臓器の血管で典型的に発現しているTMEM100の非小細胞肺癌における過剰発現は、細
胞増殖、細胞浸潤を抑制することが報告されている。TMEM100発現が、非浸潤性病変の段階
から有意に減少していたことから、TMEM100は正常肺組織から上皮内腺癌や非浸潤性病変が
発生する際に重要な役割を果たしていることが示唆された。
また、PPIネットワーク解析によって、CDH1・EGF・HRAS (発現増加)、IL6・TNF・VEGFA (発
現減少)などの癌での働きが多数報告されている遺伝子が非浸潤性病変で発現変動してい
るハブ遺伝子として同定されたことから、肺腺癌で重要となる主要遺伝子の発現変動は、
浸潤能獲得前の発癌初期に生じている可能性が示唆された。



浸潤性肺腺癌内の非浸潤性病変では、多数の発現変動遺伝子が認められ、新規の発現変

動遺伝子と重要なPPIネットワークを同定した。肺腺癌の正常肺組織から非浸潤性病変への
進行に関連する生物学的特性の解明に貢献することができた。