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大学・研究所にある論文を検索できる 「Oligodendrogenesis and myelin formation in the forebrain require platelet-derived growth factor receptor-alpha」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Oligodendrogenesis and myelin formation in the forebrain require platelet-derived growth factor receptor-alpha

濱島 丈 富山大学

2020.07.22

概要

〔目的〕
血小板由来増殖因子受容体アルファ(PDGFRα)は、オリゴデンドロサイト (OL)前駆細胞の増殖、遊走及び分化の制御を仲介して、発達中の脊髄の OL の生成と 髄鞘形成に関与していることが明らかになっている。PDGFRα のノックアウト (KO) マウスは胎児致死性であり、全脳の髄鞘形成は生後の脊髄よりもより遅れた時期に活発となる現象である。従って、発達中の前脳における PDGFRα の解析は困難で、その役割は不明なままである。そこで本研究では、Nestin プロモーター/エンハンサーにより発現が誘導される Cre レコンビナーゼ遺伝子を有するマウスを用いて、Pdgfra 遺伝子の条件付き KO マウス(N-PRα-KO)を確立した。これにより、胎児致死性を回避して、胎児期から生後の前脳の発達における OL 系譜細胞の動向と髄鞘形成を中心として解析した。

〔方法〕
1. Nestin promoterにより発現が誘導される Cre レコンビナーゼ を導入遺伝子として有するマウスと Pdgfra 配列の二か所に Lox P 配列を挿入した遺伝子(Pdgfra- flox)を有するマウスの系統交配実験を実施し、Nestin promoter+/-; Pdgfra flox/flox マウス (N-PRα-KO) を得た。N-PRα-KO では、Nestin が主として活性化される神経上皮部分で、胎児期の 10.5日 (E10.5) 以降選択的に Pdgfra が KO される。 対照には C57BL/6 マウス (wild type, WT) を用いた。

2. Cre を介した Pdgfra 不活化に伴い m-Cherry をレポーター遺伝子として発現する N-PRα-KO-mCherry を作成した。m-Cherry の発現を単一細胞内の Pdgfra 遺伝子不活性化の間接的な指標として用いた。

3. Olig2 (OL 系列マーカー)、Sox10 (OL 分化マーカー)、Dlx2 (未熟な介在神経細胞マーカー)、MBP (髄鞘)、NeuN (神経細胞)、GFAP (アストロサイト)、Neuro- filament (軸索) の免疫染色を行った。TUNEL 法にてアポトーシスを評価した。

〔結果並びに考察〕
1. N-PRα-KO は生後平均 17日 (P17) まで生存した。N-PRα-KO の体重は WT と同様に P7 まで増加した。WT の体重は増加するが、N-PRα-KO では増加不良を認め P9 以降で有意に低値であった。WT の円滑で素早い運動に比較して N-PR α-KO で P11 から四肢のこわばりが出現し P14 で明らかに運動が障害された。

2. N-PRα-KO の Olig2+ 細胞では、胎児期から生後にわたる全実験期間を通じて、 PDGFRα の発現がほぼ抑制された。胎児期の N-PRα-KO の Olig2+ 細胞は、WTと同様に細胞数が増加し、腹側から背側への遊走も保たれた。一方で N-PRα- KOの Olig2+ 細胞では Sox10 発現が減少し、髄鞘形成性 OL への分化が大幅に抑制された。N-PRα-KOとWTの間にDlx2+/Olig2+ 細胞数に差はなく、Pdgfra の不活性された Olig2+ 細胞の神経細胞への分化転換は示唆されなかった。これらの結果は Pdgfra の不活性化が脊髄の OL 細胞の数の増加と遊走を抑制し、早期成熟を来したとする以前の報告と全く異なっていた。

3. Olig2+ 細胞は新生児初期まで WT と同様に N-PRα-KO の脳に広く分布する。しかしながら、N-PRα-KO の Olig2+ 細胞は生後 2週で前脳において激減した。 Olig2+ 細胞が相当数残存する P7 において、TUNEL 染色を施行した。皮質、脳梁、線条体において、Olig2+ 細胞中のTUNEL+/細胞の割合は、WTに比較して N-PRα-KO で増加した。これらはPDGFRα が生後の脳における Olig2+ の OL 系列細胞の重要な生存因子であることを示した。生理的な発達経路で、生後 2-3週で大脳皮質の多数の未熟な Olig2+ 細胞がアポトーシスで選択的に適度に排除される。これと同様に Pdgfra が不活性化された Olig2+ 細胞の成熟抑制が、N-P Rα-KO 脳の Olig2+ 細胞死の亢進と関連した可能性がある。N-PRα-KO-mCherryでは、脳全体に mCherry+ 細胞が見られた。多くの NeuN+ 細胞と GFAP+ 細胞は、大脳皮質と脳梁で mCherry + であった。Pdgfra 不活性化は、神経細胞やアストロサイトの生存と分布には大きな影響を及ばさないことを示唆した。

4. P15ではN-PRα-KO の脳は肉眼的な異常は示さず、WTと同様であった。一方で MBP+ の髄鞘の染色性は、脳梁、脊髄および小脳の灰白質において WT に比較して、N-PRα-KO で大幅に減弱した。髄鞘形成は N-PRα-KO で高度に抑制された。脳梁において Neurofilament+ で示される軸索は WT では密な走行を認めるが、N-PRα-KO では軸索の数が減少し走行の乱れを認めた。Pdgfra の KOによる髄鞘形成不全が軸索障害を来し、運動障害の原因となったと考えられた。

5. OL の血管形成への関与が報告されており、N-PRα-KO の血管形成を解析した。胎児期から P3 までの血管構造や分布には WT との差はみられなかった。N-PR α-KO では P7 で脳表面からの貫通血管数が増加し、P13 で脳実質内での豊富な血管形成を認めた。OL の変化と関連した新しい異常血管新生であり、その発生機序の解明は今後の課題である。

〔総括〕
本研究は胎児期から生後早期にわたる PDGFR の役割を前脳の OL の生成および髄鞘形成を中心に明らかにした。PDGFRα は全脳においても、脊髄同様に髄鞘形成に重要であった。脊髄とは異なり、Pdgfra の KO は胎児期の OL 系統細胞の成熟を妨げるが、細胞数の増加や遊走には影響せず早期早熟も誘導しなかった。 Pdgfra の KO は生後の OL 系統細胞の大量死、血管の異常形成、髄鞘の低形成、軸索変性などの形質を示した。いずれもが未報告の新たな知見である。前脳の発達機構を解明するためにさらなる研究が必要である。

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