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大学・研究所にある論文を検索できる 「Comparison Between 3-Dimensional Multiple-Echo Recombined Gradient Echo Magnetic Resonance Imaging and Arthroscopic Findings for the Evaluation of Acetabular Labrum Tear」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Comparison Between 3-Dimensional Multiple-Echo Recombined Gradient Echo Magnetic Resonance Imaging and Arthroscopic Findings for the Evaluation of Acetabular Labrum Tear

東平 翔太 横浜市立大学

2020.03.25

概要

1. 序論
股関節唇損傷の画像評価は鏡視下手術の術前に不可欠である. 非造影放射状 3.0-Tesla(3T) 3-dimensional(3D) Multiple Echo Recombined Gradient Echo(MERGE) MRI(Discovery MR750w, GE Healthcare, Japan)を用いて股関節唇損傷の所見を改訂 Czerny 分類に基づき評価した. 股関節鏡視所見は MAHORN 分類を用いて評価し, MERGE MRI の股関節唇損傷における診断精度を検討した.

2. 対象
2013 年 12 月から 2018 年 9 月の間に術前評価として MERGE MRI を撮像し, 股関節鏡視下手術を施行した 71 股を後方視的に評価した. 大腿骨寛骨臼インピンジメント (Femoroacetabular impingement; FAI) 29 股, 境界型寛骨臼形成不全(Borderline development dysplasia of the hip; BDDH) 26 股, 変形性股関節症(Osteoarthritis; OA) 16股が含まれた. 股関節軸位像あるいは 45 度屈曲 Dunn 像におけるα角が 55 度以上を FAI,股関節正面像において Center-Edge(CE)角が 20 度〜25 度のものを BDDH と診断した. OA は Tönnis grade 2 以下の症例を初期 OA として対象にした. 平均年齢はそれぞれ FAI 40 歳(14〜60 歳), BDDH 40 歳(13〜63 歳), 63 歳(47〜77 歳)であった.

3. 方法
MERGE MRI の撮像条件は繰り返し時間(TR)を 30ms, エコー時間(TE)を 10.9ms とした. Axial 像を 3D 再構築して放射状に股関節唇を描出した. Clock face method を⽤いて, 股関節唇を関⼼領域として時計軸で前⽅(2 時〜3 時), 前外側(1 時〜2 時), 外側(0 時〜1 時)と定義し, 各領域における股関節唇損傷の形態を Czerny 分類で評価した.

本研究では股関節唇の骨化や変性が著しく従来の Czerny 分類で評価困難な症例が散見され, 新たに改変 Czerny 分類として stage 4 を定義した. 骨化を示唆する低信号領域が明らかで関節唇が臼蓋縁から完全に分離し非薄化している症例を stage 4A, 低信号領域と高信号領域が不明瞭に混在し, 関節唇は肥厚, 関節包との境界がない症例を stage 4B とした. 全ての MRI 所見は 2 名の整形外科医が独立して評価し, 検者間誤差及び検者内誤差を Cohen のκ係数を用いて算出した.

股関節鏡視所見は Philippon らの Clock face method(Philippon et al. 2014)を用いて時計表記で前方, 前外側, 外側で他検者にて blind 下に評価した. 断裂形態は Safran らが定義した Multicenter Arthroscopic Hip Outcomes Research Network(MAHORN)分類(Safran and Hariri 2010)に基づき, 部分断裂, 完全断裂, フラップ断裂, 変性断裂に分類した. 股関節鏡視手術は全例同一の術者によって行われた. MERGE MRI における改変 Czerny 分類の stage と股関節鏡視所見における MAHORN 分類の断裂形態における相関を Yates のカイ二乗検定によって評価した. 加えて残渣検定を加えることで有意差を検証した. また stage 1 以上の改変 Czerny 分類と、MAHORN 分類における股関節唇損傷(部分断裂, 完全断裂, フラップ断裂, 変性断裂)の存在をそれぞれ比較することによって, MERGE MRIの診断能を検出した.

4. 結果
MERGE MRI 所見は前方と外側に比較し前外側で損傷を有意に多く認めた(p<0.01). 疾患別には FAI 群では前方 69%, 前外側 90%, 外側 55%で断裂を認め, 特に外側より前外側で断裂を多く認めた(p<0.05). BDDH 群では前方 81%, 前外側 92%, 外側 54%で断裂を認め, FAI 群と同様に外側よりも前外側で有意に断裂所見が多かった(p<0.05). OA 群においては前方 81%, 前外側 100%, 外側 94%であり, 有意に stage 4 が多かった. 検者間信頼性はκ係数 κ=0.69, 検者内信頼性はκ=0.85 であり, 再現性は良好であった.

股関節鏡視所見では, 前方領域において 94%の股関節唇損傷を示し, 前外側領域において 96%, そして外側領域で 47%であった. 領域別には, 股関節唇損傷は外側領域によりも前方および前外側領域においてより多く認めた(p<0.01). FAI と BDDH 群においては, 股関節唇損傷は外側領域よりも前方および前外側領域においてより多く認めた(p<0.01). 特に OA 群では 16 股中の 8 股で著しい股関節唇の変性のために MAHORN 分類で評価困難であった.

MRI 所見における改変 Czerny 分類と股関節鏡視所見における MAHORN 分類の相関では Yates のカイ二乗検定では有意差を示し(p<0.001), 残渣検定においては改変 Czerny 分類 stage 0 のMRI 所見は, 股関節鏡視所見では MAHORN 分類でも正常所見と有意に高い相関を認めた(p<0.01). 改変 Czerny 分類 stage 2 は、股関節鏡視所見での部分断裂に相関し(p<0.01), stage 3 はMAHORN 分類で変性断裂を有した症例において有意に多く観察された(p<0.05). 本研究で新たに提唱した改変 Czerny 分類の stage 4 は股関節鏡視所見では変性断裂と有意な相関があった.

股関節鏡視所見との比較に基づく MERGE MRI の感度, 特異度は全体では感度 85%/特異度 56%であり, 領域別には前方で感度 79%/特異度 50%, 前外側で感度 96%/特異度 50%, 外側で感度 70%/特異度 57%であった.

5. 考察
MERGE MRI は多重エコーにより高い信号強度と良好なコントラストを得ることが可能である. 放射状撮像を組み合わせることで, 股関節唇損傷の好発部位である, 前外側に置いて高い感度を示した. MERGE MRI 所見の改変 Czerny 分類による評価では新たに定義した stage 4 が変性断裂を有する OA 症例で多いことが示された. また MERGE MRI 所見における検者内, 検者間の再現性も良好であった.

近年では非造影の 3T MRI や放射状 MRI を用いた股関節唇損傷の評価が進歩を続けている. 放射状撮像は全周性に股関節唇を描出可能であり, 股関節唇損傷の診断に有用だと報告されている(Plötz et al. 2001).非造影の放射状 3D DESS シーケンスによる股関節唇評価が有用だという報告(Schleich et al. 2017)や単純と造影による股関節唇の評価でも両検査間で同等の結果が報告されている(Crespo-Rodríguez et al. 2017).

股関節唇損傷の診断における非造影の放射状 MERGE MRI は関節造影 MRI の代替となる可能性を有しており, 改変 Czerny 分類は股関節唇損傷の診断に一石を投じる新たな分類であり, 治療方法選択の一助となり得る. 良好な感度はスクリーニングに有用だが特異度は低く検討を要するが, MERGE MRI では細かいスライスを用いたために良好なコントラストの結果として, 術中に判断できないような微細な変性を捉えた可能性がある. このように捉えるならば, 改変 Czerny 分類 stage 4 のような重度の変性を描出し, 他方で微細な変性を描出し得る可能性のある MERGE MRI は近年世界的に拡がりをみせる股関節鏡視下手術の分野で, 今後のさらなる発展が期待される.

参考文献

Crespo-Rodríguez, Ana M., Jose C. De Lucas-Villarrubia, Miguel Pastrana-Ledesma, Ana Hualde-Juvera, Santiago Méndez-Alonso, and Mario Padron. 2017. “The Diagnostic Performance of Non-Contrast 3-Tesla Magnetic Resonance Imaging (3-T MRI) versus 1.5- Tesla Magnetic Resonance Arthrography (1.5-T MRA) in Femoro-Acetabular Impingement.” European Journal of Radiology. https://doi.org/10.1016/j.ejrad.2016.12.031.

Philippon, Marc J., Max P. Michalski, Kevin J. Campbell, Mary T. Goldsmith, Brian M. Devitt, Coen A. Wijdicks, and Robert F. LaPrade. 2014. “An Anatomical Study of the Acetabulum with Clinical Applications to Hip Arthroscopy.” Journal of Bone and Joint Surgery - American Volume. https://doi.org/10.2106/JBJS.M.01502.

Plötz, G. M J, J. Brossmann, M. Von Knoch, C. Muhle, M. Heller, and J. Hassenpflug. 2001. “Magnetic Resonance Arthrography of the Acetabular Labrum: Value of Radial Reconstructions.” Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery. https://doi.org/10.1007/s004020100270.

Safran, Marc R., and Sanaz Hariri. 2010. “Hip Arthroscopy Assessment Tools and Outcomes.” Operative Techniques in Orthopaedics. https://doi.org/10.1053/j.oto.2010.09.014.

Schleich, Christoph, Tobias Hesper, Harish S. Hosalkar, Fanni Rettegi, Christoph Zilkens, Rüdiger Krauspe, Gerald Antoch, and Bernd Bittersohl. 2017. “3D Double-Echo Steady- State Sequence Assessment of Hip Joint Cartilage and Labrum at 3 Tesla: Comparative Analysis of Magnetic Resonance Imaging and Intraoperative Data.” European Radiology. https://doi.org/10.1007/s00330-017-4834-8.

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