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Joint line convergence angle predicts outliers of coronal alignment in navigated open-wedge high tibial osteotomy

辻 雅樹 横浜市立大学

2020.09.21

概要

1. 序論
内側開大型高位脛骨骨切り術(OWHTO)は内側型変形性膝関節症や大腿骨内側顆骨壊死に対する治療として確立している(Saito et al, 2014).良好な術後成績には正確な術前計画と手術手技が要求され(Koshino et al, 1979),近年 OWHTO でナビゲーションを併用することで従来法より正確な矯正を行え,よりよい術後成績が得られると報告された(Akamatsu et al, 2012).しかし,ナビゲーション併用 OWHTO でも下肢アライメントの術中ナビゲーション値と術後レントゲン値で差が生じる(Kyung et al, 2013).本研究は術中ナビゲーションと術後レントゲンの Hip-knee-ankle angle(HKA)の差を Navigation correction loss(NCL)と定義し,NCL の程度と,術前レントゲンからNCLの関連因子を見つけることを目的とした.

2. 実験材料と方法
2014 年 2 月から 2017 年 4 月にナビゲーション併用 OWHTO を施行した 106 膝を対象とした.OWHTO の手術基準は(1)内側に限局した変形性膝関節症,(2)Ahlbäck grade 1 もしくは 2,(3)屈曲拘縮 15°以下,(4)Femoro-tibial angle(FTA)185°以下,(5)前十字靱帯,後十字靭帯に損傷を認めない,とした.膝蓋大腿関節の変形性関節症の有無と患者年齢では除外しなかった.10 膝が除外され,96 膝を分析した.|NCL|が 1.5°以下を許容群,それ他を外れ群とし,全ての術前計測項目を両群間で比較した.さらに外れ群をNCL が正(矯正不足群)と負(過矯正群)の 2 群に分け,同様に術前計測項目を両群間で比較した.

レントゲンでの計測項目は,術前は下肢全長片側立位での Joint line convergence angle(JLCA)と HKA,臥位内反ストレスでの JLCA(内反 JLCA)と臥位外反ストレスでの JLCA(外反 JLCA),膝不安定性として内反 JLCA と外反 JLCA の差(⊿JLCA)の 5 項目とした.また,術後1年の時点での下肢全長片側立位での JLCA と HKA を計測した.これらの計測項目は許容群と外れ群間,外れ群中の矯正不足群と過矯正群間で比較された.

術前計画は下肢全長片側立位レントゲンを用い,作図ソフト OP-A(富士フィルム社,日本)を使用しコンピューター上で FTA 170°を目標に行った(Koshino et al, 1979).
臨床成績評価として術前,術後 1 年での American knee society score の Function score(FS)と Knee score(KS)を測定した.
ナビゲーションシステムは HTO version 2.1 FS101 OrthoPilot system(Aesculap 社,ドイツ)を使用した.

3. 結果
許容群は 46 膝,外れ群は 50 膝で患者背景に差を認めなかった.術中 HKA は-3.8 ±1.8°,術後 HKA は-4.3 ± 2.5°で差を認めた(P=0.033).全患者の|NCL|は 2.0 ± 1.5°だった.測定項目は許容群と外れ群間で,内反 JLCA,外反JCLA,立位 JCLA が高値だった(P=0.0018, P=0.020, P=0.001).ロジスティック回帰分析で立位 JLCA が|NCL|≦ 1.5°の予測因子だった(オッズ比 1.334,95%CI 1.087-1.637,P 値 0.006).

術前 FS,KS は両群間で差がなかった.術後 FS も差がなかったが,術後 KS は許容群が高く(p=0.040),不安定性の項目で差を認めた(p=0.019).

外れ群は,矯正不足群 21 膝,過矯正群 29 膝だった.矯正不足群の⊿JLCA が過矯正群より大きかった(p=0.048).ロジスティック回帰分析では,⊿JLCA がNCL>1.5°で矯正不足となる予測因子だった(オッズ比 0.665,95%CI 0.489-0.903,P 値 0.009).

4. 考察
本研究では,小さい術前立位 JLCA が|NCL|≦1.5°の予測因子であることが分かっ た.ナビゲーション併用 OWHTO でも術中術後の患者姿勢の差による荷重の有無によって術後矯正損失が生じる(Sim et al, 2010).骨性の矯正損失はロッキングプレートと骨切り部への人工骨挿入で生じないと報告されており(Lobenhoffer et al, 2003; Takeuchi et al, 2010),矯正損失はの原因は骨性ではなく軟部組織の緊張度変化と推測された(Kyung et al, 2013).本研究は術前後の JLCA は両群間で差を認めたが,HKA は差を認めなかった.この原因としてHKA は大腿骨や脛骨の湾曲や回旋が影響している可能性があった.そのため,軟部組織の緊張度の指標としてJLCA が正確と考えた.

本研究では立位JLCA,内反JLCA,外反JLCA が大きいほど外れ群だった.外反 JLCAは内側側副靱帯(MCL)に影響され,術中の MCL 浅層剥離により内側軟部組織緊張度が低下すると報告されている(Gaasbeek et al, 2010).内反 JLCA は外側側副靱帯(LCL)
の緩みに影響され,進行した膝関節症ほど外側関節裂隙が大きく LCL が緩んでいると報告されている(Okamoto et al, 2013).JLCA が大きい程,大きなMCL 浅層剥離を要 し,LCL の緩みも大きいことが原因と考えられた.一方で⊿JCLA は差を認めず,FTA 185°以上の進行した変形性膝関節症が対象に含まれないことが原因と思われた.ロディスティック回帰分析では立位 JLCA のみが|NCL|≦1.5°の予測因子だった.これは立位 JLCA が最も|NCL|と相関したためと考えられた.

また,外れ群の⊿JCLA は矯正不足群,過矯正群間で差を認め,大きいほど矯正不足群になった.これはLCL の緩みの関与が疑われた.

本研究の限界として,初めに臨床スコアの測定が術後 1 年でありアライメント以外の要素が関与した可能性がある,次に 3 次元のナビゲーションと 2 次元のレントゲンではアライメントが異なる可能性がある,最後に矯正不足群と過矯正群の比較はパワー分析で症例数が不足しており,⊿JCLA が矯正不足群の予測因子と統計的に結論付けられなかった.

5. 結語
本研究では,大きな立位 JLCA が|NCL|>1.5°の予測因子であった.これを踏まえ OWHTO を施行することで,よりよい術後アライメントと臨床成績が獲得できる可能性が示唆された.

参考文献

Akamatsu Y, Mitsugi N, Mochida Y, Taki N, Kobayashi H, Takeuchi R, Saito T. (2012), “Navigated opening wedge high tibial osteotomy improves intraoperative correction angle compared with conventional method.”, Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc., 20 (3), 586-593. (Epub) doi: 10.1007/s00167-011-1616-8.

Gaasbeek RD, Nicolaas L, Rijnberg WJ, van Loon CJ, van Kampen A. (2010), “Correction accuracy and collateral laxity in open versus closed wedge high tibial osteotomy. A one-year randomised controlled study.”, Int Orthop., 34 (2), 201-207. (Epub) doi: 10.1007/s00264-009-0861-7

Koshino T, Tsuchiya K. (1979), “The effect of high tibial osteotomy on osteoarthritis of the knee: Clinical and histological observations.”, Int Orthop., 3 (1), 37-45 doi: 10.1007/BF00266324.

Kyung BS, Kim JG, Jang KM, Chang M, Moon YW, Ahn JH, Wang JH. (2013), “Are navigation systems accurate enough to predict the correction angle during high tibial osteotomy? Comparison of navigation systems with 3-dimensional computed tomography and standing radiographs.”, Am J Sports Med., 41 (10), 2368-2374. (Epub) doi: 10.1177/0363546513498062

Lobenhoffer P, Agneskirchner JD. (2003), “Improvements in surgical technique of valgus high tibial osteotomy.”, Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc., 11 (3), 132-138. (Epub) doi: 10.1007/s00167-002-0334-7

Okamoto S, Okazaki K, Mitsuyasu H, Matsuda S, Iwamoto Y. (2013), “Lateral soft tissue laxity increases but medial laxity does not contract with varus deformity in total knee arthroplasty.”, Clin Orthop Relat Res., 471 (4), 1334-1342. (Epub) doi: 10.1007/s11999-012-2745-1

Saito T, Kumagai K, Akamatsu Y, Kobayashi H, Kusayama Y. (2014), “Five- to ten-year outcome following medial opening-wedge high tibial osteotomy with rigid plate fixation in combination with an artificial bone substitute.”, Bone Joint J., 96-b (3), 339-344. doi: 10.1302/0301-620x.96b3.32525

Sim JA, Kwak JH, Yang SH, Choi ES, Lee BK. (2010), “Effect of weight-bearing on the alignment after open wedge high tibial osteotomy.”, Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc., 18 (7), 874-878. (Epub) doi: 10.1007/s00167-009-1000-0

Takeuchi R, Bito H, Akamatsu Y, Shiraishi T, Morishita S, Koshino T, Saito T. (2010), “In vitro stability of open wedge high tibial osteotomy with synthetic bone graft.”, Knee., 17 (3), 217-220. (Epub) doi: 10.1016/j.knee.2009.09.002

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