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芳香族アミノ化反応と芳香族アルカロイドの合成研究

小森, 岳 東京大学 DOI:10.15083/0002004184

2022.06.22

概要

【背景・目的】
芳香環上に窒素原子を有する化合物は、多くの医薬・農薬や天然有機化合物が知られており、古くからその構築法の開発は盛んに研究されている。近年では、パラジウム触媒を用いる芳香族アミノ化反応が開発され、穏和な反応条件で進行するため高い官能基共存性が示されている。しかしながら、工業的な経済性の観点から、パラジウムは貴金属であることから、古典的なウルマン芳香族アミノ化反応に代表される銅を用いる芳香族アミノ化反応が見直され、Buchwald1)やMa2)らにより、比較的穏和な条件で進行する触媒的芳香族アミノ化反応が多数報告されている。福山らのグループは、CuI/CsOAcを用いる芳香族アミノ化反応を報告しており3)、分子内反応を活用した天然物の全合成研究だけでなく、分子間でも反応が進行することも報告している4)。

【研究計画】
岡野らの報告では、触媒活性種であるCuOAcを系中で発生させているが、CuOAcは吸湿性であり、空気にも不安定であるため、CuOAcを発生させるために使用するCuI及びCsOAcの量を削減することは容易ではない。そこで、顕谷の報告5)に着想を得て、芳香族アミノ化反応の活性種CuOAcを、反応系中でCu(OAc)2からPhNHNH2還元して生成させることで、触媒量を低減し、穏和な条件で反応が進むのではないかと考え、各種芳香族アミノ化反応を検討することを計画した。

【結果・考察】
ヨードベンゼンとn-ブチルアミンとのアミノ化を検討したところ、Cu(OAc)2(0.4当量)、PhNHNH2(0.2当量)の条件が、最も良い成績を与えた。引き続いて、各種芳香族ヨード化合物とアミンとの反応を行ったところ、岡野らの条件とほぼ同じ結果となった。本反応系では、使用するCu触媒の量を低減させることができたが、一部のアミノ化反応において、収率の低下が見られた。この理由としては、反応系のpHに影響を受けているのではないかと推測している。岡野らの系は、CsOAcが2.5当量と過剰に存在する塩基性条件であるが、本反応系は、Cu(OAc)2の還元で副生するAcOHが存在する弱酸条件であり、塩基性条件では不安定な基質において、本反応系を用いることで穏和にアミノ化が行えるものと考えている。

第2部芳香族アルカロイドの合成研究
【背景・目的】
PlakinidineA,B,Cは、海綿生物Plakortisspongeから、PlakinidineDはDidemnum属のホヤなどから、単離・構造決定がなされたピロロ[2,3,4-kl]アクリジン骨格を有する芳香族アルカロイドである6)。プラキニジン類は、細胞毒性、逆転写酵素阻害作用、駆虫作用等の広範な生物活性を有することから、さらなる生物活性の発見・活性発現機構の解明が期待されている。また、プラキニジン類の構造上の主な特徴として、平面的なピロロアクリジン骨格、および4つのアミノ基を有する非常に電子豊富なB環を有することが挙げられる。特に、ピロロアクリジン骨格は、A環上の1,2位イミン結合がB,C,D環とHückel則を満たす共役系となっていないため、天然物として多く見出されているアクリジン骨格とは異なる特徴を有している。

【逆合成解析】
プラキニジン類の特徴である4つの窒素で置換されたB環上のアミノ基は、合成終盤にカルボン酸5からCurtius転位で導入するものとし、A-E環のうち、B環を開環してキノリン6へと逆合成した。次に、E環に相当する部分はアルデヒド8を足掛かりとしてStetter反応で増炭して7とした後、アルドール反応で6へと導くこととした。アルデヒド8は、9からFriedländerキノリン合成の後、一方のメチル基を選択的に酸化することにより合成することを計画した。

【結果・考察】
Nd触媒を用いたFriedländerキノリン合成の後、位置選択的なセレン酸化により10を得た。10を用いたStetter反応が進行しなかったため、ZnCl2を添加したGrignard反応で増炭した後、アルコールをIBXで酸化してケトン11とした。E環構築に必要なユニットを導入するために、N3CH2CH2CHOとのアルドール反応で12を得た。続いて、オレフィンをオゾン酸化で開裂させた後、分子内付加したラクトールをTEMPO、ジアセトキシヨードベンゼンで酸化して、ラクトン13を得た。アジドをStaudinger反応でアザイリドとし、分子内にあるケトンと縮合することで14とした。イミンの還元では2種類の異性体が生成するが、次工程でのDieckmann縮合が進行するのは15の異性体のみであった。そこで反応条件を検討し、ジクロロメタン中でE環窒素をカーバメートで保護しつつ、NaBH3CNで還元することで、目的とする還元体15を主生成物として得た。

15をt-BuOKで処理したところ、Dieckmann縮合が収率よく進行し、生成したケトエステルをMOM化することで16を得た。A環の構築は、キノリン環を酸化してN-oxideとした後、Polonovski反応を用いてキノリン環上のメチル基にTsOを導入した後、アジド基へと変換して17とした。得られたアジド17を、Pd/Cを用いた水素添加反応を行うことで、還元後に速やかにピロール環化反応が進行し18を得た。18のアクリジン骨格の脱水素反応を種々試みたが、いずれの条件でも反応は進行しなかった。しかしながら、3当量のNBSを用いる条件で、ラクタム19が得られることを見出した。19のラクトンを加水分解すれば、Curtius転位で4つ目の窒素原子をB環に導入することができるが、通常の塩基条件で加水分解しても、抽出・精製の操作中に元のラクトンへと容易に戻ってしまうことが分かった。そこで、酸性条件下でMeOHと作用させることで、ラクトン部位をメチルエーテルおよびメチルエステルとして変換し、ラクトンへの再環化を防いだ。その後、塩基性条件でメチルエステルを加水分解し、DPPAを用いてCurtius転位させることで、4つ目の窒素原子がB環に導入された20を得た。予備的検討ではあるが、CSA存在下DMSO溶媒中で加熱することで、21へと誘導できることが確認できている。これにより、プラキニジンに特徴的な4つの窒素原子で置換されたB環を有する電子豊富なピロロアクリジン骨格の構築に成功した。

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参考文献

1) (a) Kiyomori, A.; Marcoux, J.-F.; Buchwald, S. L. Tetrahedron Lett. 1999, 40, 2657. (b) Klapars, A.; Antilla, J. C.; Huang, X.; Buchwald, S. L. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 7727.

2) (a) Ma, D.; Jiang, J. Tetrahedron: Asymmetry 1998, 9, 1137. (b) Ma, D.; Zhang, Y.; Yao, J.; Wu, S.; Tao, F. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 12459.

3) (a) Yamada, K.; Kubo, T.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Synlett 2002, 231. (b) Yamada, K.; Kurokawa, T.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 6630. (c) Okano, K.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 7136. (d) Okano, K.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Chem. Asian J. 2008, 3, 296. (e) Okano, K.; Mitsuhashi, N.; Tokuyama, H. Chem. Commun. 2010, 46, 2641. (f) Noji, T.; Okano, K.; Fukuyama, T.; Tokuyama, H. Org. Synth. 2011, 88, 388.

4) (a) Okano, K.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2003, 5, 4987. (b) Kubo, T.; Katoh, C.; Yamada, K.; Okano, K.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Tetrahedron 2008, 64, 11230. (c) Okano, K.; Fukuyama, T.; Tokuyama, H. J. Synth. Org. Chem., Jpn. 2010, 68, 1036.

5) (a) Aratani, T.; Yoneyoshi, Y.; Nagase, T. Tetrahedron Lett., 1982, 685. (b) Aratani, T. Pure Appl. Chem. 1985, 57, 1839. (c) Aratani, T. J. Synth. Org. Chem., Jpn. 1985, 43, 1134.

6) (a) Inman, W. D.; O’Neill-Johnson, M.; Crews, P. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 1. (b) West, R. R.; Mayne, C. L.; Ireland, C. M.; Brinen, L. S.; Clardy, J. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 3271. (c) Smith, C. J.; Venables, D. A.; Hopmann, C.; Salomon, C. E.; Jompa, J.; Tahir, A.; Faulkner, D. J.; Ireland, C. M. J. Nat. Prod. 1997, 60, 1048. (d) Ford, P. W.; Davidson, B. S. J. Nat. Prod. 1997, 60, 1051.

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