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Total Synthesis of Talatisamine

鎌倉, 大貴 東京大学 DOI:10.15083/0002004440

2022.06.22

概要

【序】
タラチサミン(1)は、電位依存性カリウムチャネル阻害活性を示すC19ジテルペンアルカロイドである1)。1の構造は極めて複雑であり、高度に縮環した6環性骨格上に、3個の四置換炭素を含む12個の連続する不斉中心を有する。そのため、1の全合成は有機合成化学的に極めて挑戦的な課題である。C19ジテルペンアルカロイドの全合成研究はこれまで盛んに行われてきたが2)、1の全合成は一例のみが報告されている3)。私は、C19ジテルペンアルカロイドの生合成仮説として提唱されている4)、骨格転位反応を応用したタラチサミン(1)の全合成を達成した。

【計画】
1の合成計画をScheme1に示す。本学修士課程において私は、C19ジテルペンアルカロイドの生合成仮説を応用し、骨格転位反応を用いた1の5環性骨格構築を実現した。まず、既知のアザビシクロ化合物25)に対して炭素鎖および芳香環フラグメントの導入を順次行い、3を合成した。その後、フェノールの酸化的脱芳香族化を含む7工程の変換によってオルトキノンモノケタール4を導いた。4の分子内Diels-Alder反応は低収率ながら進行し、鍵中間体である5環性化合物5を得た。5から骨格転位反応を含む3工程の変換を行い、5環性エノン6を合成した。残る課題は、6のより効率的な合成法の確立と、F環の形成である。まず、3の短工程での合成と、Diels Alder反応の改善を行った。5環性エノン6から1の全合成では、8に含まれる第三級アミンの酸化と、続くAza-Prins環化によるF環形成を利用する計画を立てた3)。すなわち、6のエノンγ位に相当するC7位を酸化し、ジケトン7とする。その後C7位ケトンを足掛かりに複雑骨格に含まれるオレフィンの異性化を行った後、酸素官能基の修飾を行うことで、8が得られると考えた。

【結果】
まず、3をより短工程で合成するため、炭素鎖の効率的な導入を検討した(Scheme2)。既知の2環性ケトン2に対して芳香環およびアルキンを含むGrignard試薬Aの付加を行ったところ、9を高収率で与えた。これにより、3の合成に必要な炭素鎖を一挙に導入することができた。続いて9の第三級アルコールをチオカーボネート化し10に変換した後、ラジカル条件下水素化を行い、11を立体選択的に得た。その後11のアルキンを接触水素化により還元し、12とした。12に含まれる2つのメトキシカルボニル基のうち、立体的に空いているC4位メトキシカルボニル基の位置選択的な還元と、生じた第一級アルコール13のメチル化を行った。最後にジアステレオマーの分離を行い、既知の中間体3を誘導した。これにより、先に述べた2から9工程で3を与える合成ルートと比し、3工程の短工程化と、収率改善(11%→20%)を実現した。

次に、鍵中間体5の合成を行った(Scheme3)。まず化合物3に対して、分子内Diels-Alder反応においてジエノフィルとなるオレフィンの導入を含む6工程の変換を行い、フェノール14を合成した。14から誘導したオルトキノンモノケタール4が加熱条件化容易に二量化反応を起こすことが示唆されたため、芳香環上に嵩高く、かつ容易に除去可能なブロモ基を導入することとした。フェノール14をHBrおよびDMSOで処理することで、ブロモフェノール15に誘導した。続いて15の第三級アミンの酸化を防ぐため、塩酸によってアンモニウム塩とした後、メタノール溶媒中PhI(OAc)2を用いてフェノールの酸化的脱芳香族化を行い、オルトキノンモノケタール16に変換した。16をトルエン中130℃で加熱すると、分子内Diels-Alder反応が進行し、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造を有する5環性化合物17が中程度の収率で、立体選択的に得られた。最後に、17のブロモ基をラジカル的に除去することで、既知の中間体5を得た。以上のように、ブロモ化された基質を用いる戦略により、先に述べた14から2工程で5を与える手法と比し、5の収率を大幅に改善(17%→40%)することができた。

続いて、5環性エノン6に含まれるオレフィンを異性化させる際に足掛かりとなる、C7位酸素官能基の導入を行った(Scheme4)。まず6を合成するため、5のケトンをDIBAL-Hによって立体選択的に還元した後、生じたヒドロキシ基をトリフラート化することで、骨格転位反応前駆体18を合成した。DBU存在化、18をDMSO溶媒中120℃で加熱したところ、トリフラートの脱離と共にビシクロ[2.2.2]オクテンの骨格転位反応と酸化が一挙に進行し、1に含まれる7/5/6員環(BCD環)をもつエノン6が高収率で得られた。本反応では、18から生じたカチオン19が溶媒として用いたDMSOによって捕捉され、スルホニウムイリド20からジメチルスルフィドの脱離を経て、6が生じたと考察した。次に6に対してTIPSOTfを用いてシリルジエノールエーテル化した後、酸化剤としてDMDOを作用させたところ、エノンγ位の位置・立体選択的な酸化が進行し、アルコール22が得られた。22のヒドロキシ基に対してSwern酸化を行い、ジケトン7とした。続いて7に含まれる二つのケトンのうち、立体的に空いているC7位ケトンを位置選択的にトシルヒドラゾン化した後、ワンポットでC16位ケトンの化学および立体選択的な1,2-還元を行い、24を得た。次にカテコールボランを用いて24のヒドラゾンを還元した後、酢酸ナトリウム存在化クロロホルム中加熱還流することで、ジアゼン転位を進行させ、26を導いた。本手法により、複雑な5環性骨格に含まれるオレフィンの異性化を実現した。26に対してヒドロキシ基のメチル化、ジメチルアセタールの加水分解および生じたケトンの立体選択的な還元をワンポットで行うことで、8を高収率で得た。最後に酢酸水銀を酸化剤に用いたAza-Prins型の環化反応を行った後、導入されたアセトキシ基をヒドロキシ基に変換することで3)、タラチサミン(1)の全合成を達成した。

【結語】
アザビシクロ化合物2に対してGrignard試薬Aを付加することで、3の合成を短工程化した。さらにブロモ基を導入した16の分子内Diels-Alder反応を行うことで、鍵中間体に設定したビシクロ[2.2.2]オクタン5の収率を改善し、6の合成経路を最適化した。ジアゼン転位を用いることで複雑な5環性骨格に含まれるオレフィンの異性化を実現し、5環性エノン6から既知の中間体8が導けることを見出した。酸化剤として酢酸水銀を用いたAza-Prins反応によるF環形成を行い、タラチサミン(1)の全合成を達成した。本合成により、タラチサミンの複雑な6環性骨格の効率的な構築を実現した。

参考文献

1) Khaimova, M. A.; Palamareva, M. D.; Mollov, N. M.; Krestev, V. P. Tetrahedron 1971, 27, 819.

2) (a) Shi, Y; Wilmot, J. T.; Nordstrøm, J. U.; Tan, D. S.; Gin, D. Y. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 14313. (b) Marth, C. J.; Gallego, G. M.; Lee, J. C.; Lebold, T. P.; Kulyk, S.; Kou, K. G. M.; Qin, J.; Lilien, R.; Sarpong, R. Nature 2015, 528, 493. (c) Nishiyama, Y.; Yokoshima, S.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2016, 18, 2359.

3) Wiesner, K.; Tsai, T. V. R.; Huber, K.; Bolton, S. E. J. Am. Chem. Soc. 1974, 96, 4990.

4) Sultankhodzhaev, M. N.; Nishanov, A. A. Chem. Nat. Compd. 1995, 31, 283.

5) Todoroki, H. Ph. D. Thesis, The University of Tokyo, 2015.

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