Surface Modification Using Nanosecond Pulsed Laser and Annealing Hybrid Method on Zirconia Implants
概要
第1章 序論
ジルコニアセラミックス(以下,ジルコニアと称す.
)は優れた審美性を有しており補綴歯科分野にお
いて注目されている.特に,ジルコニアは化学的安定性が高いため金属アレルギーのリスクがほぼな
く,従来のチタンに変わる材料として歯科インプラント埋入部(フィクスチャ)への応用が進んでい
る.中でも,イットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶(Y-TZP)は,高い生体適合性や透過性,破壊
靭性といった優れた材料特性を有しており,現在のジルコニア歯科インプラントにおいて標準的な材
料である.Y-TZP に加え,高い材料強度と長期安定性を有することから,セリア安定化正方晶ジルコ
ニア多結晶/アルミナナノコンポジット(Ce-TZP/Al2O3)の開発と応用研究が進んでいる.ジルコニア表
面は生体不活性材料であり,表面を機能化しその生体組織との活性能を向上させるため表面を改質す
る必要がある.表面化学組成の制御や生物種と同様のスケール(マイクロおよびナノメートルスケー
ル)での表面テクスチャ制御は,表面の細胞配向や機能化を達成するための手法である.本研究は,
加工精度があり硬脆材料に対し効果的な表面改質技術としてレーザ表面改質に着目した.中でも,ナ
ノ秒パルスレーザ(NPL)は技術的安定性を備えた汎用性の高いレーザシステムであり,生体材料表面
にマイクロおよびナノスケールの形状を導入できる.しかしながら,ジルコニアは熱反応に敏感であ
り NPL による熱影響が引き起こす化学的およびマイクロストラクチャの変化は材料品質の劣化につな
がり得る.NPL 改質後の熱処理は,NPL の熱伝播プロセスにより生じたジルコニアの変質を緩和し,こ
れらの複合処理がジルコニア表面改質として実用的なアプローチとなり得る.ただし,NPL および NPL
と熱処理の複合プロセスにより改質されたジルコニアの生物学的および材料学的知見は充分ではない.
当論文では,NPL および熱処理との複合改質によりされた歯科用ジルコニアの生物学的反応,化学的
性質,および微細構造の変化を調査し,歯科インプラント表面への応用を想定した生体組織との早期
安定性および材料品質の長期安定性を獲得することを目的とする. ...