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書き出し

重層扁平上皮におけるタイトジャンクション関連タンパク(Zonula occludens-1)の分布は上皮ターンオーバー速度に依存する

今福, 恵輔 北海道大学

2022.03.24

概要

Title

Author(s)

Citation

Issue Date

DOI

Doc URL

重層扁平上皮におけるタイトジャンクション関連タンパク(Zonula occludens-1)の分布は上皮ターンオーバー
速度に依存する

今福, 恵輔

北海道大学. 博士(医学) 甲第14934号

2022-03-24

10.14943/doctoral.k14934

http://hdl.handle.net/2115/85879

Type

theses (doctoral)

Note

配架番号:2678

File Information

IMAFUKU_Keisuke.pdf

Instructions for use

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP



位 論



重層扁平上皮におけるタイトジャンクション
関連タンパク (Zonula occludens-1) の分布は
上皮ターンオーバー速度に依存する
(The distributions of zonula occludens-1 in stratified
squamous epithelium depend on the turnover interval)

2022 年 3 月





海 道 大 学

福 恵 輔



位 論 文

重層扁平上皮におけるタイトジャンクション
関連タンパク (Zonula occludens-1) の分布は
上皮ターンオーバー速度に依存する
(The distributions of zonula occludens-1 in stratified
squamous epithelium depend on the turnover interval)

2022 年 3 月





海 道 大 学

福 恵 輔





発表論文目録および学会発表目録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・1 頁
要旨 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 頁
略語表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 頁
諸言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 頁
第一章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 頁
諸言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 頁
方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 頁
結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 頁
考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 頁
第二章 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 頁
諸言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 頁
方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 頁
結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 頁
考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 頁
結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73 頁
謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 頁
利益相反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 頁
引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76 頁

発表論文目録および学会発表目録
本研究の一部は以下の論文に発表した
1. Imafuku K, Kamaguchi M, Natsuga K, Nakamura H, Shimizu H, Iwata H.
Zonula occludens-1 demonstrates a unique appearance in buccal
mucosa over several layers
Cell Tissue Res 384, 691-702, 2021.
本研究の一部は以下の学会に発表した
1. Imafuku K, Iwata H, Natsuga K, Shimizu H:
The distributions of claudin-1 and zonula occludens-1 in oral
mucosa are different from those of skin
The 44th Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative
Dermatology, Nov. 2019, Aomori, Japan

1





【背景と目的】タイトジャンクション (Tight junction: TJ) は上皮細胞
同士を強固に接着する構造である。MDCK-II など単層上皮細胞を用いた研
究が主で、皮膚や口腔粘膜のような重層扁平上皮、特に頬粘膜の TJ 研究は
ほぼない。第一章では頬粘膜の TJ の分布について詳細に解析することを目
的とした。
第二章では第一章で発見した皮膚と粘膜上皮における TJ 分布の違いの機
序について、皮膚のターンオーバー速度に着目した。正常皮膚のターンオ
ーバーは、40-56 日であるのに対し頬粘膜では 3.2-5.8 日と早い。ターン
オーバー期間の異なる皮膚疾患、乾癬(ターンオーバー速度亢進)と扁平
苔癬(同低下)で TJ 分布の変化を検証した。
【材料と方法】第一章: TJ 構成タンパクである claudin, occludin,
zonula occludens (ZO) について網羅的に qPCR (quantitative
polymerase chain reaction) を行った。ヒト正常皮膚、正常頬粘膜におい
てホールマウントサンプル、水平断切片を用いた免疫蛍光法、電子顕微
鏡、超解像顕微鏡を用いて TJ 構成タンパクの観察を行った。またビオチン
透過試験を用いてマウス頬粘膜のバリア機能を評価した。siRNA を用いて
TJ 構成タンパクをノックダウン (KD) し、バリア機能に与える影響を
transepithelial resistance (TER) 測定や paracellular flux
measurement (PFM) で検証した。
第二章: 正常頬粘膜と口腔扁平苔癬 (oral lichen planus, OLP)、正常
皮膚と乾癬組織に対して抗 ZO-1 抗体を用いた免疫蛍光法を行い、画像解析
ソフトで分布を定量化した。各組織の細胞増殖能を Ki-67 陽性率で評価し
た。マウスで細胞増殖能を増減させることで ZO-1 分布の変化を評価した。
扁平苔癬は炎症細胞が基底細胞を標的とするため分裂細胞が減少する。こ
れを模倣すべくマイトマイシン C (mitomycin C: MMC) をマウスに腹腔内
投与した。一方、乾癬を模倣すべくイミキモドクリーム (imiquimod: IQM)
を外用する乾癬モデルを用いて、ZO-1 の分布を評価した。In vitro でも細
胞増殖を促進させ ZO-1 の発現量、バリア機能への影響を検証した。
【結果】第一章: マウス頬粘膜の qPCR では、CLDN1(タンパク名:
claudin-1)、TJP1 (同:ZO-1) が高発現していた。ヒト正常皮膚の ZO-1 は
顆粒層の 1-2 層に限局し、claudin-1 と共局在した。一方、頬粘膜の ZO-1
は粘表層直下の有棘層上部 1/3 まで分布し claudin-1 と中層で複数層にわ
2

たり共局在した。マウス組織でもヒトと同様であった。水平断観察した
ZO-1 の分布は、皮膚では細胞膜の全体に沈着し、顆粒層細胞の形を反映し
て六角形構造を呈したが、頬粘膜では部分的に途切れた線状に観察され
た。Z-stack 画像を立体再構築すると、途切れるように観察された線状の
染色は、上下の層の細胞膜と連続していた。電子顕微鏡で頬粘膜の中層に
kissing point を認めた。また超解像顕微鏡で ZO-1 がドット状に検出さ
れ、claudin-1 と共局在していた。ビオチン透過試験では claudin-1 のみ
局在する下層ではビオチンは細胞間を通過した。一方、ZO-1 の局在する部
分で徐々にトレーサーの拡散は減少した。培養細胞で TER は TJP1 KD で
20.3-21.7%、CLDN1 KD で 23.7-31.0%低下した (それぞれ control に対し p
<0.05)。PFM 測定では、control に対し TJP1 および CLDN1 KD で蛍光強度
の有意差はなかった。
第二章:上皮全体に対する ZO-1 の分布領域は、頬粘膜及び OLP は 23%及
び 50%であった。皮膚及び乾癬では 16%, 31%であった。100 µm 当たりの
Ki-67 陽性細胞数は、頬粘膜 49.9, OLP 12.7 (p<0.001)、乾癬 62.6, 正
常皮膚 11.0 (p<0.001) であった。MMC 投与マウスの頬粘膜の厚さは、ネ
ガティブコントロール (Dimethyl sulfoxide: DMSO) が 61-247 µm である
のに対し、5 mg/kg で 32-98 µm (p=0.006), 10 mg/kg で 25-72 µm
(p<0.001) であった。ZO-1 の分布は上皮全体に対し DMSO で 27%, 10 mg/kg
で 16%であった。IMQ 外用マウス耳を水平断観察すると、vehicle では ZO-1
が細胞膜上に規則的な六角形構造を呈するが、IMQ 外用マウスの ZO-1 は不
規則な多角形が観察された。EGF (epidermal growth factor: EGF) 刺激を
した培養細胞では、細胞増殖速度が促進したが、ZO-1 のβ-tubulin に対す
る相対的発現量は減少した。
【考察】第一章: Claudin は、細胞内タンパクである ZO ファミリーと強固
に結合し TJ ストランドを形成してバリア機能を発揮する。本研究では粘膜
組織の ZO-1, claudin-1 が共局在する領域に TJ が存在すると考えた。
Claudin-1 は皮膚及び頬粘膜でほぼ全層に局在するが、ZO-1 の分布は皮膚
では顆粒層に限局していた。一方、頬粘膜では表層直下の有棘層上部 1/3
の深さまで局在し、claudin-1 と粘膜の中層で複数層にわたり共局在し
た。ZO-1 が細胞膜の全周でなく途切れるように観察されたが、これは zstack 画像の立体再構築により、隣接する細胞の細胞膜へと ZO-1 が連続す
ることが証明できた。これは皮膚と粘膜の ZO-1 のリモデリングの違いと推
察する。ビオチン透過試験や、TJP1 や CLDN1 単独の KD でわずかに TER の
低下を認めているが、PFM では蛍光強度に大きな差はなく TJP1 や CLDN1 は
他のサブタイプが TJ のバリア機能を補完している可能性が考えられた。
3

第二章: マウス実験で MMC の投与により細胞増殖能を減速させ、IMQ の
外用により細胞増殖能が加速することを確認した。免疫蛍光法では頬粘膜
及び乾癬では上皮全層に対して広く ZO-1 が分布したが、皮膚及び OLP では
ZO-1 の分布は限局していた。すなわち MMC 投与で OLP を、IMQ 外用で乾癬
組織の増殖形態を模倣し、個々の疾患における TJ 分布を再現していると判
断した。EGF を用いた細胞増殖実験で、細胞あたりの相対的 ZO-1 の発現が
コントロールに比べ減少した。これは細胞増殖が促進した場合、細胞の全
周に ZO-1 が発現する前に次の層で ZO-1 が発現し始めると考えられ、増殖
の速い乾癬や粘膜の組織の結果を反映する。つまり、TJ のリモデリングに
組織の増殖速度が影響している結果であると推察した。
【結論】頬粘膜においては ZO-1 の分布と免疫蛍光法の像が皮膚とは大きく
異なり粘膜表層直下の有棘層上部 1/3 に不規則な線状構造として存在し
た。ZO-1 の分布の変化は上皮ターンオーバー速度により規定されていた。
一方で、TJ は複数層にわたり形成されバリア機能は保持されていた。

4







本文中及び図表で使用した略語は以下の通りである。

BM
CCD
DAPI
DMEM
DMSO
EGF
FBS
FITC
GAPDH
HE
hTERT
IBMK
IMQ
JAM
MAL
MARVEL
MDCKII
OLP
PBS
PMA
SDS
SIM
TER
TJ
ZO

Buccal mucosa
Charge coupled device
4’, 6-diamidino-2-phenylindole
Dulbecco's modified eagle medium
Dimethyl sulfoxide
Epidermal growth factor
Fetal bovine serum
Fluorescein isothiocyanate
Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase
Hematoxylin & eosin
Human telomerase reverse transcriptase
Immortalized buccal mucosal keratinocyte
Imiquimod
Junctional adhesion molecule
Myelin and lymphocyte
MAL and related proteins for vesicle traffic and
membrane link
Madin-Darby canine kidney II
Oral lichen planus
Phosphate-buffered saline
Phorbol myristate acetate
Sodium dodecyl sulfate
Structured illumination microscopy
Trans epithelial measurement
Tight junction
Zonula occludens

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細胞間接着や細胞極性の分子機構ないし細胞膜タンパク、細胞骨格、シグナ
ル伝達系はこれまで盛んに研究されてきた分野である。多細胞生物は上皮細胞
や内皮細胞に取り囲まれることにより、自己を内と外を区別する。また細胞間
を通過する物質の制御という観点から、細胞間の接着機構は本質的に重要なも
のとされてきた。脊椎動物においては接着結合、密着結合 (Tight junction:
TJ)、ギャップ結合、デスモソームという4つの上皮結合様式が知られてい
る。TJ は非カドヘリン依存性の細胞接着装置であり、上皮のバリア機能におい
て重要な役割を担っている (Natsuga, 2014)。皮膚バリア機能は、外-内
(Out-In) バリアを担う角層と、内-外 (In-Out) バリアを担う TJ に大別され
る。In-Out バリアの TJ は、細胞間の水やイオンの体外への拡散を制御してい
る (Schneeberger and Lynch, 2004)。
TJ の破綻は様々な疾患群において知られており、例えば、悪性腫瘍の浸潤
(Okegawa et al., 2004)、遠隔転移 (Bendas and Borsig, 2012)、心血管系疾
患 (Jang et al., 1994)、炎症性腸疾患 (Jones et al., 1995) などがある。
他にも Clostridium perfringens が産生する毒素が TJ の破綻を招き (Sonoda
et al., 1999)、これが Crohn 病を引き起こしている可能性が示唆されている
(Banaszkiewicz et al., 2014)。
TJ を構成する分子は多岐にわたり、40 以上のタンパクが同定されている
(Anderson and Van Itallie, 2009)。これまで多く研究されているものとし
て、細胞膜タンパクである occludin (Furuse et al., 1993), tricellulin
(Ikenouchi et al., 2005), angulin (Higashi et al., 2013), JAM ファミリ
ー (Bazzoni, 2003)、TJ ストランドを形成する主要分子である claudin ファミ
リー (Furuse et al., 1998)、また、細胞内の足場タンパク Zonula occludens
(ZO) ファミリー (González-Mariscal et al., 2000; Stevenson et al.,
1986) が知られている (図 1)。Claudin ファミリーは臓器ごとに異なるサブタ
イプが発現するが、claudin-1 については肝臓、肺胞、表皮、腸管、前立腺な
ど様々な組織での発現がみられる (Gunzel and Yu, 2013)。
Claudin による TJ ストランドのバリア機能は、同サブタイプ同士での結合で
強化され (Simon et al., 1999)、ZO ファミリーは claudin のような膜貫通タ
ンパクを細胞骨格に固定する足場タンパクとして重要な機能を果たしている
(Itoh et al., 1997) (図 1)。つまり、claudin ファミリーによる TJ のバリア
機能の形成は ZO ファミリ―との相互作用によって調整されている (Umeda et
al., 2006)。
6

今日まで TJ に関する研究は多岐にわたるが、その多くが近位尿細管由来で
ある MDCK-II 細胞 (Beutel et al., 2019; Furuse et al., 1999) や大腸がん
由来である CaCo-2 細胞 (Suzuki, 2013) などの単層上皮を用いたものが多く
を占めている。生体内で単層上皮は胸膜、血管内皮、尿細管、消化管、卵管、
子宮などの多くの組織に分布しており、さらに単層上皮は重層化させる必要が
なく培養条件がシンプルであるため、細胞接着能のみに焦点を当てるのであれ
ば、単層上皮の TJ を評価することは理にかなっている。これらのような理由
から単層上皮を用いた研究が主であった。一方で重層扁平上皮は生体内で皮膚
や口腔粘膜、食道、肛門、膣など、外的刺激を受ける組織に分布している。皮
膚では角層、口腔では唾液など、バリア機能の代わりとなりえる構造を有して
いる。重層扁平上皮のモデルを作製する場合、三次元培養技術が必要である。
すでに三次元培養皮膚の研究も盛んに行われているが、角層や TJ を忠実に再
現できるモデルはほとんどない。
本研究では、まず組織の TJ 観察に始まり、培養細胞実験への将来的な展
開・応用へとつなげる研究を目指す。特に、重層扁平上皮の中で粘膜の TJ は
組織観察の研究すらほとんどされていないのが現状であるため、重層扁平上皮
の解析については通常のヒトサンプルだけでなく乾癬の疾患モデルマウスの一
つであるイミキモドクリーム外用マウスなどを用いて、免疫蛍光法や、ホール
マウント免疫蛍光法による分布の評価、ビオチントレーサーを用いたバリア機
能評価、さらには電子顕微鏡や超解像顕微鏡を用いた詳細な観察を行う。重層
扁平上皮における TJ について詳細に解析することで、皮膚や粘膜疾患の病態
解明や創薬の足掛かりとすることを目的とする。

7

図 1 TJ の模式図
Occludin (緑), claudin (赤) はそれぞれ 4 回細胞膜を貫通し、C 末端側の
細胞質内で ZO-1 (灰色) と結合する。ZO-1 は細胞質内で F-actin (紫) と結合
する。JAM は 1 回膜貫通タンパクで ZO-1 とも細胞質内で結合している。

8







頬粘膜の ZO-1 は上皮内複数層に連続性に局在する。

9





皮膚は角層、顆粒層、有棘層、基底層で構成され、外気にさらされている。
TJ は多くの哺乳類皮膚において存在することが知られている (Brandner et
al., 2002)。例えばマウス耳皮膚においては顆粒層の第二層に限局して TJ が
存在している (Yokouchi et al., 2016) (図 2)。一方、口腔粘膜も重層扁平上
皮であるが、皮膚と異なり、外気ではなく粘液にさらされており、組織学的に
咀嚼粘膜、被覆粘膜、特殊粘膜という 3 つのカテゴリーに分類される。咀嚼粘
膜は角層を有し組織学的に皮膚と類似しており、舌・硬口蓋・歯肉などでみら
れる。被覆粘膜は角層を有さず、頬・唇・肺胞などでみられる。特殊粘膜は舌
乳頭上の味蕾が神経終末と共局在している。角層を有さない頬粘膜は、基底層
及び有棘層は皮膚と共通しているが、顆粒層に対応するものが中間層、角層に
対応するものを表層と表現する (Ten Cate and Nanci, 2008)。口腔粘膜にお
ける TJ の分布、構造、機能の研究はごく少数であり、それらはヒト食道、ウ
シ歯肉、ウシ舌 (Langbein et al., 2002) のような前述の角化粘膜を解析し
ているものが多い (Shi et al., 2018)。一方で頬粘膜のような非角化粘膜に
関する研究は化学療法患者における TJ の破綻が示唆された報告があるが
(Wardill et al., 2016)、正常組織に対する詳細な研究はない。本研究ではま
ず、ヒト及びマウスの頬粘膜を用いて、免疫蛍光法や電子顕微鏡などを用いて
詳細に TJ 関連タンパクを観察することを目的とした。

図 2 皮膚における TJ の分布
皮膚は角層 (Stratum corneum: SC)、顆粒層 (Stratum granulosum: SG)、
有棘層 (Stratum spinosum: SS)、基底層 (Stratum basale: SB)に分かれてお
り、TJ は顆粒層の 2 層目 (SG2) の SG1 側に限局して存在する。
10





【実験動物】
本研究の動物実験は北海道大学大学院医学研究院の機関審査委員会の承認を
得て、北海道大学動物実験に関する規定に従って行った (#15-0166, #190164)。C57Bl/6 マウスは Clea (東京、日本) から購入した。マウスは生後 6-8
週齢のものを使用した。マウスに対する麻酔は PBS (Phosphate-buffered
saline): 2.9 mL/kg, 塩酸メデトミジン: 0.3 mg/kg (共立ファーマ、東京、
日本)、ミダゾラム: 4 mg/kg (アステラス製薬、東京、日本)、ブトルファノ
ール酒石酸塩: 5 mg/kg (Meiji Seika ファルマ、東京、日本) を混合して調製
し、うち 100 µL をマウス腹腔内投与した。また麻酔拮抗薬として、PBS: 4.4
µL/kg、アチパメゾール塩酸塩: 3.0 mg/kg (共立ファーマ) を混合して調製
し、100 µL を腹腔内投与した。 ...

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