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書き出し

ヒト下歯槽神経の神経周膜細胞間接着複合体におけるJCADとEGFRの発現

平岡, 佑二郎 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Expression of JCAD and EGFR in Perineurial
Cell-Cell Junctions of Human Inferior Alveolar
Nerve

平岡, 佑二郎
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8724号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485908
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Expression of JCAD and EGFR in Perineurial Cell-Cell Junctions
of Human Inferior Alveolar Nerve
ヒト下歯槽神経の神経周膜細胞間接着複合体における JCAD と EGFR の発現

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
口腔外科学
(指導教員:明石 昌也
教授)
平岡 佑二郎

【緒言】口腔外科領域では智歯抜歯や顎矯正手術などの手術で、まれではあるが術
後に神経系合併症が生じる。症状は様々であるが顔面皮膚の知覚鈍麻を生じること
が多く治療に難渋することも少なくない。顎骨壊死に伴う神経障害性疼痛は激しい
痛みを生じ長期間にわたり患者の QOL に影響を及ぼす。現在、末梢神経の損傷に対
する治療はビタミン製剤の投与や種々の神経ブロック等が行われるが、より効果的
な治療法の開発が望まれる。末梢神経障害の治療においては、損傷した部位への薬
剤の運搬、神経周囲の環境の調整が必要であり、それらを調整する一つとして
Blood-nerve-barrier(BNB)の存在が指摘されている。BNB は神経内微小血管と神経
周膜により構成されており、神経線維束内の内圧の調節や線維束内外の分子の移動
を調整し、恒常性の維持に働く。神経周膜は 3 つの層に分けられ内層は細胞間接着
が密で、中および外層は神経周膜と神経上膜の移行部である。内層の細胞間接着は
Claudin や ZO-1 により構成されており、神経損傷や再生等の病態生理学的状況によ
り透過性を調節するとされるが、その機能に関する理解はいまだ不十分である。
過去に神経周膜に Epidermal growth factor receptor(EGFR)が発現していると報
告されており、近年有意差はなかったものの EGFR 阻害薬が神経障害性疼痛を大幅
に軽減するという報告もある。Junctional cadherin 5 associated(JCAD, previously
known as KIAA1462)は内皮細胞の細胞間接着を構成する分子として知られ、心血管
疾患との関連が報告されてきたが、これまで神経周膜における JCAD の発現や機能
については報告されていない。本研究では、培養ヒト神経周膜細胞およびヒト下歯
槽神経・神経周膜における EGFR と JCAD の発現を確認、EGFR 阻害薬(AG1478)
の培養細胞に対する効果を細胞形態および細胞接着に注目し検討し、EGFR および
JCAD の神経周膜における機能について考察した。
【対象と方法】2015 年から 2022 年に神戸大学医学部附属病院で下顎骨区域切除を
実施した 14 症例を無作為に抽出し、病理学的に下歯槽神経に腫瘍の浸潤を認める症
例は除外した。年齢、性別、原疾患、併存疾患、放射線治療・化学療法の有無、術
前の神経症状の有無について調査した。切除顎骨検体をホルマリン固定後にパラフ
ィン包埋し切片を作成、HE 染色を行い神経線維束の数、直径、面積を ImageJ によ
り計測した。ヒト神経周膜細胞(HPNCs, 1710)を Poly-L-Lysin コーティングを行っ
た培養皿上で培養し、初代培養から 2~10 継代の細胞を使用した。AG1478 は 2、
5、10μM の濃度で添加し 24 時間培養後に固定、観察した。免疫染色は Claudin-1
抗体、EGFR 抗体、JCAD 抗体を用い DAB 染色で発現の強度を評価した。EGFR
阻害薬添加による培養細胞の変化に関する評価では、細胞数をランダムに撮影した 5
画像(×20 倍)について DAPI 陽性細胞数をカウントし、細胞形態の変化はランダム
に撮影した×40 倍の 5 画像から細胞 5 つについて概形を手動でトレースし計測し
た。細胞の短長径比を cell-elongation degree と定義し測定した。JCAD-positive
cell-cell contacts は細胞の概形の全長と JCAD 陽性の細胞間接着部位の比を計測し

た。各実験は 4 回独立して実施、統計には R software を使用、Tukey の多重比較検
定を行い p 値は 0.05 以下を有意とした。
【結果】ヒト下歯槽神経 14 例における JCAD と EGFR の発現を調べた所、下歯槽
神経断面の中央値は 2.52mm²(1.79-4.39mm²)、神経線維束数の中央値は 12(3-23)、
Claudin-1 の発現強度は全ての患者で中等度から強で、EGFR の発現は様々であっ
た。JCAD の発現は微小血管において全例で中等度以上であったが、神経周膜では
EGFR 同様に様々であった。蛍光二重免疫組織化学染色では Claudin-1 と EGFR、
Claudin-1 と JCAD が部分的に共発現することが観察された。神経周膜培養細胞で
も接着間接着部位に点状の JCAD 陽性部位を認め、ウエスタンブロッティングでも
JCAD と EGFR の発現を確認した。神経周膜培養細胞は通常の培養下では線維芽細
胞様の紡錘形であったが、AG1478 添加により上皮細胞様の敷石状形態に変化し
た。細胞数および細胞の面積には変化を認めなかったが、cell-elongation degree は
濃度依存的に低下した。またコントロール群では JCAD の点状の接着斑が見られた
が、AG1478 添加群では長い帯状の接着斑が観察された。細胞外周の全長に対する
JCAD 陽性接着領域が占める割合を計測したところコントロールでは 12.9%であっ
たのに対し、AG1478-10μM 群では 29.2%と増加していた。
【考察】神経周膜は神経のバリア機構において重要な役割を果たしているとされる
が、その詳細は知られていない。JCAD は血管内皮細胞の細胞間接着構成因子であ
り神経内微小血管に強く発現しており、ヒト下顎骨の下歯槽神経周膜にも発現して
いた。培養ヒト神経周膜細胞においても JCAD と EGFR の発現を確認し、EGFR 阻
害薬により細胞形態および細胞間接着に変化が生じることを示した。JCAD の血管
内皮細胞における機能は徐々に解明されつつあるが、神経周膜における機能は不明
である。神経内微小血管は血液と直接連絡しており、BNB を構成すると考えられて
いる。また神経周膜は、神経上膜から間質液の受動的拡散を制限している。本研究
で JCAD 神経内微小血管における発現がほとんどの症例において神経周膜よりも高
いことが明らかになり、このような神経内微小血管と神経周膜における JCAD の発
現の違いは、それぞれの組織における JCAD の機能の違いを反映していると考えら
れる。In vitro では EGFR 阻害により神経周膜細胞の形態変化が観察され JCAD 陽
性細胞間接着領域が増加した。これらの効果が神経内微小血管および神経周膜によ
り構成される BNB の調整に働き、血性成分の排除やマクロファージや免疫細胞の浸
潤が調節されることにより神経障害性疼痛の緩和に働いている可能性がある。
本研究では、ヒト下歯槽神経・神経周膜において JCAD および EGFR が発現して
おり、JCAD は神経内微小血管において強い発現を認めることが示された。培養ヒト
神経周膜細胞においても JCAD の発現を確認し、加えて EGFR 阻害薬の添加により
細胞形態が変化し JCAD 陽性細胞間接着が増加することが示された。

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)

論 文 霙 査 の 糸吉身乏 Q>竺巨 乍舌


3
3
1
3号







受 付 番号

平 岡 佑二郎

論文題目

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ヒ ト下歯槽神経の神経周膜細胞 間接着複合体における
JCADと EGFRの発現

主 査
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審査委員

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尋砕汽 人

渭潤知司

む牙汀笈マ

(要旨は 1,000字∼ 2
, 000字程度)


緒言 】口腔外科領域では智歯抜歯や顎矯正手術などの手術で術後 に神経系合併症が生じ
る。症状 は様々であるが顔面皮陪の知覚鈍麻 を生じることが多く治療に難渋することも少
なくない。顎骨壊死に伴う 神経障害性疼痛は激 しい痛みを生じ長期間にわたり患者の QOL
に影響を及ぼし、より効果的な治療法の開発が望まれる。末梢神経 障害の治療には、損傷
した部位への薬剤の運搬、神経周囲 の環境の調整が必要で あり、それらを調整する一つと
して Bl
o
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-n~rve-barrier(BNB) の存在が指摘されて いる。 BNB は神 経 内微小血 管と 神 経
周膜により構成されており、神経線維束内の内圧の調節や線維束内外の分子の移動を調整
し、恒常性の維持に働く。神経周膜の細胞間接着は Cl
a
ud
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nや Z0-1により構成されてお

、 神経損傷や再生等の病態生理学的状況 により透過性 を調節するとされるが、その機能
に関する埋解は いまだ不十分である。
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or(EGFR)が発現し ている と報告 され
過去に神経周膜に Ep
ており、近年 EGFR 阻害薬が神経障害性疼痛を軽減するという報告もある。J
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sKIAA1462)は内皮細胞 の細胞間接着
cadher
構成分子だが神経周膜におけるJCADの発現や機能については報告されていない。本研究
では、培養ヒト神経周膜細胞およびヒト下歯槽神経の神経周膜における EGFRと JCADの
発現を確認、 EGFR阻害薬 (AG1478)の培養細胞 に対する効果を細胞形態および細胞接着に
注目し検討し、 EGFRお よ び JCADの神経周膜における機能について考察 した。

対象と方法 】2015年か ら 2022年に神戸大学医学部附属病院で下顎骨区域切除を実施 し
た症例を無作為に抽出し、病理学的に下歯槽神経に腫瘍の浸潤を認める症例は除外した。
年齢、性別、原疾患、 併存疾患、放射線治療 ・化学療法の有無、術前の神経症状の有無に

g
e
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つい て調査した。切除顎骨検体に HE染色を行 い神経線維束の数、直径、面積を Ima
により計測 した。ヒト 神経周膜細胞 (HPNCs,1
7
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)は初代培養から 2 10継代 の細胞を使

011M添加 し 24時間培養後に固定、観察した。免疫染色は
用した。 AG1478は 2、5、 1
Cl
a
ud
i
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1 抗体
、 EGFR抗体、JCAD 抗体を用い DAB染色で発現の強度を評価した。
AG1478添加による培養細胞の変化に 関する評価 では、細胞数をランダムに撮影した 5画
像(
X20倍)に つい て DAPI陽性細胞数をカウントし、細胞形態の変化はラ ンダムに 撮影し
た X40倍の 5画像から細胞 5つについて概形をトレ ースし計測し た。細胞の短長径比 を

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の全長と JCAD陽性の細胞間接着部位の 比を計測 した。各実験は 4回独立して実施、統計

o
f
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wareを使用、罪ke
yの多重比較検定を行いp値は 0.
05以下 を有意とした。
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【結果】症例は 1
4例で下歯槽神経断面の中央値は 2.52mm冗1.79-4.39mm2
)
、神経線維束
数の中央値は 1
2
(
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2
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)、Claud
i
n
1の発現強度は全ての患者において中等度以上で、 EGFR
の発現は様々であった。JCADの発現は微小血管において全例で発現していたが、神経周

i
n
1と EGFR、
膜では EGFR同様に様々であった。蛍光二重免疫組織化学染色では Claud
Claud
i
n
1と JCADが部分的に共発現することが観察された。神経周膜培養細胞でも接着
CAD 陽性部位を認め、ウエスタンブロッティングでもJCAD と
間接着部位に点状のJ
EGFRの発現を確認した。神経周膜培養細胞は通常の培養下では線維芽細胞様の紡錘形で
478添加により 上皮細胞様の敷石状形態に変化した。細胞数および細胞の
あったが、 AG1
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eは濃度依存的に低下した。またコ
面積には変化を認めなかったが、 c
ントロール群ではJCADの点状の接着斑が見られたが、 AG1
478添加群では長い帯状の接
着が観察された。JCAD陽性接着領域の割合はコントロールでは 1
2
.
9%であったのに対し、

AG147810J
J
,M 群では 2
9
.
2%と増加していた。

考察 】神経周膜は神経のバリア機構において重要な役割を果たしているとされるが、そ
の詳細は知られていない。JCADは血管内皮細胞の細胞間接着構成因子であり神経内微小
血管に強く発現しており 、ヒト下歯槽神経の神経周膜にも発現していた。培養 ヒト神経周
膜 細 胞 で も JCADと EGFRの発現を確認し、 EGFR阻害薬により細胞形態および細胞間
接着に変化が生じることを示した。JCADの血管内皮細胞における機能は徐々に解明され
つつあるが、神経周膜における機能は不明である。本研究でJCAD神経内微小血管におけ
る発現がほとんどの症例において神経周膜よりも高いことが明らかになり、神経内微小血
管と 神経周膜におけるJCADの発現の違いは、それぞれの組織におけるJCADの機能の違
いを反映していると考えられる。 I
nvi
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r
oでは EGFR阻害により神経周膜細胞の形態変化
が 観 察 さ れ JCAD陽性細胞間接着領域が増加した。これらの効果が神経内微小血管および
神経周膜により構成され る BNBの調整 に働き、血性成分の排除やマクロファージや免疫
細胞の浸潤が調節されることにより 神経障害性疼痛の緩和に働 いている 可能性があ る。本
研究では、ヒト下歯槽神経の神経周膜においてJCADおよび EGFRが発現しており、JCAD
は神経内微小血管において強い発現を認めることが示された。培蓑ヒト神経周膜細胞にお
い て も JCADの発現を確認し 、
加えて EGFR阻害薬の添加によ り細胞形態が変化しJCAD
陽性細胞間接着が増加することが示された。
本研究はヒト下歯槽神経の神経周膜および培蓑ヒト神経周膜細胞について、その EGFR
および JCADの発現を研究したも のであるが、従来ほとんど行われなかった EGFR阻害
薬の神経周膜細胞におよぼす影響について重要な 知見 を得たものとして価値ある集積であ
ると認める 。よって、本研究者は博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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