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大学・研究所にある論文を検索できる 「自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学解析による医薬品開発における投与量最適化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学解析による医薬品開発における投与量最適化に関する研究

荒木, 光 ARAKI, Hikari アラキ, ヒカリ 九州大学

2021.09.24

概要

医薬品開発において,曝露と反応(有効性もしくは安全性)の関係を把握することは,効率的な用法・用量の設定及び試験デザインの立案において有用である.曝露と反応の関係を解析する手法の 1 つに母集団薬物動態・薬力学解析がある.母集団薬物動態・薬力学解析は,臨床で得られた薬物動態指標及び薬力学指標を対象として薬物動態及び薬力学の平均的なパラメータ値とその変動,影響を与える複数の要因の影響を同時に解析することを可能にする.母集団薬物動態・薬力学解析は,今日の医薬品開発において曝露と反応を数理モデル化する上で,また予測する上で有用な手法として普及している.今後は基礎的な母集団薬物動態・薬力学解析に止まらず,医薬品の特性も考慮したより生理学的な解析を導入することが望まれているが,医薬品の特性を組み込んだ母集団薬物動態・薬力学解析についてはその構築過程の複雑さから医薬品開発において導入が進んでいないのが現状である.医薬品における特性の 1 つとして,医薬品が自身の代謝酵素を誘導する自己誘導がある.自己誘導能を有する医薬品においては,投与継続に伴ってクリアランスが経時的に増大し,さらにそのクリアランスの増大に伴ってその医薬品の曝露が経時的に減少するために,標的とする曝露及び反応を達成することが困難になる.この問題を解決する試みとして,自己誘導過程を組み込んだ母集団薬物動態解析によるアプローチが提唱されていたものの,その適用事例は限られており,その有用性を検証するにはさらなる事例報告が必要であると考えられた.さらに,過去の事例報告は自己誘導過程を組み込んだ母集団薬物動態解析のみに止まっており,反応を考慮した自己誘導母集団薬物動態・薬力学解析や,その医薬品開発への適用事例は現在までに報告されていなかった.

本研究は「自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学解析による医薬品開発における投与量最適化に関する研究」と題して, 自己誘導能を有することが報告されている化合物 TAS-114 を題材として,自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態解析の臨床曝露推定における有用性及び自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学解析の医薬品開発の投与量選択における有用性を評価することを目的とした.

第 1 章では,非臨床試験及び臨床試験から自己誘導能を有することが報告された TAS-114 を解析対象として,TAS-114 の自己誘導を仮定した母集団薬物動態解析を実施した.本解析ではTAS-114 による代謝酵素相対発現量の変動を enzyme turnover model で表現し,TAS-114 の母集団薬物動態モデルに導入した.TAS-114 による酵素誘導を表す上で,中心コンパートメントの血漿中 TAS-114 濃度と酵素生成速度定数の関係は Emax モデルで,代謝酵素相対発現量とクリアランスの関係は linear モデルで表現した.さらに,本モデルを用いた曝露推定値と臨床での観測値との比較を通して,本解析手法の臨床曝露推定における有用性を示した.

第 2 章では,TAS-114 の dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)阻害を表現する薬力学モデルを第 1 章で構築したモデルに導入することで,自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学モデルを構築した(Figure. 1).TAS-114 による DPD 阻害のマーカーには,その内因性基質である uracil の血漿中濃度を用いた.TAS-114 による uracil 代謝阻害を indirect response model で表現し,中心コンパートメントの血漿中 TAS-114 濃度と消失速度定数の関係は Imax モデルで表現した.さらに,TAS-114 と capecitabine の併用 phase 1 試験で安全性の観点から決定されていた次相の投与量について,構築したモデルを用いて TAS-114 の曝露及び uracil 代謝阻害の観点から考察し,その投与量の妥当性を示した.本章の解析を通して, 医薬品開発の投与量選択における自己誘導モデルを導入した母集団薬物動態・薬力学解析の有用性を示すことが出来たと考える.

本研究で示した解析手法が自己誘導能を有する他の医薬品においても適用されることで,その開発効率化に貢献することを期待する.

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