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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dent disease-1とDent disease-2の臨床遺伝学的差異に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dent disease-1とDent disease-2の臨床遺伝学的差異に関する検討

Sakakibara, Nana 神戸大学

2020.09.25

概要

【背景】
Dent 病は低分子蛋白尿、高 Ca 尿症、腎石灰化、腎結石などを特徴とする X 連鎖型の遺伝性腎疾患である。Dent 病は原因遺伝子から二つのタイプに分けられ、約 60%が CLCN5 遺伝子異常による Dent disease-1 (OMIM #300009)であり、約 15%が OCRL 遺伝子異常による Dent disease- 2 (OMIM #300555)である。しかし通常 Dent 病は腎外症状に乏しいため、遺伝子検査なしに両者を鑑別することは難しいとされている。

Dent disease-1 の原因遺伝子である CLCN5 は、X 染色体のXp11.22 に位置し、chloride channelである ClC-5 をコードする遺伝子であり、主に近位尿細管の early endosome に発現している。一方、Dent disease-2 の原因遺伝子である OCRL は、X 染色体の Xq25 に位置し、イノシトールリン脂質の脱リン酸化酵素である OCRL 蛋白をコードしている。近位尿細管のみならず脳を含めた全身に発現しており、イノシトールリン脂質の調節により様々な細胞機能に関与するとされる。

OCRL はもともと Fanconi 症候群、先天性白内障、筋力低下、精神運動発達遅滞を特徴とする Lowe 症候群の原因遺伝子として発見されたが、後に Dent 病の一部は OCRL の異常により発症することが明らかになった。Dent disease-2 と Lowe 症候群は同じ遺伝子異常を持つにも関わらず、両者の臨床症状は大きく異なっているが、Dent disease-2 の一部において、軽度の白内障や筋原性酵素の上昇などを認めることから、Dent disease-2 は Lowe 症候群の軽症表現型であるとする報告もみられる。

こういった背景から、Dent disease-1 と Dent disease-2 では異なった臨床像を示す可能性があると考えられたため、その違いを明らかにすべく、両者の臨床像について比較検討を行った。

【方法】
2014 年以降、当院で実施した遺伝子解析により、Dent 病と診断された男性例 (Dent disease-1:72 例 64 家系、Dent disease-2:13 例 10 家系)を対象とした。これらの患者について、遺伝子解析依頼時に検査依頼医師が作成した調査票から、臨床症状や検査値のデータを収集し、両者の臨床像の違いについて検討した。

【結果】
遺伝子解析依頼時の年齢は Dent disease-2 で有意に低かった (中央値: 5.0 vs 3.0 歳, p=0.03)。身長の SD 値は Dent disease-2 で有意に低かった (中央値: -0.2 vs -2.2 SD, p<0.01)。精神発達の異常の有無に差はなかった (7% vs 23%, p=0.11)。Cr-eGFR は Dent disease-2 で有意に低く (中央値 : 127 vs 84 ml/min/1.73m2 ,p<0.01) 、 慢性腎臓病( CKD ) Stage2 以上 (Cr-eGFR<90ml/min/1.73m2) へ進行している患者の割合も有意に高かった (8% vs 58%, p<0.01)。筋原性酵素はDent disease-2 で有意に高く、以下の検査項目で有意差を認めた;AST (中央値: 33 vs 50 IU/L, p<0.01)、ALT (中央値: 16 vs 20 IU/L, p=0.03)、LDH (中央値: 267 vs 367 IU/L, p<0.01)、CK (中央値: 154 vs 286 IU/L, p<0.01)。代謝性アシドーシスを認めた症例はなかった。血清ナトリウム、カルシウム値に有意な差を認めなかったが、血清カリウム、リンおよび尿酸値は Dent disease-2 で以下のように有意に高かった;血清ナトリウム (中央値: 139 vs 138 mEq/L, p=0.61)、血清カリウム (中央値: 4.0 vs 4.2 mEq/L, p=0.02)、血清カルシウム (中央値: 9.7 vs 9.8 mEq/L, p=0.95)、血清リン (中央値: 4.7 vs 5.3 mg/dL, p=0.01)、血清尿酸 (中央値: 3.6 vs 4.0 mg/dL, p=0.02)。また尿蛋白 Cr 比(中央値: 1.6 vs 3.5 g/gCr, p=0.01)、尿中 Ca/Cr(中央値: 0.25 vs 0.69, p=0.01)は Dent disease-2 で有意に高かったが、尿中β2-microgloblin (中央値: 64,900 vs 102,300 µg/mL, p=0.17)では有意差を認めなかった。腎石灰化を有する頻度( 22% vs 0%, p=0.11)には差を認めなかった。

【考察】
Dent 病は一般に腎外症状に乏しいため、Dent disease-1 と Dent disease-2 を臨床症状から鑑別することは困難であるとされてきたが、今回の検討において、これら 2 疾患の臨床像に差を認めた。過去の報告でも、Dent disease-2 で有意に低身長であること、尿中 Ca 排泄が多いこと、 AST、ALT、CK、LDH といった筋原性酵素が高いことなどが指摘されており、われわれの検討においても同様の所見を認めたが、新たな知見も明らかとなった。

Dent disease-1 と Dent disease-2 の腎機能障害の程度について、過去の報告において有意差は認められておらず、最近のフランスの大規模コホートでも、Dent disease-1 と Dent disease-2 で GFR の低下速度に差はないとされていたが、今回の検討においては Dent disease-2 で有意にCr- eGFR が低く、また比較的低年齢児においても、Dent disease-2 では CKD stage2 への進行を認めることが明らかとなった。

また今回の検討例の中に、Lowe 症候群の主要症状である Fanconi 症状を認めた症例はなく、代謝性アシドーシスも認めなかったが、血清カリウム、リンおよび尿酸値はDent disease-1 で有意に低く、Fanconi 症候群に近い病態を呈しやすいことが示された。

この研究の限界として、いくつかの点があげられる。まずデータの収集は調査票に基づいており、腎石灰化の有無や精神運動発達の異常の有無については、検査依頼医師の判断により行われた。そのため、精神運動発達の評価には本来 IQ などの指標が用いられるべきであるが、今回はそういった客観的指標による評価はできなかった。またわれわれの経験上、白内障を認めない患者では、多くの場合 Fanconi 症状や重度の精神運動発達遅滞を認めないことから、今回の検討では、白内障を認めた場合は、その他の腎外症状を認めなかったとしても、Lowe 症候群と定義して検討から除外したが、実際には Dent disease-2 とLowe 症候群の線引きは明確でないという点も問題となるだろう。

【結論】
単一施設の解析において、腎機能を含め、Dent disease-1 と Dent disease-2 の 2 疾患においては、臨床像からその間別は困難とされてきたが、実際は様々な臨床像や検査値の違いを認めることが示された。

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