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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性腎臓病患者におけるホール/インタクト副甲状腺ホルモン比とその臨床的意義」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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慢性腎臓病患者におけるホール/インタクト副甲状腺ホルモン比とその臨床的意義

Okamoto, Kohei 神戸大学

2021.03.25

概要

背景:慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)患者では骨・ミネラル代謝異常が生じ,血清副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)値が上昇することが知られている.骨・ミネラル代謝異常は心血管系合併症や死亡率に強く関係しており,日本透析医学会やKDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)のガイドラインでは PTH の管理目標値が設定されている.PTH は 84 個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであるが,生体内では主要な生理活性を持つ 1-84PTH と,肝臓や腎臓などの末梢組織で分解さ れ失活した 7-84PTH などの PTH フラグメントが混在している.現在一般的に測定されており,ガイドラインにも推奨値が記載されているインタクト PTH(iPTH: intact PTH)値は 1- 84PTH と 7-84PTH フラグメントの両方が測定されており,1-84PTH のみの量を純粋に反映していないことが問題である.それに対し,ホール PTH(wPTH: whole PTH)値は 1- 84PTH のみが測定されているが,これまでのエビデンスの蓄積から現在も iPTH は測定され日常臨床に使用されている.さらに,PTH 分泌異常を含む骨・ミネラル代謝異常は CKDの早い段階から生じてくるのにも関わらず,これまでに透析患者の iPTH 値と wPTH 値との関係についてはいくつかの報告があるものの,保存期 CKD 患者における iPTH 値と wPTH値との関係や残存腎機能との関連についてはいまだ不明である.そこで我々は保存期 CKD 患者のホール/インタクト PTH 比(w/i PTH 比: whole/intact PTH 比)と腎機能との関係や w/ⅰ PTH 比に影響を与える腎機能以外の臨床因子について調べた.さらに, w/i PTH 比が腎予後に与える影響についても検討した.

方法:2014 年 12 月から 2015 年 12 月までに神戸大学医学部附属病院腎臓内科を受診した 954 人の保存期 CKD 患者について解析した.この内,原発性副甲状腺機能亢進症と診断された患者,腎移植後の患者,急性心不全や急性心筋梗塞,重症感染症に罹患していた患者,本研究への参加に同意しなかった患者,検査項目が不十分であった患者,また wPTH 値>iPTH 値であった患者は除き,773 人の保存期 CKD 患者に対し後ろ向き観察研究を実施した.CKD ステージにより 1/2, 3, 4, 5 の 4 群に群別し, w/i PTH 比と各ステージでの臨床因子との関係を単変量解析と多変量解析を使用して評価した.また,腎機能とwPTH,iPTH,w/i PTH 比や血清補正カルシウム値,血清理リン値との関係を散布図で表し,LOWESS curve[locally weighted scatter plot smooth curve(局所的に重み付けされた散布図平滑化曲線)]で近似し,線形重回帰分析を使用し相関線の変曲点につき検討した.さらに,前述の 773 人の内,2 年間カルテ上で追跡可能であった 206 人のCKD 患者をw/i PTH 比の中央値(w/i PTH 比≧0.79)で w/i PTH比高値群と低値群の 2 群に群別し,複合的腎転帰 [腎移植施行,透析導入,および推定糸球体濾過率(eGFR: estimated glomerular filtration rate)の 30%低下]との関係をカプラン・マイヤー法で解析した.また,Cox 回帰分析を使用し複合的腎転帰の臨床的予測因子についても検討した.

結果:CKD ステージ 1/2 は 92 人,ステージ 3 は 233 人,ステージ 4 は 217 人,ステージ 5 は 231 人であった.CKD ステージが進行するにつれて年齢の平均値は上昇していたがステージ 4 とステージ 5 では変わらなかった.同様に,血清へモグロビン値と血清補正カルシウム値は低下していたが,血清リン値は上昇していた.また,wPTH 値,iPTH 値はともに上昇していたが,各ステージでの w/i PTH 比の平均値はそれぞれ 0.85,0.81,0.78,および 0.59 と低下していた.wPTH に対する iPTH の相関係数は増加しており(CKD ステージ 1/2: r=0.985, ステージ 3: r=0.986, ステージ 4: 0.990, ステージ 5: 0.994),相関線の傾きも増加していた.全 CKD 患者において,eGFR と wPTH,iPTH,w/i PTH 比,血清補正カルシウム値,血清リン値の散布図を作成し,LOWESS curve で近似したところ,いずれの LOWESS curve も明らかに傾きが変化する eGFR を持つことが判明した.そこで線形重回帰分析を使用し相関線の変曲点の eGFR を求めたところ,wPTH:17.5mL/min/1.73 m2,iPTH:17.5mL/min/1.73m2,w/i PTH 比:24.1mL/min/1.73m2,血清補正カルシウム値:20.0mL/min/1.73m2,血清リン値:17.8mL/min/1.73m2 であった.また多変量解析では,w/i PTH 比は CKD ステージ 5 の患者群でのみ血清カルシウム値と,CKDステージ 3,ステージ 4,およびステージ 5 の患者群でeGFR と有意に関連していた.773 人の内,2 年間カルテ上で追跡可能であった 206 人の CKD 患者の複合的腎転帰を検討した結果,w/i PTH 比高値群の event free survival は 87%,低値群の event free survival は 50%と,低値群で腎予後は有意に悪かった(Log-rank P<0.05).さらに w/i PTH 比,eGFR,血清リン値,および尿中タンパク/クレアチニン比は,複合的腎転帰の有意な独立した予測因子であった.結論:w/i PTH 比の変化が腎機能,骨・ミネラル代謝異常,および腎予後と関連していることが示唆された.

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