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2022年9月26日から2023年5月7日までの新型コロナウイルス感染症発生届対象者の分析と発生届限定の意義について

北原, 瑞枝 長澤, 詩子 小林, 良清 信州大学

2023.08.22

概要

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

   2022
年 9 月 26 日から 2023 年5月7日までの
05-6
新型コロナウイルス感染症発生届対象者の分析と発生届限定の意義について
北原瑞枝、長澤詩子、小林良清(長野市保健所)
キーワード: 新型コロナウイルス感染症、発生届限定化、届出区分、転帰

要旨:2022 年 9 月 26 日から 2023 年5月7日までに診断され、長野市保健所に届出のあった新型コ
ロナウイルス感染者 8,561 例について、届出区分をパターン分けし、その後の転帰について記述した。
届出時に入院が不要とされた人は、その後の入院、中等症Ⅱ以上の重症化、療養中の死亡の率が低く、
症状悪化時の届出により対応可能であると考えられた。特に「重症化リスクがあり、かつ、新型コロ
ナウイルス感染症治療薬投与が必要」の区分では、重症化した人はおらず、届出対象とする意義はほ
とんどないと思われた。今後、新たな感染症の流行において発生届を限定する場合には、保健所によ
る対応が真に必要な人に絞ることも検討されるべきであろう。

A.目的

死体3例を除く)を表1に示す。届出区分を1~ 19

 2022 年 9 月 26 日から新型コロナウイルス感染

にパターン分けすると、65 歳以上単独が 4,343(50.7

症発生届の対象が、① 65 歳以上、②入院を要す

%)で最も多く、次いで 65 歳以上+リスクかつコロ

る、③重症化リスクがあり、かつ、新型コロナ

ナ薬が 1,712(20.0%)であった。届出区分ごとでは、

ウイルス感染症治療薬の投与が必要または新た

65 歳以上 7,298(85.2%)、入院を要する 1,602(18.7

に酸素投与が必要、④妊婦、に限定された。5

%、重複あり)等であった。

類移行される 2023 年5月7日までの間に診断さ

(2)届出後の転帰

れ、長野市保健所に届出された感染者の届出区

 入院した人は 1,628(19.0%)、中等症Ⅱ(酸素投

分と転帰を分析し、発生届限定の意義を考察する。

与が必要)以上に重症化した人は 348(4.1%)、療

B.方法

養期間中に死亡した人は 64(0.7%)であった。

 2022 年9月 26 日から 2023 年5月7日までに診断

 届出時に入院が不要とされたパターン1、3、5、

され、長野市保健所に発生届のあった新型コロナウ

7の感染者では、その後入院となった率は 1.6 ~

イルス感染者 8,561 例のデータを使用し、発生届の

5.5%、重症化した人は0~ 2.5%、死亡した人は0

届出区分の内訳及び届出後の転帰について記述す

~ 0.6%であった。

る。届出区分は、上記③をコロナ薬と酸素投与に分

 届出時に入院を要するとされた 1,602 人のうち、

けた5区分とした。

887 人(55.4%)は診断時点で他疾患により自院に

C.結果

入院中であった。パターン2、6、14 等の入院を要

(1)発生届の届出区分内訳

するとされた感染者では、60.0 ~ 100.0%で入院と

 期間中に届出のあった感染者の内訳は、女性

なった。パターン別の重症化率は 7.4 ~ 51.3%、死

4,810(56.2%)
、年齢中央 値 75 歳(最小0歳-最

亡した人は 1.0 ~ 20.0%であった。

大 108 歳)、感染者の類型は、患者(確定例)6,779

D.考察

(79.1%)、無症状病原体保有者 72(8.4%)、みな

 届出時に入院不要とされた人では、重症化したり、

し陽 性 79(9.2%)、感 染症死亡者の死体3(0.04

入院となったりした人の率が低く、多くは自宅で療

%)であった。届出時の感染者の所在は、高齢者

養可能であった。パターン1、3、5、7は届出者

施設入所中 1,304(15.2%)
、医療機関入院中 888

の8割を占め、のちに保健所等によるフォローが必

(10.4%)であった。

要となった人数が少なくないものの、重症化率は低

 届出時点の区分内訳及び転帰(感染症死亡者の

く、輪番病院や救急受診等の医療体制が整ってい
82

信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

は届出者の8割を占め、のちに保健所等によるフ
たことから、症状悪化時の届出により対応可能であ
ォローが必要となった人数が少なくないものの、
ったと考えられた。特にパターン3のリスクかつ治療
重症化率は低く、輪番病院や救急受診等の医療体
薬については、重症化した人がおらず、また、医療
制が整っていたことから、症状悪化時の届出によ
機関によって治療薬の処方の判断にばらつきがあり、
り対応可能であったと考えられた。特にパターン
届出対象とする意義はほとんどないと思われた。
3のリスクかつ治療薬については、重症化した人
 診断時に他疾患により入院している患者について
がおらず、また、医療機関によって治療薬の処方
は、コロナは軽症や無症状の場合が多く、重症化

では届出の必要はあまりないと思われた。
ある感染者の情報が保健所に共有され、個別に療
重症化リスクに基づく発生届により、広くリス
養に関する説明や積極的疫学調査が実施できたこ
クのある感染者の情報が保健所に共有され、個別
とは、感染者の不安解消や集団感染の早期探知に
に療養に関する説明や積極的疫学調査が実施で
は役立ったが、これらは感染者や施設からの相談、
きたことは、感染者の不安解消や集団感染の早期
連絡でも対応可能と考える。
探知には役立ったが、これらは感染者や施設から
 以上から、今後新たな感染症の流行において発
の相談、連絡でも対応可能と考える。
生届を限定する場合には、保健所による対応が真

の判断にばらつきがあり、
届出対象とする意義は
した人を適切に医療につなげるという意味では届出
ほとんどないと思われた。
の必要はあまりないと思われた。

以上から、今後新たな感染症の流行において発
に必要な人に絞ることも検討されるべきである。

診断時に他疾患により入院している患者につ
 重症化リスクに基づく発生届により、広く
リスクの

生届を限定する場合には、
保健所による対応が真
E.利益相反
に必要な人に絞ることも検討されるべきである。
 利益相反なし。

いては、コロナは軽症や無症状の場合が多く、重

F.利益相反

症化した人を適切に医療につなげるという意味

利益相反なし。

表1





1

発生届の届出区分ごとの届出数及び転帰(2022 年9月 26 日~2023 年5月7日、n=8,558)
届出区分
65 歳
以上

入院を
要する

転帰

リスク


リスク


治療薬

酸素

(%)

入院数(%)†

うち診断時
入院中の数

中等症以上
の数(%)†

死亡数(%)†

4343 (50.7)

146(3.4)

-

57 (1.3)

7 (0.2)

207 (2.4)

183 (88.4)

111

20 (9.6)

2 (1.0)

620 (7.2)

10 (1.6)

-

-

-

1 (0.01)

-

-

-

-

260 (3.0)

5 (1.9)

-

-

-

630 (7.3)

553 (87.9)

383

95 (15.1)

22 (3.5)

1712 (19.9)

94 (5.5)

-

43 (2.5)

10 (0.6)

11 (0.1)

-

-

-

-

124 (1.4)

114 (91.9)

90

9 (7.3)

-

10 (0.1)

6 (60.0)

2

3 (30.0)

2 (20.0)

19 (0.2)

13 (68.4)

-

-

-

1 (0.01)

-

-

-

-

1 (0.01)

-

-

-

-

465 (5.4)

377 (81.1)

269

48 (10.3)

14 (3.0)



13 (0.2)

10 (76.9)

1

5 (38.5)

-





6 (0.07)

2 (33.3)

-

1 (16.7)

-



19 (0.2)

15 (78.9)

7

8 (42.1)

-

1 (0.01)

1 (100.0)

1

-

-

115 (1.3)

99 (86.1)

23

59 (51.3)

7 (6.1)

8558

1628
(19.0)

887

348
(4.1)

64
(0.7)

妊婦



2



3



4



5



6



7



8







9



10



11







12



13



14





15





16








17





18







19











7298
(85.2)

1603
(18.7)

3064
(35.9)

176
(2.1)

(%)

届出実数

281
(3.3)

-は該当者なしを示す、† (%)はパターンごとの届出実数に占める割合を示す
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