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大学・研究所にある論文を検索できる 「新型コロナウイルス第7波時の飯田保健所における状況と支援の課題」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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新型コロナウイルス第7波時の飯田保健所における状況と支援の課題

赤澤, 春奈 熊谷, 晶子 坂元, 亜紀 遠山, 尚子 伊藤, 博美 久保, 幸美 征矢, 紗幸 吉川, 美波 吉田, 恵理 松岡, 裕之 信州大学

2023.08.22

概要

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023

05-5
   新型コロナウイルス第7波時の飯田保健所における状況と支援の課題
赤澤春奈、熊谷晶子、坂元亜紀、遠山尚子、伊藤博美、
久保幸美、征矢紗幸、吉川美波、吉田恵理、松岡裕之(長野県飯田保健福祉事務所)
キーワード:新型コロナウイルス感染症、第 7 波、新規発生者数、入院者数、自宅療養者

要旨:新型コロナウイルス感染症第 7 波時の飯田保健所における状況と支援における課題を明らかにした。新
規発症者数はお盆明けの 8 月 17 日、患者数は 8 月 22 日をピークとする山形となった。入院患者は 8 月 9 日が
最も多かった。感染者が増加する中で、自宅療養者の対応で困難であったのが、普段福祉サービスを利用し
地域で生活していた高齢者らの対応であった。症状は入院を要するほどではないが、各種介護サービスが受
けられなくなり、入院可能病床がない状況で独居を強いられたケースが複数あった。また電話でのコンタクトが
困難な人がいた。対応策を現段階から考えることが重要である。
A.目的
 新型コロナウイルス感染症第 7 波時では新規患者
が爆発的に増加し、入院を要する患者が増加し対応

3. 対応が難しかった自宅療養者の状況
 飯田保健所で対応した自宅療養者の個人カルテか
ら発生届出時の聞き取り調査内容・療養支援で、対

の難しさを経験した。今回は、新型コロナウイルス感
染症第 7 波時の飯田保健所における状況と支援にお
ける課題を明らかにする。
B.方法
 本研究においては、第 7 波を 2022 年 7 月 1 日か
ら 9 月 25 日までとした。これは長野県の新型コロナの
振り返りの設定期間と同様である。この期間において
は、全ての患者の発生届が保健所に提出された。第
一期は、7 月 1 日から 7 月 28 日までで、保健所で全
数の積極的疫学調査を実施した。職員総出で架電し
聞き取り調査を行っていたが、徐々に翌日以降の対応
に回る件数が増大した。そのような状況を鑑み、長野
県で一括した対応センター「健康観察センター」を立
ち上げた。第二期は、7月 29 日から 9 月 25 日までで、
保健所では重症化リスクのある人にのみ架電して詳細
調査を行い、それ以外の人には直接健康観察センタ
ーが対応するように変わり、重症化リスク者の調査が
翌日に回ることが減少した。
1. 新規発症者数・患者数の推移
 新規発症者数は、発生届受理日の数ではなく、発
生届に記載されている「発症日」をもとに集計した。
患者数は、9 月 7 日までは発症日から 10 日間の療養
が定められていたため、10 日間累積した患者数とした。
2. 新型コロナ入院者数の推移
 新型コロナ入院者数は、日々県庁に報告した一覧
表から確認した。また、入院中の院内感染からの入
院患者と、施設または自宅で療養していた人が食欲
低下・体動困難・酸素化不良または社会的入院等で
入院となった人との比較をした。

応が難しかった事例を抽出した。
C.結果
1.新規発症者数・患者数の推移
 新規発症者数は、第一期においては 7 月 1 日の 5
人から 10 日後の 7 月 10 日には 47 人となり、その 10
日後の 7 月 20 日には 127 人、7 月 28 日には 180 人と
なった。第二期においては、8 月 1 日には初めて 200
人を超え、その後 150 ~ 200 未満の日が継続し、8
月 13 日に 200 人を再度超えた後は 200 人超えが 8 日
間続いた。最も新規発症患者が多かったのは 8 月 17
日の 315 名だった。この時期は、お盆で人流の多か
った時期に合致している。
 患者数が最も多かった日は 8 月 22 日の 2401 人で、
新規発症患者数のピークだった 8 月 17 日から 5 日後
であった。飯田保健所管内の人口 15.2 万人の 1.6%
が、新型コロナウイルス感染症に罹患していたこととな
る(図1)

2.新型コロナ入院者数の推移
 一番入院者が多かったのは 8 月 9 日の 59 人だった。
院内感染からの患者が最も多かったのは 8 月 7 日・8
日の 35 名で、自宅療養等から入院となった患者が最
も多かったのは 8 月 9 日・11 日の 25 人だった(図2)

3.対応が難しかった自宅療養者の状況
 発生届の受理時の、聞き取り調査及び自宅療養者
の健康観察をする中で、多くの困難があった。
【事例A】
 軽度認知症がある独居の 80 歳代。普段はデイサ
ービス・ヘルパー等サービスを多用していた。感染が
明らかになり在宅サービスの利用ができなくなった。同

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信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023

Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1,
軽症であり、入院できなかった。

August 2023

スなど支援を受けている人が、
感染拡大時に感染すると、
普段利用しているサービスが使えない、その上病床ひっ

【事例B】

要介護の 80 歳代。
普段はデイサービスを利用していた。 迫で社会的入院もできないという、生活継続すら難しい
新型コロナの症状は軽症であるが、ADL
が低下。同居家
居していない家族は入院希望したものの、新型コロナ
の症状は軽症であり、入院できなかった。
族も続いて感染し、高熱のため介護ができないため、入
【事例B】
院希望があったが、できなかった。
 要介護の 80 歳代。普段はデイサービスを利用して
【事例C】
いた。新型コロナの症状は軽症であるが、ADL
が低
寝たきりの
90 歳代。普段から留置カテーテルのケア、
下。同居家族も続いて感染し、高熱のため介護がで
摘便を訪問看護で実施。新型コロナの症状は軽症である
きないため、入院希望があったが、できなかった。
が、入院希望があった。満床にてできなかった。
【事例C】
【事例D】
 寝たきりの 90 歳代。普段から留置カテーテルのケア、
認知症で徘徊のある夫婦 2 人暮らしの 90 歳代。
夫が新
摘便を訪問看護で実施。新型コロナの症状は軽症で
型コロナで入院し独居になった。普段は週
あるが、入院希望があった。満床にてで7き日ヘルパー
なかった。
が介入していたが、ヘルパーにも感染が拡大し来られな
【事例D】
くなった。コロナは軽症で入院不要と診断された。同居
 認知症で徘徊のある夫婦 2 人暮らしの 90 歳代。
していない子どもには環境の変化に対応が難しい家族が
夫が新型コロナで入院し独居になった。普段は週 7 日
おり、本人は環境の変化を嫌がり、子どもは両方の家で
ヘルパーが介入していたが、ヘルパーにも感染が拡大
し来られなくなった。コロナは軽症で入院不要と診断
それぞれの支援に追われた。
された。同居していない子どもには環境の変化に対応
【事例E】
が難しい家族がおり、本人は環境の変化を嫌がり、子
発生届に記載された電話番号に連絡するが、固定電話
ども
は両方の家でそれぞれの支援に追われた。
には詐欺対策用メッセージが流れつながらず、携帯電話
【事例E】
は登録されてある電話番号からしかつながらない設定が
 発生届に記載された電話番号に連絡するが、固定
してあり、連絡がとれなかった。
電話には詐欺対策用メッセージが流れつながらず、携
【事例F・G】
帯電話は登録されてある電話番号からしかつながらな
発生届の電話番号で出てくれたものの、独居で難聴。
い設定がしてあり、連絡がとれなかった。
もしくは独居で認知症あり。意思疎通が難しかった。
【事例F・G】
D.考察
 発生届の電話番号で出てくれたものの、独居で難
第7波では、人流の増加が新規感染者数の増加につな
聴。もしくは独居で認知症あり。意思疎通が難しかっ
がり、それは入院を要する人の増加につながった。
た。
院内感染者の増加はコロナ受け入れ病床数に大きく影
D.考察
 第7波では、人流の増加が新規感染者数の増加に
響し、飯田保健所管内でも、入院病床の調整に非常な困
つなが
り、それは入院を要する人の増加につながった。
難を要した。院内感染を抑えることが、地域全体の入院
 院内感染者の増加はコロナ受け入れ病床数に大き
を要する人の受け皿を確保する上で重要である。
く影響し、飯田保健所管内でも、入院病床の調整に
また、地域で普段からデイサービス、訪問看護サービ

状況になっていた。このような状況を解決すべく、治療
非常な困難を要した。院内感染を抑えることが、地域
全体の入院を要する人の受け皿を確保する上で重要
上は入院不要であるが、生活するには様々な支援が必要
である。
な人の療養場所やケア提供方法を検討しておかねばなら
 また、地域で普段からデイサービス、訪問看護サー
ない。現在では、新型コロナに感染していても、かかり
ビスなど支援を受けている人が、感染拡大時に感染
つけ医の往診や、訪問看護や介護等もサービス提供が
すると、普段利用しているサービスが使えない、その
徐々に継続可能な状況となりつつある。感染対策をとっ
上病床ひっ迫で社会的入院もできないという、生活継
た在宅での医療・看護・介護の提供がいつでも可能とな
続すら難しい状況になっていた。このような状況を解
るよう、教育・資金支援など即対応できる体制整備の必
決すべく、治療上は入院不要であるが、生活するに
要がある。
は様々な支援が必要な人の療養場所やケア提供方法
加えて今回保健所から療養者には電話を通じての支援
を検討しておかねばならない。現在では、新型コロナ
が中心となったが、電話でコミュニケーションが取るの
に感染していても、かかりつけ医の往診や、訪問看
が難しい難聴者、認知症で一人暮らしの人へ、どう連絡
護や介護等もサービス提供が徐々に継続可能な状況
をとるのかも課題であった。そういった方に関しては、
となりつつある。感染対策をとった在宅での医療・看
子どもやケアマネージャー等への連絡方法がわかるよう
護・介護の提供がいつでも可能となるよう、教育・資
金支援など即対応できる体制整備の必要がある。
に医療機関受診時にしておくことが、素早い対応につな
 加えて今回保健所から療養者には電話を通じての
がると考える。
支援が中心となったが、電話でコミュニケーションが
今後も新興感染症は必ず発生するが、その時期を予測
取るのが難しい難聴者、認知症で一人暮らしの人へ、
することは難しい。早急にこれらの検討をしておく必要
どう連絡をとるのかも課題であった。そういった方に関
があると考える。
しては、子どもやケアマネージャー等への連絡方法が
E.利益相反
わかるように医療機関受診時にしておくことが、素早
利益相反なし
い対応につながると考える。
F.謝辞
 今後も新興感染症は必ず発生するが、その時期を
当演題発表にあたり、ご協力いただいた新型コロナ対
予測することは難しい。早急にこれらの検討をしておく
策雇用の看護師・保健師の皆様に感謝申し上げます。
必要があると考える。
E.利益相反 
 利益相反なし。
F.謝辞
 当演題発表にあたり、ご協力いただいた新型コロ
ナ対策雇用の看護師・保健師の皆様に感謝申し上
げます。

図 1 新規発症者数と患者数の推移

図2 入院患者数の推移
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信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. ...

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