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大学・研究所にある論文を検索できる 「The incidence of malignancy, complications, and the prognosis after direct-acting antiviral therapy for chronic hepatitis C」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The incidence of malignancy, complications, and the prognosis after direct-acting antiviral therapy for chronic hepatitis C

金山, 雄樹 カナヤマ, ユウキ Kanayama, Yuki 群馬大学

2021.03.23

概要

【背景】C型肝炎ウイルスは肝硬変や肝細胞癌の主要な原因の一つである。近年、C型肝炎に対する治療としてインターフェロンを使用しない直接作用型抗ウイルス薬(DAA:Direct-acting antiviral)のみの治療が可能となり、高いウイルス学的著効(SVR: Sustained virological response)達成率と安全性を認めている。日本でも2014年からDAA治療が可能となったが、治療後の長期予後や合併症に関しては不明の点が多く、また、当研究室は以前、原田病を合併したC型肝炎患者に対してDAA治療を行い、治療後に原田病の増悪、関節リウマチの発症を経験し、DAA治療と免疫疾患との関連性を示唆した。そこで、DAA治療後の肝発がん及び肝外発がん、免疫関連の合併症、長期予後について明らかにすることを目的に多施設共同後ろ向きコホート研究を計画した。

【方法】2014年9月3日から2018年9月30日までの間に当院及び関連7施設を受診したC型慢性肝炎患者のうち、DAAによる抗ウイルス治療を行った20歳以上の患者で治療終了後24週間以上観察可能であった症例を対象とした。B型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、ヒト免疫不全ウイルス感染を合併した患者は除外し、がんの既往がある患者は根治が確認されている症例のみを対象とした。

肝発がんに関しては、3-12か月毎のUS、CT、MRIのいずれか及び血液検査による肝癌スクリーニングで診断した。初発群、再発群に分けCOX比例ハザード分析による多変量解析で危険因子を検討した。カプランマイヤー法とログランク検定で累積発がん率を検討した。肝外発がんに関しては、肝癌スクリーニングの定期検査に加えて他医療機関や健康診断での血液検査、画像検査、症状等から総合的に診断を行った。肝外発がん罹患率と死亡率を年齢、性別で調整した標準化罹患比(SIR: Standardized incidence ratio)、標準化死亡比(SMR: Standardized mortality ratio)を求めて一般人口と比較し評価した。発がんについてはInternational ClassificationofDiseases-10に基づき肝がん及び肝外発がんに分類した。自己免疫性疾患に関しても肝癌スクリーニングの定期検査に加えて他医療機関や健康診断での血液検査、画像検査、症状等から総合的に診断を行い、発症数や疾患の種類、DAA治療の種類、発症までの期間等を評価した。生存率に関してはCOX比例ハザード分析による多変量解析で危険因子を検討し、カプランマイヤー法とログランク検定で累積生存率を検討した。

【結果】最終的に1461症例を解析した。SVR1446例、年齢中央値は68歳、観察期間の中央値は1167日間であった。DAA治療後の肝外発がんに関しては全体で19種、96例(再発8例)の発がんを認めた。再発例を除いた検討で肝外発がん全体及び肺癌のSIRが全患者、女性で有意差を持って高値であった。肝発がんに関しては、初発群の危険因子は肝硬変、再発群の危険因子はインスリンの使用、PIVKA-Ⅱ高値、ALBI score(albumin-bilirubin score)高値であった。自己免疫性疾患に関しては全体で8例の発症を認め、その内5例(関節リウマチ4例、膜性増殖性糸球体腎炎1例)はDAA治療開始後から1年以内に発症しており、DAA治療との関連性が考えられた。生存率に関しては、SVR不達成、肝外発がん、ALBI score高値が危険因子であった。

【考察】DAA治療後の肝外発がんの報告は少なく、肝外発がんが増加する機序は現時点では不明確である。既報ではリンパ増殖性疾患を合併したC型肝炎患者においてはDAA治療後1年後もモノクローナルなB細胞の残存がありDAA治療後であってもC型肝炎患者の悪性リンパ腫のリスクは残存する可能性がある。その他DAA治療中に血管内皮増殖因子の血中濃度が上昇するという報告や、DAA治療によるウイルス排除後に自然免疫系の再構成があるという報告があり、発がんに関与している可能性がある。また、本研究では肺癌の罹患率が最も高く、肺癌発症群では喫煙率も高値であった事やサンプルサイズが1461症例であることから、本研究の成果は、国内や国際的な大規模研究で検証されるべきと考える。

SVR患者におけるDAA後の肝発がんの危険因子は既報では肝硬変であり、またインスリンの使用が肝発がんの危険因子であることに否定的な報告もあるものの、肝細胞癌に関与する報告があり、肝内胆管癌に関しても高インスリン血症が発癌に関与する報告がある。これらは本研究の結果を支持する。

生存率に関しても既報と矛盾はなかった。ALBI score高値は進行した肝疾患を示唆し、肝不全死に関連している事や、肝外発がんであっても、治療選択に肝予備能の影響を受ける事から医学的に妥当と考えられる。また、肝外発がんが危険因子となっている点に関しては、今回の研究対象集団における肝外発がんのSIRが上昇している事を反映している可能性がある。

DAA治療後の自己免疫性疾患の発症機序に関しても不明確であるが、関節リウマチの発症や病勢に関連するInteleukin1β、Interferongamma-inducedprotein10、インターフェロン刺激に関与するInterferoninducedproteinwithtetratricopeptide1がDAA治療により変動するという報告や関節リウマチ患者の遺伝子発現には不均一性があるという報告から総合的に判断すると、DAA治療により関節リウマチは患者によって増悪または逆に改善する両方の可能性があると考えられる。膜性増殖性糸球体腎炎等、他の自己免疫疾患に関しても同様の機序が想定される。

本研究のlimitationとしてretrospectivestudyのため一部データに欠損があることや観察期間にばらつきがあること、肝外発がん・自己免疫性疾患に対する一律のスクリーニングプログラムがなかったことがあげられる。

【結論】DAA治療後には、肝外発がん、特に肺癌が患者全体及び女性において増加する可能性が示唆された。また自己免疫性疾患、特に関節リウマチが発症する可能性も示唆された。全国規模もしくは国際的な大規模研究によるさらなる検証が必要である。

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