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大学・研究所にある論文を検索できる 「Interaction of N2-fixing endophyte Burkholderia vietnamiensis RS1 and rice (Oryza sativa L.) in plant growth promotion」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Interaction of N2-fixing endophyte Burkholderia vietnamiensis RS1 and rice (Oryza sativa L.) in plant growth promotion

新庄, 莉奈 名古屋大学

2021.07.14

概要

窒素(N)は作物生産に必須の栄養素であり、現在世界の農業はN肥料に大きく依存している。N肥料は植物の生育に大きく貢献する一方、環境への悪影響が懸念される。このような背景からN肥料の削減と生産性の向上を実現する持続可能な作物生産が求められている。本研究では植物への持続可能なN供給の手段として“植物―細菌”相互作用の利用に着目した。植物体内に生息する内生細菌(エンドファイト)や根圏に生息する多様な細菌が協調的に植物生育を促進することが報告されており、これらは植物生長促進細菌(Plant growth promoting bacteria, PGPB)と総称される。PGPBは大気N2をアンモニアに還元する窒素固定能や植物ホルモン生産による根の形態変化など複合的な作用により植物の養分獲得を促進していると考えられるが、その機能は依然として不明が多い。これらの細菌を作物生産の場で利用し安定した効果を得るには生長促進の背景にある分子メカニズムの解明が重要である。

本研究では、主要穀物であるイネの生育、特にN獲得を促進する新規エンドファイトを単離しその背景にある植物生育促進メカニズムの解明を目指した。そのためにまず植物体内からエンドファイトを単離し、そのイネ生育やN獲得に対する効果を生理学的・分子遺伝学的手法を用いて詳細に検証するとともに、イネとの相互作用に関わる形質を明らかにすることでイネ生育促進やN獲得促進のメカニズムの包括的な理解を目指した。

本研究ではまず窒素固定の寄与が大きいと報告例のあるサツマイモから窒素固定エンドファイトBurkholderiavietnamiensisRS1株を単離した。このRS1株は無窒素培地で培養すると高い窒素固定活性を示し、また酸素濃度が上がるにつれて培養液が固化する性質を持つ。またゲノム解析からRS1株は窒素固定に加えて植物ホルモンの産生や制御に関与する遺伝子やシデロフォア産生遺伝子などPGPBとしての形質に関わる複数の遺伝子を有することが明らかとなった。さらに水田圃場においてあらかじめイネ苗にRS1株を接種するとRS1株は移植後も長期にわたって定着しイネの地上部と地下部の乾物重および根長を増加させたことから、RS1株がイネの生育を促進する可能性が示された。

次にRS1株を接種したイネについて生長解析やホルモノーム解析、さらにRNA-seqを行うことでRS1株に対するイネの生理学的・分子遺伝学的応答を網羅的に解析した。土壌のNレベルを2段階(低N区、高N区)設け、RS1株のイネに対する効果を検証した結果、特に高N区においてRS1株によって地上部乾物重やN含有量が大きく増加した。生長解析の結果、高N区ではRS1株の接種により相対生長速度および純光合成速度、N吸収速度が有意に増加していたことが明らかになった。RS1株を接種したイネ根ではアミノ酸の輸送や硝酸態Nのトランスポーター(OsNRT1.2,OsNRT1.1B)の発現が上昇していた。一方でRS1株をイネ根に接種しその窒素固定活性(アセチレン還元能)を測定したところ接種による大きな増加は見られなかった。これらの結果からRS1株によるイネのバイオマスの増加は、高N条件では窒素固定能が主要因ではなく、主に根からのN吸収速度、特に硝酸態Nの吸収が増加し光合成が促進されることにあることが示された。また比較的直径が太い根の根長も有意に増加しており、またIndole-3-aceticacid(IAA)とその代謝物(IAAsp)の総濃度が接種によって有意に増加していたことから、RS1株の接種は植物ホルモンの制御を介した根の形態変化ももたらすことが示唆された。

RS1株による硝酸態N吸収促進をより定量的に明らかにするため、Nの安定同位体15Nを含む硝酸アンモニウム(15NH4NO3、NH415NO3)を用いて硝酸とアンモニアそれぞれの吸収量を非接種とRS1株を接種したイネで比較検証した。その結果、RS1株を接種したイネでは硝酸態Nの吸収促進の程度が著しく増加した。一方、アンモニア態Nの吸収はいずれも差はなかった。これらの結果からRS1株の接種はイネ根における土壌からの硝酸態Nの吸収を特異的に促進することが明らかになった。

一方RS1株の特性として酸素濃度の増加に応じて培養液が固化することが本研究で明らかになった。これには細胞外高分子物質(Extracellular polymeric substances, EPS)の分泌が関与していると考えられる。EPSは細菌が植物体内に侵入する際に利用していることが報告されていることから、RS1株についてもこのEPS分泌特性についてイネとの相互作用の観点から詳細に検証した。トランスポゾン配列の挿入により作出した960の変異株群からEPSの生産性を欠くRS1株の1変異株を選抜し、これをイネに接種した。その結果、変異株では菌の体内への侵入能力が低下しており、さらに硝酸吸収やイネ生育促進の程度が野生株と比較し大きく低下することが明らかになった。

本研究では、B.vietnamiensisRS1株が硝酸吸収を促進することでイネのN蓄積やバイオマス増加をもたらすこと、さらにその背景にはイネ根への定着にはEPSが関与する可能性を明らかにした。PGPBが直接的に硝酸態N吸収を促進したことを示す例は限られており、本研究によって得られた結果はPGPBが硝酸吸収促進を介して植物のバイオマス増加をもたらす新たな道筋を示すものである。湛水条件で栽培されるイネはアンモニアを優先的に吸収するが硝酸も吸収することが報告されており、また硝酸とアンモニアを同時に供与することによってアンモニアを単独で与えた場合に比べてイネ生育が増加することも知られる。EPSは菌体周辺の酸素濃度を制御する機能も報告されていることから、RS1株の分泌したEPSが根圏で硝化などの菌の窒素代謝を促進し根圏の硝酸態Nを増加させる機能も考えられる。今後RS1株によって吸収促進された硝酸態Nの植物体内での動態や機能をより詳細に明らかにすることで農地における植物生長促進細菌の安定的な利用さらにはN肥料の節減につながると期待される。

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