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大学・研究所にある論文を検索できる 「副甲状腺ホルモン(1-34)の週3回投与はラット難治性骨折モデルの治癒を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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副甲状腺ホルモン(1-34)の週3回投与はラット難治性骨折モデルの治癒を促進する

Kumabe, Yohei 神戸大学

2020.03.25

概要

背景:
全骨折のうち約5%に遷延癒合や偽関節が発生するといわれているが、これらの治療は難しく、リハビリや社会復帰に長い期間を要するため社会的損失 が大きく、患者本人の生活の質を著しく害する。そのため、遷延癒合や偽関節の患者、もしくはそのリスクが高い患者に向けた、骨折治癒を促進させる治療法の確立が求められている。Parathyroid hormone (1-34)(以下PTH (l- 34))は、84個のアミノ酸から構成されるポリペプチドであるヒトPTHのう ち、その生理活性を担う34個のアミノ酸を合成して造られた薬剤である。PTHは骨代謝を調節するホルモンであり骨形成と骨吸収の両方を促進させるが、 持続的暴露では骨吸収が、間欠的暴露では骨形成が優位となることが知られており、PTH(1-34)の連日投与により骨粗鬆症患者における椎体骨折、非椎体骨折のリスクが減少する事がすでに証明されている。さらにはPTH (1-34) の連日投与により骨折治癒が促進されるとするエビデンスが、動物実験や臨床研究により積み重ねられている。遷延癒合や偽関節に対しても同様に ΡΤΗ(1-34)の間欠的投与を行うことで骨癒合が得られる可能性が考えられるが、現時点では小規模なケースシリーズや症例報告があるのみで臨床研究の報告はなく、動物実験の報告も少ない。この研究の目的はΡΤΗ(1-34)の週3回の全身投与がラット難治性骨折モデルに有効かを調べることである。

方法:
12週齢の雄のラットを32匹使用した。径1.25mmのK-ワイヤーを右大腿骨髄腔に挿入し、重錘を落下させて骨幹部に横骨折を作成、骨折部周囲の骨膜を焼灼することで難治性骨折モデルを作成した。このモデルでは術後8週で偽関節が成立する。半数のラットにΡΤΗ(1-34)100 Mg/kgを週3回、8週間皮下投与し、残り半数には代わりに生食を投与した。8週間後、X線、μ-CT. 組織、力学による評価を行った。X線評価では前後、側面の2方向から撮影し、観察される計4つの皮質骨のうち、3つもしくは4つに骨性架橋が観察される場合を骨癒合、1つも観察されない場合を偽関節と定義し、それぞれの発生率を比較した。μ -CT評価では新生仮骨におけるtissue mineral density (以下 TMD)、total callus volume (以下 TV)、callus bone mineral content (以下 BMC)、volumetric bone mineral density (以下 vBMD = BMC/TV)、bone volume fraction (the ratio of bone volume (BV) to TV;以下 BV/TV)を算出した。組織評価ではSafranin-O/Fast Green染色による観察を行い、Allenのスコアリングシステムを用いて骨癒合の程度を定量評価した(grade 0, nonunion; grade 1,incomplete cartilaginous union (fibrous elements); grade 2, complete cartilaginous union; grade 3, incomplete bony union (small amount of cartilage present in callus); and grade 4, complete bony union)。力学評価では3点曲げ試験によりult imate stress、 extrinsic stiffness、failure energy を算出した。

結果:
X線による評価ではPTH群で11匹(68. 8%)のラットで骨癒合が見られ、コントロール群(5匹31.3%)より優位に骨癒合率が高かった(P< 0.05) 。また、偽関節率はPTH群(3匹18.8%)がコントロール群(9匹56.3%)より優位に低かった(P < 0.05)。μ-CTによる評価では、PTH群でTMD (p <0. 05;774.7 ± 56.5 vs 693.3 ± 41.8 mg/cm3)と vBMD (p <0.05;491.8 ± 75.4 vs 393.3 ± 35.6 mg/cm3)がコントロール群より優位に高値であっ た。一方TV、BMC、BV/TVには有意差は認められなかった。組織評価に関して、 PTH群ではwoven boneによる骨折部の架橋が見られたが、コントロール群では線維性組織で骨折部が満たされているのが観察された。AllenスコアはPTH
群がコントロール群より優位に高かった(p<0.05; 3.4 ± 0.5 vs1.3 ± 1.6; Fig. 2b)。力学的評価では ultimate stress、stiffness が PTH 群で対照群より優位に高かった(P < 0.05;107.5 ± 32. 5% vs 57.5 ±22.2%,P<0.05, 86. 6±29· 5% vs 31.5±13.1%) 。 一方 failure energy には有意差は観察されなかった(151.6 ± 159. 7% vs 52.0 ± 26. 8%;Fig. 3c)。

考察:
ラット難治性骨折モデルにおいてΡΤΗ(1-34)の週3回投与が骨癒合率を高め、骨折治癒を促進することが示された。そのメカニズムとして骨芽細胞の分化 刺激、軟骨細胞の増生や分化の促進、軟骨形成の加速が考えられる。投与間隔について、ラットの骨代謝周期はヒトより早いため、ラットの週3回投与はヒトの週1回投与程度に相当すると推測され、ヒトにおいてはPTH (1-34)の週1回投与が遷延癒合、偽関節に対して有効である可能性がある。また、投与量について、本実験では100 Mg/kg ・週3回投与であり、これは我々が行った予備実験から設定したものであるが、ヒト骨粗鬆症患者に対する20 /zg・連日投与よりはるかに多い用量となっている。ヒトとラットでは骨格や生理的な特徴、PTH (1-34)への反応性が異なるため、単純に比較することはできないが、遷延癒合、偽関節治療に対する用量は骨粗鬆症治療に対するものより大きなものとなる可能性が高いと思われる。いずれにせよ、最適な投与間隔、投与量を明らかにすることが今後の課題となる。

結論:
ラット難治性骨折モデルにおいてΡΤΗ(1-34)の週3回投与は骨癒合率を高め、骨折治癒を促進する。ΡΤΗ(1-34)の間欠的投与は遷延癒合や偽関節になるリスクの高い患者に対して骨折治癒を促進させる有用な治療法となる可能性がある。

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