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国内に絶滅危惧種として生育する広域分布植物の比較保全ゲノミクス

芝林, 真友 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24658

2023.03.23

概要

国内に絶滅危惧種として⽣育する広域分布植物の⽐較保全ゲノミクス
芝林 真友
地球上の⽣物多様性は⼈間活動の影響により急速に減少しており、現在多くの種が絶滅
の危機に瀕している。⽣物多様性保護への関⼼は世界的に⾼まっており、⽇本においても国
をあげた取り組みが為されている。1992年に制定された「絶滅のおそれのある野⽣動植物
の種の保存に関する法律」
(種の保存法)は、2013年の改正時に、⽣物多様性の確保を⽬的
として明記されるとともに、科学的知⾒の充実を図ることが責務とされた。さらに、2017年
の改正時には、2030年までに種の保存法対象種である国内希少野⽣動植物種を700種指定す
るという⽬標が⽴てられた。2022年現在では427種が指定されており、効率的な保全策の構
築が急務である。
これまで、希少種の保全状況は、個体数や⽣育地の⼤⼩、それらの減少速度から評価され
てきたが、限られた保全資源を適切に分配するためには、さらに種の保全価値を評価し、優
先順位を検討する必要がある。維管束植物については、現在198種が国内希少野⽣動植物種
として指定されているが、このうち98種が⽇本だけでなく近隣諸国にも⽣育している。種の
状況は地域ごとに異なり、⽇本国内における希少種が海外でも同じ状況にあるとは限らな
い。適切かつ効率的な保全策を構築するにあたり、国内における個体数や⽣育地の⼤⼩だけ
でなく、国内外における種の状況の詳細を把握することが重要である。
本研究においては、国内では限られた⽣育地にわずかな個体数が残存するのみである⼀
⽅で、海外では普通種として⽣育する5種について、その遺伝的状況を明らかにすることを
⽬的とした。各章で、種ごとに国内外の個体を対象として、ゲノムワイドな遺伝情報をもと
に集団遺伝学的解析と個体内の遺伝的多様性の⽐較解析を⾏い、国内集団の保全状況や、海
外個体に対する位置付けを評価した。
第1章では、⽇本における⽣物多様性保全の現状と課題について議論した。南⻄諸島には
豊かな⽣物多様性が存在する⼀⽅で、多くの絶滅危惧種が⽣育している。⽇本の⽣物多様性
を保全するにあたり、南⻄諸島における⽣物多様性保護は、効果的かつ優先度の⾼いもので
あるといえる。絶滅リスクに影響する遺伝的要因を特定し、絶滅リスクを最⼩化するために、
遺伝情報の活⽤が有効であり、南⻄諸島における絶滅危惧種の適切な保全に向けて本研究
の意義を論じた。
第2章では、国内では奄美⼤島にのみ⽣育するサガリランの遺伝的状況を評価した。本種
は、以前より域外保全が⾏われていたが、最近新たな野⽣⽣育地が発⾒された。解析の結果、
国内集団の遺伝的多様性は全体的に低いものの、最近新たに発⾒された集団は、既に知られ
ていた集団とは遺伝的に分化していることや、個体レベルの遺伝的多様性が⾼い個体が存
在することがわかり、保全単位の設定や今後の保全施策に有⽤な情報を得ることができた。
第3章では、⻄表島の1ヶ所に⼩集団が⽣育するナガミカズラについて、クローン識別や、
国内外の集団の遺伝的多様性と系統関係を解析した。その結果、国内のナガミカズラは1ク
ローンであるにもかかわらず、個体レベルの遺伝的多様性については、国内個体には海外個
体の半分ほどが維持されていることが明らかになった。また、国内集団は、海外集団との間
に明瞭な遺伝構造を⽰さず、海外集団と同じ系統に含まれていた。これらのことから、国内
集団は⻄表島に渡来後、世代交代を少数回のみしか経験しておらず、ごく最近に⽇本へ移⼊
した種である可能性が⽰唆された。
第4章では、奄美⼤島の原⽣林の⼤⽊に着⽣しているヤドリコケモモについて、遺伝解析
を⾏った。国内集団の遺伝的多様性については、集団・個体レベルともに極めて低く、危機
的な保全状況であることが明らかになった。また、国内集団は、海外集団とは異なる独⾃の

遺伝的特徴を有し、海外集団から⼤きく分化していることから、遺伝的に貴重な集団である
ことがわかった。
第5章では、⻄表島中⼼部の⼀地域の渓流沿いに群落を形成するランダイミズについて、
クローン識別や、海外個体を含めた系統解析、国内外の集団の遺伝的多様性の⽐較を⾏った。
群⽣して⽣育するために個体識別が困難な本種について、国内外におけるクローン構造を
明らかにした。その結果、国内集団は1クローンで構成されていたが、その⼀⽅で、個体レ
ベルの遺伝的多様性は海外個体と同程度を保持しており、国内集団は有性⽣殖による世代
交代を繰り返しておらず、栄養繁殖によって維持されている可能性が⾼いことがわかった。
国内集団は、海外集団との間に明瞭な遺伝構造を⽰さず、海外集団の1部分に過ぎないこと
が明らかになった。
第6章では、⻄表島に⽣育するタイワンホトトギスについて、その保全状況を明らかにす
るとともに、海外個体との系統関係を解析した。本種は、種の保存法の対象外となっている
が、国内個体と海外個体に形態的な違いが知られている。解析の結果、国内集団は海外集団
から遺伝的に⼤きく分化していることがわかり、国内集団の独⾃性が⽰された。また国内に
複数の系統が存在することが明らかになった⼀⽅で、個体レベルの遺伝的多様性は低く、危
機的な保全状況にあることが⽰された。また、台湾の蘭嶼集団においても、台湾本⼟の集団
と⽐べて低い遺伝的多様性と⾼い遺伝的独⾃性が⾒られ、多くの島嶼集団に表れる特徴を
⻄表島の集団と共通して持っていることがわかった。
第7章では、本研究で明らかになった国内希少種の実態をまとめ、遺伝的状況の⽐較を⾏
なった。これらを踏まえ、国内集団の遺伝的独⾃性が⾼く、集団レベルの遺伝的多様性も⽐
較的⾼いため適切な保全管理により効果が期待されるタイワンホトトギス、国内集団の独
⾃性が⾼い⼀⽅で、遺伝的多様性が極めて低く保全の緊急度が⾼いと考えられるサガリラ
ンやヤドリコケモモ、国内集団が1クローンで構成されるため引き続きモニタリングが必要
であるが、遺伝的独⾃性は低いナガミカズラやランダイミズ、といったように、効率的かつ
効果的な保全策の構築に向けて、国内希少種のカテゴライズをすることができた。
これらの⼀連の研究により、⽇本国内ではわずかな個体数が残存するのみである⼀⽅で、
海外では多数個体が⽣育するという共通点を持つ5種について、それぞれに異なる保全状況
や、海外集団に対する⽇本集団の独⾃性の有無が明らかになった。国内の個体数や⽣育地の
⼤⼩のみならず、国内外の集団を対象にした遺伝解析で種ごとの詳細な遺伝的状況を評価
したことで、適切かつ効率的な保全策の構築に向けて有益な情報を得ることができた。 ...

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